2007年10月09日17時01分掲載  無料記事
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橋本勝21世紀風刺画日記

第68回:やっぱり「ミャンマーの竪琴」とはいいたくない

1956年封切りの市川崑監督の「ビルマの竪琴」は私の好きな映画です。ビルマの戦地で無残に死んでいった沢山の兵士たちを弔うため僧となった水島上等兵は、帰国をあきらめてビルマの地に残ります。戦争の残酷さをやさしい叙情で描いた反戦映画の傑作です。ビルマとは現在のミャンマーのことです。1990年に選挙の結果を無視したクーデターで生まれた軍事政府が、勝手に国名を変更したのです。その民主主義を踏みにじる独裁政治を続ける政府に対し、燃料価格が倍になったことに抗議して市民のデモが起こったのです。これに多くの僧侶たちが加わります。仏教国のこの国では、僧は高い尊敬を集めていますから、僧侶の参加は政府にとって脅威です。9月26日、政府は治安部隊を大量動員して激しい弾圧に乗り出し、これにより多くの犠牲者が出ることになります。その惨状を伝えるニュースを見ながら思わず連想したのが、「ビルマの竪琴」の僧となった水島上等兵のこと。戦後も60年以上たち、平和のはずの地に見る悲惨な現状に、きっと彼は胸を痛めているでしょう。そして彼の肩の上のインコがきっと叫ぶだろう。「ミンシュカ ダンアツ ハンタイ!」と。(橋本勝) 


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