2008年01月01日10時43分掲載  無料記事
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検証・メディア

日米関係猊蕕力∈伸瓠帖屬佑犬豺餡顱廚畔‥沈権 池田龍夫(ジャーナリスト

  「安倍晋三首相誕生から3カ月、新年を迎えた牋打楷櫚瓩浪申茲愎墨を定めるのだろうか」と本欄に書いたのは、1年前の新年号だった。安倍首相の政権投げ出しの後を継承した福田康夫首相は、奇しくも政権誕生から3ヵ月。2008新年の船出となったが、倏嗣賢瓩藁ち込めたまま。「新テロ対策特別措置法案」の迷走に加え、「福田・小沢狢舅⇔瓠弑諺劇もあって、前政権を上回る不安の影を落としている。 
 昨年7月参院選の民主党大勝利によって衆参ねじれ現象が生じ、福田新政権の政局運営はギクシャクしているが、これは直近の国政選挙の民意であって、「国会審議の停滞」を誇大に憂慮し、非難するのは筋違いであろう。 
 
 従来の「テロ対策特別措置法」が、野党優位の参院で否決されて失効(昨年11月1日)。9・11テロ以降6年間も続けてきたインド洋上給油が打ち切られ、海上自衛艦が帰国したことは極めて異例な事態。政府提案の給油延長が国会で認められず、政策変更して米国の継続要請を断ったことは、戦後日本政治にとって稀有な現象である。「給油は国際貢献の一環」…「国連決議がないまま自衛艦を海外派遣したことこそ違憲」との両論は平行線のまま。「日米同盟のほころび」を憂慮する福田首相は、11月の日米首脳会談で厳しい局面に立たされたようだ。 
 
▽米国産牛肉、「思いやり予算」で譲歩 
 
 防衛利権に絡む守屋武昌・前防衛事務次官逮捕もあって、昨年末の国会は防衛省(自衛隊)絡みの攻防が焦点になってしまった。年金・薬害肝炎問題、進まぬ特殊法人改革、低所得層と格差社会…等々、重要案件は目白押しだが、どれ一つ未処理のままとはひど過ぎる。安倍退陣の経緯を探ると、8月のAPEC首脳会議で、「インド洋給油継続に狄Δ鯏劼広瓠廚肇屮奪轡緤涜臈領に約束したことに遠因があるようだ。先の福田・ブッシュ会談では「同盟強化で一致」と取り繕っているものの、米外交のしたたかさが透けて見える。 
 
 「北朝鮮のテロ支援国家指定解除のほか、自衛隊の給油再開、米軍駐留経費の日本側負担(『思いやり予算』)の改定、さらに牛肉問題と、両国間には難問が山積だ。心配なのは(1)北朝鮮問題で置き去りにされたと日本の世論が硬化→(2)給油再開や『思いやり予算』がつまずく→(3)米が日本不信を募らせる――という負の連鎖だ」という指摘(朝日11・18朝刊)の通りで、福田内閣もまた「日米同盟」の言われなき圧力に苦しみ、その解決が主要な政治課題となっている印象である。臨時国会を1月中旬まで再延長し給油再開の「新テロ特措法」成立に福田首相がこだわったのは、「日米関係猊蕕力∈伸瓠廚忘は任靴討い燭らだったと推察できる。 
 
 しかし、米国は「給油継続」を要請しているものの、最優先課題とは考えていないとの分析の方が当たっていると思われる。米国側にとっては、給油継続以上に(1)米国産牛肉の輸入緩和(2)駐留米軍「思いやり予算」の維持(3)米軍再編(海兵隊の一部グアム移転等)などの処理が喫緊の外交案件だったと思われる。 
 
 米国産牛肉輸入について日本政府は、BSE対策のため「生後20カ月以下に限る」との枠をはめており、月齢制限の撤廃を求める米政府と厳しい折衝が続いていた。結局、「月齢制限を30カ月未満に緩和する」と日本側が譲歩、日米次官級経済対話(12・7)で決着した。 
 
 「思いやり予算」削減交渉は、今回も米側の厚い壁に阻まれてしまった。2007年度の「思いやり予算」は2173億円。日米地位協定に基づくものと特別協定による負担の二種類で構成されているが、日本側が特別協定分約1400億円の光熱水費250億円の大幅削減を求めていた。しかし、これも米側の爛璽躄鹽瓩剖瓩こ曚蚤填┐膨匹すまれた。3月末協定期限切れ以降の延長期間は3年。12月10日の合意内容は「08年の光熱水費予算は現状のまま。09年度、10年度は各2億円減額する」という狆幅減額瓩鯑本側が呑まされた形である。 
 「思いやり予算」そのものが、不条理な対米支出との批判を長年浴びてきたのに、見直しが一向に進まないばかりか、恩恵に浴している米側が聞く耳を持たず既得権にしがみついているのが実態だ。1978年以降の累積支出は5兆円を超す膨大な額だが、国民大多数はこの基地負担の無謀さに気づいていない。 
 
 さらに、普天間飛行場の名護市移転、海兵隊のグアム移転などを決めた「米軍再編」の行方も気がかりだ。米軍再編に伴う日本側の負担総額は3兆円とも伝えられるなど、日米協力の名のもとに日本側の財政支出は膨らむ一方である。外務省は「インド洋給油中断が対米交渉のマイナスになった」と弁解するが、「米国の外交テクニック」に翻弄されっ放しの現状は嘆かわしい限りだ。 
新聞各紙が、テロ特措法や防衛省スキャンダルの動きを追うのは当然だが、問題の背景を探り、分析する紙面展開が不足していなかったか。またテロ特措法以外の重要課題が山積していたのに、その報道が十分でなかったことは、先に例示したケースを振り返ってみれば明らかであろう。 
 
 ▽「討議型デモクラシー」の確立を 
 
 「ねじれ国会」が与野党審議に緊張感をもたらし、防衛利権や年金行政などのズサンな実態があぶり出されてきた。停滞が危ぶまれた法案審議も次第に進み、先月中旬時点で「改正被災者生活支援法案」など10法案が成立。「政治資金規正法改正案」などを加え、計21件の法案成立が見込まれている。 
 
 世間を驚かせた「自民・民主大連立」は幻に終わったものの、その狙いが「ねじれ国会の手詰まり解消」にあったことは明らかだ。55年体制で権力をほしいままにしてきた自民党の焦燥がみてとれるが、議会制民主主義の原則を尊重して衆知を集めることこそ議会活性化の道であろう。 
 篠原一・東大名誉教授が「国会に討議型のデモクラシーを」と題し、ねじれ国会を前向きに受け止め、今後の議会運営に期待を寄せた一文は示唆に富む指摘なので、参考に供したい。 
 
 「ねじれ国会の下では、与野党が徹底的に『討議』を重ねなければ政策が実行されないという状況が出現した。単なる多数決によっては進まない事態が発生したのである。インド洋の給油問題にせよ、年金政策にせよ、農業問題にせよ、与野党の意見は対立している。その問題の調整と解決は必ずしも容易ではないであろう。繰り返し討議することによって合意を得る、少なくとも合意獲得のために努力する以外に方法はない。どうしても合意を得られない問題に対しては、暫定的措置として多数決の方法に訴えることはやむを得ないであろう。しかし議案の一部が妥結することによって和解の気風が醸成され、対立それ自体が緩和される可能性がある。これを、討議デモクラシーでは、相互性に基づく『和解』の原則という。これがデモクラシーの本来の姿である。…あるべき政党制はともあれ、現実にいま、具体的な政策の突き合わせと討議をしていかない限り、政治が動かないという状況が到来した。そしてインド洋における給油問題の詳細や年金の資料なども、ねじれ国会であるからこそ明らかになった。日本のように政党制がまだ十分に成熟していない状況の下では、デモクラシーの発展のためにむしろ恵まれた条件が形成されたと言わねばならないであろう」(月刊誌『世界』08・1号) 
 
 この点に関し、東京新聞社説(12・9)の明快な一文にも共感したので、紹介しておきたい。 
 「状況が一変した今も、『給油できないと国益を損なう』『法律が国会で成立しないのは国難』などと言葉を操り、政治を動かそうとする人がいます。『だから大連立だ』と現実に政治が動きかけました。しかし、『給油に国連決議が必要だ』と原則にこだわる民主党を、参院の多数党にしたのは国民です。それを無視して国益論、国難論を振り回すのは民意否定です。国民の意見から離れた国益はありません。驚くべきことに、大連立に向けた舞台工作の主役は読売新聞主筆の渡辺恒雄氏だといわれます。対象を公正、客観的に観察して国民に報告する使命を負ったジャーナリストが自らニュースの当事者となり、マスコミの影響力を背景に密かに政治を動かそうとしたのは、ジャーナリズムとして邪道です」 
 
 ともかく新年の政局は波乱含みで、「解散→総選挙」の波が猜‥調櫚瓩鰺匹気屬襪飽磴い覆ぁ新聞は本来の使命に立ち返って、権力の監視を強めねばならない。 
 
*本稿は、「新聞通信調査会報」08年1月号に掲載された「プレスウォッチング」の転載です 


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