2008年02月01日14時14分掲載  無料記事
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検証・メディア

「3分の2条項」乱用を危惧 新テロ特措法…ガソリ税暫定税率 池田龍夫

  新年早々、「NY原油1バレル100ドル台」の衝撃的ニュースが飛び込んできた。1年で7割もの原油大暴騰のあおりで、株とドルが急落、ドル安の混乱が全世界を覆っている。新年の新聞各紙は、米国経済の失速と中国・ロシアの台頭、中東オイルマネーの脅威を伝え、ますます深刻化する「地球温暖化」対策の急務をそろって指摘している。このような危機の時代にあって、座標軸のない福田康夫政権の迷走が気がかりだ。日本の国際的地位の低下を示す各種指標が提示されているのに、旧態依然たる殻に閉じこもったまま抜本政策を打ち出せない福田政権の前途に、国民は不安を募らせている。年金問題の不手際、格差社会の深刻化などの内政問題はもとより、対米・対中外交などの軋みをどう処理するのか、昨年暮から持ち越された政策課題の背景を探って検証を試みたい。 
 
 1月9日やっと開かれた「猜‥庁s小沢疆渕麁は澄廖宗宗崟治の閉塞状況をどう打開するか」について建設的な討論は全くなく、国民の期待を裏切る結果になった。在京6紙がそろって10日社説に取り上げ犢麌将瓩靴討い燭、党利党略のみで政治理念の無い現実が怖ろしい。 
 
▽「インド洋給油」の対米公約を優先 
 
 海上自衛隊のインド洋給油活動は昨年末、爐佑犬豺餡餃瓩了憶,捻篦綱^討否決され、11月1日以降中断したまま。そこで安倍晋三前首相と同様、「給油継続」にこだわる福田首相は、「新テロ対策特措法案(補給支援特措法案)」=1年の時限立法=を臨時国会に提出、2回も会期を延長(1月15日まで)して新法成立へ躍起になった。 
 
 憲法の規定では、予算案と条約締結の承認は、衆院から参院に送付されたあと30日以内に参院が可決しない場合衆院議決が優先する。しかし通常の法案では、参院で否決されたあと、または参院への法案送付から60日経過したあと衆院で3分の2以上の多数で再可決しなければ法案は成立せず、衆院優越の度合を弱めている。これは、二院制の建前上妥当な規定であり、「衆院3分の2条項」があるからといって、政権与党が乱用すれば議会制民主主義の破壊につながりかねない。 
 今回のケースを検証すると、大幅会期延長の狙いは、「新テロ特措法を何が何でも成立させる」との一念からだ。参院で否決された法案を1月11日、衆院の自公絶対多数で再可決・成立させたわけで、「インド洋給油継続」が臨時国会の最優先課題だったことは明々白々。半年前の参院選挙によって野党優位となった猝碓姚瓠福惶詭継続』ノー)を踏みにじる暴挙と言わざるを得ない。憲政の常道に立てば、参院多数の意思を尊重して、会期延長などの姑息な手段を避け、「給油新法」の審議は通常国会に見送るべきだった。年金・医療・雇用など国民の不安解消が政治の原点なのに犁詭継続瓩剖庫曚垢襪箸亘榾転倒も甚だしい。 
 
「アフガニスタンの現状を見据えて、日本としてどんな協力をすべきなのか,骨太の議論を闘わせ、民意を踏まえつつ与野党が修正案を練り上げていく、『衆参ねじれ』の時代に求められるのはそんな知恵と工夫だったはずだ。そうした努力が尽くされたとは到底言えないのに、再可決という手法が使われることに私たちは賛成できない」(朝日1・11社説)との指摘に謙虚に耳を傾け、健全な国会運営に努力する必要性を痛感する。 
 
▽「租税特別措置法」をめぐる攻防 
 
 2月中に「インド洋給油」再開の見通しだが、福田政権のイバラの道はなお続く。1月18日召集の通常国会は。例年にない激しい与野党対決が予想されるからだ。安倍、福田両内閣は総選挙の洗礼を受けておらず、政局は狃葦_鮖境瓩了從任鯣襪瓩禿験するに違いない。 
 
 2008年度予算審議が通常国会の焦点だが、3月末期限切れとなる「租税特別措置法」をめぐる与野党激突は避けて通れない雲行きである。中でも、揮発油(ガソリン)税の暫定税率継続の可否は、予算編成上の最重要課題。政府が近く提出する「租税特措法改正案」が年度内に成立しない場合「約2兆7000億円の歳入不足が生じる」と、政府は大慌てだ。ガソリン税と暫定税率の仕組みや問題点を整理して、考えてみたい。 
 
 1970年代に「道路整備を急ぐ」として、ガソリン税や自動車道路重量税など本来の税率に上乗せして課税するようにしたのが「暫定税率」である。暫定措置だったのに、30十年以上も適用延長が続いてきた。3月末の期限切れを前に、政府は犁重な財源瓩箸靴董峪団蠕芭┌隠闇延長」を提案している。ガソリン税の税率は本来、ガソリン1キロリットル当たり24・3円だが、暫定税率が上乗せされて48・6円になっている。07年度当初予算が見込んだガソリン税は2兆8395億円、地方の軽油取引税が1兆360億円もの巨額である。その約半分が暫定税率適用による税収だ。 
 
 民主党が「暫定税率延長阻止」を鮮明にしているため、予算審議は3月末まで予断を許さない攻防が展開されるに違いない。生活に直結する法案だけに国民の関心は高く、「新テロ特措法」で執ったような国会運営をするならば、福田政権批判は一段と強まるであろう。「道路特定財源」の一般財源化要請など、現行税制のヒズミが年々顕著になってきており、「格差社会」深刻化の要因と指摘されてきた。「租税特別措置法」の在り方が問われる理由もそこにあるわけで、抜本的な税体系の見直しと、国民生活への公正な還元を、国会審議の視点に据えなければならない。 
 
▽「大連立劇」を工作した読売の説明責任 
 
 最後に、「幻の大連立構想」の総括が新年になっても行なわれていないことに再度触れざるを得ない。「政党間の政略的駆け引き」だけでない重大問題が潜んでいるからだ。「大連立劇」の筋書きを書き、演出したフィクサーが、渡辺恒雄・読売新聞グループ会長(主筆)だったことは衆知の事実となっている。権力を監視する立場にある新聞界のトップが、隠密裏に工作を仕掛けたことは、ジャーナリズムの責務と矜持を放棄した言語道断な行為との指弾を浴びるのは当然だ。この問題の経緯について、当事者の読売新聞が未だに明確な説明を果たしていないことに非難が高まっているが、先の「党首討論」でも一切言及されなかった。 
 
 「なぜ避けた『大連立』の説明」と題した毎日社説(1・10)が「『ねじれ国会』への対応策として福田、小沢両氏は、両党を軸にした『大連立』で一時は合意した。最後は挫折したが、このことに一切触れないのは不可解だ」と指摘したのは当然で、大物政治家や言論人の暗躍には厳しい目を向ける必要がある。 
 
 渡辺恒雄主筆は12月22日、日本テレビ番組〈『なかそね荘』〉に中曽根康弘・元首相と出演(司会・テリー伊東)して大連立劇の猊饌耄↓瓩鮓式に語ったが、読売新聞は同日朝刊4面に「渡辺主筆語る」という一問一答を90行程度掲載しただけ。「なぜ(経緯を)書かないのかと、朝日新聞をはじめ盛んに僕を攻撃しているが、ニュースソースに対する信頼を失ったら、将来、ソースは切れる。まだ政治は動いている。今、全部暴露しろと言っても無理だ。僕は新聞記者の倫理を守るために、言っちゃいけないことは言わない。僕自身の倫理観と価値観がある」と逃げ、核心部分の説明をしない点にこそ、密室政治犹迭歐有瓩遼楡が垣間見える。 
 
 赤座弘一・読売政治部長が11月5日朝刊1面で小沢代表を批判した記事の中で、「小沢氏が連立を提案したことは、多くの関係者が証言しており、確実な裏づけを取ったうえでの報道だ。報道機関が牋鐫Ν瓩靴討い襪箸いΔ里覆蕁△匹海どう逸脱しているのか、具体的に指摘すべきだ。連立政権の意義と合わせて真実を語ることこそが、本当の意味での『けじめ』になるのではないか」と主張していたのに、大連立工作が失敗するや口を閉ざし「説明責任」を果たさないのは不可解だ。 
 
 「読売新聞は今回の大連立騒動の狄秦雖瓩鬚匹離瓮妊アよりも確実に掴んでいるはずだ。しかし、同紙は大連立には『仕掛人』など存在しないような報道ぶりだ。政治部も社会部も、なぜ、この点に殆ど触れないのか。主筆への慮りか。……報道する側は、過去の報道を訂正し、新事実は如何にして明らかになったかを説明する責任がある。今回、読売はその責任を果たしていない。そして読売はもう一つの責任、主筆の渡辺氏の関与についての報道と検証も行っていない」(桜井よしこ=月刊『文春』新年号)。――厳しいメディア批判に応えて、読売新聞独自の紙面検証と情報開示を切望する。(いけだ・たつお=ジャーナリスト) 
 
*本稿は、「新聞通信調査会報」08年2月号に掲載された「プレスウォッチング」の転載です 


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