2008年03月01日11時13分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200803011113076

検証・メディア

日経・朝日・読売三社共同サイト「あらたにす」を点検する 池田龍夫(ジャーナリスト)

  新聞業界は、活字離れ・広告収入激減・コスト増加…の爛肇螢譽鵐洵瓩睦辰い任い襦5蚕儚弯恵しい通信メディアの狄賛瓩老廚蠱里譴此▲▲淵蹈亜Ε瓮妊アの新聞だけでなく、放送業界も安閑としていられない現状である。 
 
 「人口減や若者の活字離れを受けて新聞部数の減少傾向が続く中、インターネットの普及で広告収入が落ち込むなど新聞業界を取り巻く環境は厳しさを増している。各社が同業他社や異業種と組んでネットを活用した新たな事業への進出を模索する背景には、こうした業界の構造問題に対する強い危機感がある。ネット提携の動きは2007年秋以降加速し、朝日・日経・読売3社の『新s あらたにす』が1月31日、運営を開始した。 
 激しい取材・販売競争を展開してきた三社だが、ネットで流れる記事の大半は新聞記者が取材したものであるにもかかわらず、収益につながっていない現状への不満が背中を押した。『共同サイト事業組合』の長田公平理事長(日経デジタルメディア社長)は『ネット社会での新聞社の発信力を一層高めたい』と力を込める」と、時事通信(2・6配信)が伝えた通り、大手新聞3社が打ち出した狎犬残り策瓩旅塋は、マスメディア界全体にとって極めて注目すべき課題である。 
 
 世界一のインターネット検索サイト「Gооgle」「Yahоо!Japan」などに、新聞社情報をこれ以上牴取り瓩気譴觚従を放置できないとの危機感が、「ANY(朝・日・読)」提携の動機と思えるが、現在の各社別サイトを凌駕するシステム構築を目指しているのか?…スタートしたばかりではあるが、「あらたにす」を検索して得た情報をもとに出来栄えを点検してみた。 
 
▽「読みくらべ」の便利さ強調するが… 
 
 「新サイトの特色は三つの新聞の『よみくらべ』です。一面、社会面の主要記事や社説などが3紙分いっぺんに読めるので、ニュースの速さだけでなく、その切り口や論調の違いなども実感していただけると思います。日々の朝刊の編集責任者が語る『編集局から』、各界の著名人が『新聞案内人』として執筆する三紙比較のコラムも掲載します。『あらたにす』を通じ言論機関の多様さ、奥深さ、新聞の面白さを再発見してください」(日経1・31朝刊)との一面社告(朝・読も)に誘われて、早速検索キーを押した。 
 
 「くらべる一面」「くらべる社説」などが目玉商品であって、3紙の傾向を手っ取り早く知ることはできる。社説を順次読み継げる利点は認めるが、「くらべる一面・社会面」「注目テーマ」「最新ニュース」だけを見て比較・検討することは難しい。3社独自に選択した目玉ニュースをキーステーション(日経本社内)に送り込んで編集・発信している内容だけで、安易に記事比較が可能だろうか。しかも、日経サイトだけは新聞記事の要約しか掲載していないため、なおさら比較は難しい。 
 
 先ず2月10日の「くらべる一面」を点検して、具体的に問題点を探ってみたい。当日のサイトは「7カ国財務相・中央銀行総裁会議」の共通テーマを取り上げていたので、具体的に検証しやすいからだ。パソコンに「くらべる一面」を呼び出し、3紙のメニューを拾って末尾の「続き」をクリックすると、長文の記事が画面上に現れる仕組み。画面と新聞一面記事を照らし合わせた結果、難点がすぐ浮かび上がってきた。朝日と読売の画面には、新聞記事全文が紹介されている。さらに朝日は「G7共同声明骨子」も新聞記載どおり表示していたが、読売は割愛していた。日経の画面表示は、新聞記事の前文プラス本文19行だけに端折られている。こんなバラバラな画面なのに、「主要記事を3紙いっぺんに読めて比較できます」とは犖愨臉訶銑瓩任呂覆い。 
 
▽3社の配信形式がバラバラでは困る 
 
 そもそも、3社それぞれの判断でその日の配信ニュースを決め、キーステーションで束ねて送信しているのだからバラバラになるのは当然なこと。朝日は新聞記事に忠実、日経ネット記事は新聞の要約…という独自判断に基づくもので、どちらにも理屈はあろう。しかし、「読み比べに便利」とPRしながら、きちんとした素材を提供しないのでは話にならない。要するに、三社三様の配信内容では本当の比較は困難。従って、原典の新聞記事に当たらなければ、良心的な読み比べはできない。さらに付け加えれば、別項解説や注釈の優劣も、大ニュース猊床銑瓩陵彖任任△蝓不完全な資料提供に基づく比較は、却って牋貶的甅狷箸蠅茲り瓩砲覆覿欧譴垢蕕△襦 
 
 この観点で、日経朝刊(2・10)一面トップを点検すると、ネットの「くらべる一面」とは質、量とも全く違うことが判然とする。日経専門の経済ニュースでもあり、一面3分の2も割いての大報道ぶり。編集委員の長文解説も目立ち、朝日、読売両紙より充実した紙面とも言えよう。従って、「G7報道の日経ネット記事は評点Cだが、新聞記事はA」とせざるを得ない。この二重構造的な情報提供の背景は何か…開始を急いだ「あらたにす」の仕掛けが透けて見える。 
 
 「『あらたにす』に配信される記事は、朝刊、夕刊に掲載される主要ニュースが中心です。それ以外の記事は、やはり新聞のページをめくるなどしないと読むことはできません。しかも新聞に掲載されている記事は、その重要度や、読者に読んでもらいたい順に見出し、大きさなどすべて計算されて配置されているのです。作り手の犹廚き瓩紙面から伝わってくるはずです。ですから『あらたにす』をフルに利用されても、やはり新聞を読みたいと感じられる人が大勢いるはずです。現在新聞を読んでいない人が『あらたにす』を入り口に、新聞の奥深さ、面白さを知ってもらいたいと思います」。 
 ――この文章は「あらたにす」がスタートした日(1・31)にサイトに流された説明文の一部だが、「ライバル紙3紙が、一つのウエブサイトをつくるという、おそらく世界でも初めての試みです」と犲画自賛瓩垢覦貶で、「実は、共同サイトの情報は質・量ともに劣るので、活字の新聞を購読して下さい」と遠回しに勧誘しているものと受け取れ、「ANY」結成の目的は壮大な「ウエブサイト構想」とは程遠い、「販売戦略」だったと勘繰れる。 
 
▽三社共同ネット配信の難しさ 
 
 「共同サイト事業組合」の運営は現在3社代表の理事3三人、執行役員3人が担当。実務は執行役員を頂点に、3社合計50人くらいの要員が別々にニュース選択をして自社から「事業組合」へ送信、それを項目別に束ねて配信している(専従者は少ない)。「くらべる」コーナーに掲載する記事は、朝刊午前7時・夕刊午後4時の各一回送信の取り決めで、先に指摘したように記事量や掲載の仕方は自社の判断に基づいているという。 
 サイトの特色を出すため「最新ニュース」「注目テーマ」「書評」「新聞案内人」なども企画しているが、その内容にも「共同ネット」作業の限界があるように見受けられる。特に一冊の書評(しかも、日経は題名のみ)掲載だけでは利用価値がない。また「くらべる一面」を点検し直そうと検索したが、6日前までしか遡れなかった。少なくとも半月分くらい保存して検索ニーズに応えてほしい。 
 
 一方、共同通信は一昨年暮、「47NEWS」サイトを立ち上げた。朝・毎・読3社を除く共同加盟社のネットワーク・サイトだ。ジャパンタイムズまで参加しており、全国各紙にリンクしやすい仕組みを構築した。昨年10月からは、毎日がヤフーと、産経がマイクロソフトと提携してサイトを整備・拡充している。 
 
 ついでに、インターネット通信大手の「グーグル」「ヤフー」と日本マスメディアとの関連にも少し言及しておきたい。とにかく世界に張りめぐらせた両巨大サイトの情報検索ネットの威力は群を抜く。現時点で「グーグル」と提携していない大手メディアは、「毎日」と「共同」。ヤフーと組んでいないのは、「朝日」「日経」「共同」で、「読売」は双方と提携している。 
 
 以上「あらたにす」を点検してメディア事情を考察してきたが、「3社共同サイト」は、紙面PRの爛轡隋璽院璽広瓩琉茲鮟个此◆嶌8紊離灰鵐謄鵐捗室臓廚砲盡続Δあると推察している。 
 どうしても、「ANY」提携を急がせた真の狙いは新聞販売網の再編成が主眼で、「共同サイト」はその先導役だったとの印象が深まるばかりだ。とにかく販売正常化に英断を振るうことこそ焦眉の急。ネット対策は、ポータルサイトとの提携も含め各社独自に開発、競争すべきテーマと考える。 
 
*本稿は、「新聞通信調査会報」08年3月号に掲載された「プレスウォッチング」の転載です 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。