2008年06月05日15時27分掲載  無料記事
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中国

「6月4日は今年も断食」 天安門事件19周年へのある中国人反体制派の思い

  天安門事件から19周年を迎えた6月4日、中国のある友人から、短い文章がSkypeのチャットで送られてきました。彼は民主化を求めて戒厳令下の北京の天安門広場でハンストを行った学生たちの一人で、現在は人権派のフリージャーナリストとして活躍しています。日刊ベリタに最近紹介された「三峡ダム移民声明」はその一端です。民主化運動が鎮圧されたあとも、彼は毎年この日には断食を欠かしたことがないといい、なぜこの行為をつづけるのかをメッセージに記しています。以下がその内容です。(納村公子) 
 
 断食の日が来た。19年間、あの広場でも監獄でも、国内にいても海外にいても、体調のいいときも悪いときも、どんなことがあってもぼくはこの行為を続けてきた。それは、あの日、あまりにも早く若い命を散らした人々のために祈りたいからだ。日々覆い隠されようとしている記憶を確かなものにしたいからだ。6月4日の発砲前、最後に学生たちに講演したことを忘れたりはしない。 
 流血の惨事から数年後、きみたちは子どもを持った。子どもたちから、この歴史的な発砲のとき何をしていたのかと聞かれたら、こう答えることができる、お父さんやお母さんは学校の教室で意味のない勉強をしていたくなかったと。なぜなら、そうしなければ歴史の証人となれず、それを書き残すことはできないからだ。 
 天安門事件世代がどんな犠牲を払ったとしても、彼らの理想と尊厳はすべての凡人と自己欺瞞でかためた臆病者を恥じ入らせるだろう。彼らはこの民族の文明という車輪の下で我が身を犠牲に捧げたのだ。 
 
 以上が全文ですが、おかしいことに私のほうでは文面を読むことができたのに、友人の側には文字が表示されないのです。こちらから、もらった文書をコピーして返送しましたが、やはり向こうでは表示されない。もちろん、特にこの日に限り、語句による当局のフィルターがかかって中国国内では見えないようにしているのでしょう。 
 この友人は先頃、ドイツ農業省の招きで渡航する予定でしたが、飛行機に乗る直前になって警察により搭乗を止められてしまいました。理由を聞いても「わからない。上からの指示だから」というばかり。 
 
 彼は中国の現状を言論活動によって批判しています。彼以外にも少数民族の側に立ち、あるいは農民の立場に立ち、また売血のためにエイズに感染した患者たちのために、金銭至上主義とは真反対の人権派知識人が数多くいます。彼らの多くが天安門事件で体制批判の側に立ちました。彼らを「政府転覆をはかる危険分子」と呼ぶのなら、現在の中国当局はみずからそれを作りだしているとしか言えません。 


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