2008年06月17日03時28分掲載  無料記事
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橋本勝の21世紀風刺絵日記

第104回:ダガーナイフを自らの脳に突き刺すしかなかった君よ

 秋葉原の歩行者天国で7人の人を殺害した君よ。自分は負け組みしかないというコンプレックスからの怒りと絶望を社会へぶつけるがごとく、トラックとダガーナイフを使い、無差別殺人を実行した君。大量殺人を行うのに特別な訓練も技術も必要ない。そう君は、兵士でもなければ、格闘術の心得があるわけでもない、ごく普通の若者にすぎない。 
 
 犯行時間はたった2分間あまりだったという、結局、死刑台でその人生を終えるしかない君よ。その2分間で25年間の人生を無にしてしまった君。人間を殺すというのは簡単なことさ!と証明みせた君。この社会に絶望し、未来に希望をもてない者たちよ、わたしに続けとでも、君は言うのだろうか。だがどんなに簡単に人を殺せるとしても、内心に燃えたぎる怒りがあろうと、「人間はなぜ人間を殺してはいけないのか?」という愚問を発するまでもなく、多くの人は、殺人を実行したりしない。それは死刑になるのが怖いからということでもない。損、得で考えても、殺人なんか損なだけという健全な常識があるからだ。それに君と違って他者の命を奪うことへのごく自然な嫌悪感があるからだ。 
 
 そして格差社会や、不安定な派遣社員の身分におとしめつづける、社会への激しい怒りも決して君みたいに、無差別殺人を計画、実行するといった愚かで、非人間的なことに向かったりしない。 
 
 君の幸福の尺度を当てはめると、ほとんどの人は不幸になってしまう。夢や希望を実現できないのが大部分の人の人生、多くの人が憧れる職業は競争が激しく、それになれる人は限られている。負けたり、挫折したり、断念したりというのがほとんどの人の現実である。それでも人は生きていく。「社会が悪い」「会社が悪い」「家庭が悪い」と君は人のせいにするが、本当は自分が悪いということを薄々感じていたのではないか。「顔が悪い」なんてことが君の不幸の原因なんかではない、人生の挫折や失敗と折り合いをつけられない自分の生き方の下手くそさ、恨みっぽくていじけた自分の性格をイヤだと思っていても直せない、そんな自分のことを分っていたのではないか。悲観と落胆の袋小路に入り込み、抜け出せなくなった君、その手にした絶望というダガーナイフで、自分の脳を突き刺すしかなかったのだ。(橋本勝) 


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