2008年06月24日12時25分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200806241225182

橋本勝21世紀風刺画日記

第105回:君にこそ『蟹工船』を読んでほしかった

 21世紀になり、小泉・竹中の新自由主義とやらで、日本はとんでもないところへ踏み込んでしまったようだ。成果主義、自己責任、格差社会下の闇のマグマが異常な形で噴出したのが秋葉原の通り魔大量殺人事件。犯人は不安定な派遣労働の生活に心身を、破壊された犠牲者ともいえる。もし君が同じような境遇にある若者たちと連帯して、社会への抗議活動をしていればあのようなことをせずにすんだかもしれない。 
 
 今、若者たちの間で80年の時を越え、熱心に読まれている本がある。29歳の若さで官憲により虐殺された小林多喜二が、過酷な労働を強いられる者たちの苦しみと反逆を描いた『蟹工船』である。君がもしゲームに熱中しているばかりでなく、この本を読んでいたら、君はあのような陰惨で非情な事件を起こしたりしなかったろう。 
 
 学校の成績が良かったはずなのに、悪くなってしまったと自分を「負け組み」と卑下する、なんと愚かな……「知は力なり」その力は自らの不幸、不運を普遍化し、解決の道を見つけ出す、生き生きとした感受性と、豊かな想像力を育て、不屈の精神と忍耐力を養う。世俗の評価なんか気にするな、抗議して生き残れ!第2、第3の、そして「君」にならず、自分の生き方と戦い方を知った沢山の若者たちの現出は、権力者たちを震撼させずにおかないだろう。(橋本勝) 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。