2008年07月14日17時51分掲載  無料記事
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橋本勝21世紀風刺画日記

第108回:ムツゴロウの「叫び」が聞こえますか

止められない、止められない 
1度はじめた公共事業は止められない 
戦後すぐの1952年 
有明海の1角の諫早湾を埋め立てて 
広大な水田を造るという大干拓計画がスタートした 
でもその後、食糧事情の変化や 
漁民の反対など、いろんなことがありまして 
規模を縮小して防災対策をかねるという形に計画を変更し 
1989年に諫早干拓事業の工事が始まった 
そして1997年に工事が終わり 
諫早湾を潮受け堤防で閉め切ったのである 
まさにそれは自然をギロチンにかけるようなもの 
ムツゴロウ、シオマネキ、稚魚、幼貝などさまざまな生き物を育む 
干潟を消滅させ、命の海を、死の海へとかえてしまったのである 
この後、有明海の養殖ノリの大凶作、魚や水産物の水揚げの激減などがあり 
生活苦から自殺する漁民が出るという悲劇もおこった 
だが、先月30日、佐賀地裁は 
「水門を開けなさい」という判決を下した 
でも、国も農林水産省も 
2533億円もの巨額の税金をかけたこの事業を失敗と認めるわけにはいかない 
今すぐ、水門は開けられないと 
水門を開けるべきか否かの環境影響評価(アセスメント)を 
実施するとかの姑息な理由で 
7月10日、控訴する意向を示したのだ 
止められない、止められない 
1度はじめた公共事業は止められない 
……嗚呼、彼らには 
ムツゴロウの「叫び」は聞こえないのだ 
(橋本勝) 


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