2008年07月29日15時20分掲載  無料記事
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労働問題

賃金未払いと経営者による暴行を訴える外国人研修生をなんと会社が提訴 研修生も反訴して訴訟合戦

  外国人研修生に対する賃金未払いや過重労働、使い捨てなどがようやく社会問題になっている中で、未払い賃金の支払いを求めた外国人技能実習生を、会社が提訴するという信じられない事件が起こっている。実習生側も直ちに会社を反訴し、横浜地方裁判所川崎支部で裁判がスタートした。以下は、研修生を支援する全統一労組からの報告。(編集部) 
 
  李書旺さんと馬峰さんは05年3月、中国河北省から来日、「伊藤工業員神奈川県川崎市、伊藤明光社長」で働いた。最初の1年間は研修生として、2年目と3年目は技能実習生として左官の仕事を学ぶはずだったが、実際には掃除や後片付けがほとんどだった。 
 
  賃金実態は、研修期間の研修手当が6万円で残業時給500円、技能実習期間が基本給12万5千円で残業時給900円だった。伊藤社長は「日本語学習のため」と称し、李さんと馬さんに毎日日記を書くよう命じたが、仕事の事を書くといつも怒った。 
 
  とりわけ終業時間にっいては過剰反応し、仕事の終わった時間を書いた李さんの日記を取り上げてビリビリに裂いたうえ、髪をわしづかみにして振り回すという暴行をはたらいた。法律に違反する不正行為が発覚したり、後で残業割り増し賃金を要求されたりするのを恐れたのだ。未払い賃金は1人当たり200万円近くに上った。 
 
  2人は今年1月、全統一に加入し、団体交渉が始まつた。伊藤社長は暴力行為にシラを切り、第1次受け入れ機関の「建設足場事業協同組合穴岐阜県羽島市、清水敏之理事長」も、会社に法令遵守を指導・監督する責任があるにもかかわわらず、全統一からの脱退を2人に強要した。会社は団交に3回応じただけで、弁護士を使って未払い賃金に関する債務不存在確認を求める裁判を2人に対して起こした。 
 
  6月に旗揚げしたばかりの「外国人研修生問題弁護士連絡会」が素早く反応してくれた。第1回裁判に間に合わせ、会社を反訴した。最大の争点は、「研修生の労働者性について裁判所がどのように評価するか」だ。 
 
  外国人研修制度のトラブル増大を受け、国は研修生についても労働者として扱う方向で法改正の準備を進めているが、現時点ではいまだ大きな壁が立ちはだかっている。全統一に相談に訪れる研修生。技能実習生たちが最初にする質問も「研修時代の不足賃金は請求できますか?」である。 
 
  第2回裁判は8月8日午前10時半から行われる。奇しくもこの日は北京五輪の開会式。中国人実習生と受け入れ日本企業が互いを訴え合うという、極めて異例な闘いが始まる。(全統一労組 中島浩) 


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