2008年10月02日10時30分掲載  無料記事
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アフリカから見る新しい世界

<1>ガーナの庶民生活で存在感増す中国 AA連帯が理念から実態へ 小松原茂樹(国連開発計画ガーナ常駐副代表)

  ガーナは西アフリカにある人口2200万人の国である。日本から直線距離で計ればメキシコあるいはフロリダの先辺りと同じ距離にあるが、日本からガーナに来るには、ヨーロッパ経由やドバイ経由で20時間以上かかるため、日本からはとても遠いというイメージが強い。しかしガーナから見るとアジアは日増しに身近な存在になってきている。筆者は国連開発計画ガーナ事務所の副代表としてガーナに勤務して2年目になるが、依然として発見、驚きが絶えない。第一回目の今回は、ガーナの日常生活を通して、アジアとアフリカの新たな関係を考えて見たい。 
 
 ガーナ人にとってアジアと言えばどの国が思い浮かぶのだろうか。アクラの空港係官などに聞いてみると、まず思い浮かぶのは中国、次が韓国、その次が日本と言う感じらしい。また一般のガーナ人にはアジア系の人は全て中国人と思っている人がかなり多い。 
 
 中国については、一般市民の生活に触れる部分での存在感は近年増すばかりである。一番暮らしに近いところから見ると、スーパーでは商品の多くが中国製である。先日、ガーナ政府が国際会議に参加していた中国政府代表に中国製品の秩序ある輸出とガーナ国内における地元零細商店への配慮を要請したといったことがニュースになっていた。食品もかなり輸入されているらしく、汚染ミルクの問題ではガーナの貿易当局が中国製のミルクが使用されていると思われる食品の輸入に証明書の添付を義務付けることになった。 
 
 また、今年の1月に開催されたサッカーのアフリカカップに際してアクラのメーン会場となった競技場を大改装し、その他の中核都市の競技場建設を担当したのも、順調な経済成長によって増え続ける車の大渋滞(アクラでは朝晩車の渋滞で2時間通勤は珍しくない)を緩和するための幹線道路の整備や大規模拡幅の多くを請け負っているのも、多くが中国企業である。 
 
 庶民の生活には直接関係しないかもしれないが、アクラの国際空港の近くで完成間近のガーナ国防省庁舎も中国のODAによる中国企業の設計施工、さらにガーナが電力供給源の強化を目指して建設を決めたブイダムの建設にも中国が多額の融資を行っている。 
 
 OECDなどでの議論を通じて、ガバナンスの改善、援助のアンタイド化や効率化、継続的な予測可能性の向上などに重点を置く日本や欧米諸国とは一線を画す中国だが、広範囲のビジビリティーと言う点では、圧倒的にアジアを代表する存在である。ただ一線を画すといっても、地元コミュニティーへの貢献や、受入国における人材育成への貢献などについて考慮する必要性は中国関係者も感じているようである。最近、ガーナを訪問した中国企業関係者と懇談する機会があったが、企業の社会的貢献や企業と開発との関係について非常に強い関心を持っていた。 
 
 一朝一夕には行かない事とは思うが、中国の経済活動はアフリカにおける庶民の生活に密接に関連していることから、受入国の幅広い人材育成や効率的な制度作りにより重点を置いた援助になれば、中国にとっても受入国に取っても良いことだと思うがどうだろうか。 
 
 次に中国ほどではないが安定した存在感を漂わせるのが韓国である。首都のアクラから車で30分ほどの距離にあるガーナ最大の港町テマには遠洋漁業関連の韓国人コミュニティーがある。韓国の家電製品はガーナでは庶民にも手が届く高級品という位置づけであり、多くの家電量販店で目にすることが出来る。国としての韓国も、ドナーの立場から対アフリカ援助の拡大強化に力を入れており、技術協力案件などをガーナでも進めている。 
 
 最近では、これらに加えて、インドやベトナムといった国々の名前も聞くようになった。ベトナムからは政府の代表団がガーナを訪問し、農業、教育訓練、科学技術などの分野における協力の可能性について政府関係者と意見交換を行った。インドもガーナとの協力関係の強化に熱心であり、街中ではインド製のバスや乗用車を多く目にするようになった。 
 
 それでは日本はどうかというと、日常的な存在感という点では限られてくる。トヨタや日産、ミツビシなどの日本車は最高級車としてガーナでも名高く、ソニー、キャノン、東芝などのブランドも高品質・最高級と言う評価が定着しているが、それらを手に入れる事が出来る人々は限られる。一方で、息が長く保健・健康、人づくりや環境保全に重点を置く日本の援助は、専門家に大変評価されており、ガーナではアフリカで最大級の青年海外協力隊が活動しているが、商品経済のように国土の隅々まで浸透するのはもとより無理で、必要な事でもない。 
 量より質、短期より長期、モノより人といった日本の援助の良さをどうやって今後も伸ばして行き、より多くの国民に理解してもらうかが日本の存在感を考える上でひとつの鍵になってくるのではないかと思う。 
 
 このようにしてみると、かつて非同盟中立運動から始まったアジアとアフリカの連帯が、いかに理念から実態に幅を広げてきているかがわかる。実体経済の連携が深まり、発展途上国の経済が独自の展開を見せ始めるにつれ、国際政治や国際交渉の舞台でも、発展途上諸国の影響力は確実に増してきている。従来、国際関係を読む視点は先進国主導のものが多かったように思うが、これからは独自の世界を築きつつある「南」と南への依存を深める「北」という、より多角的で立体的な視点が必要になってくるように思う。 
(つづく) 
 
☆小松原茂樹さんのプロフィール 
http://unforum.org/unstaff/4.html 


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