2008年10月19日07時12分掲載  無料記事
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社会

冤罪発生の構造を明らかに 富山冤罪事件で国家賠償裁判を支える会が動き出す

  裁判員制度が動き出すかたわらで冤罪事件が後を絶たない。いずれも警察・検察がつくりあげた国家犯罪である。その一つ、有罪判決を受け刑期を終えた後、真犯人が現れて無罪となった富山・氷見冤罪事件の国家賠償を求める裁判を支援し、支える運動が動き出した。この10月11日には東京・渋谷区で富山冤罪事件国賠を支える会と、不当な扱いを受けて国を相手にたたかう人たちやその支援グループのネットワークである国賠ネットワークが共催で志布志事件と富山事件という最近の二大冤罪事件をテーマにシンポジウムを開くなど、活発な運動を行っている。(ベリタ編集部大野和興) 
 
  志布志事件というのは、2003年、鹿児島県議選に立候補して当選した中山信一さんが、志布志市の住民12人と共に公選法違反で起訴された事件。検察側の証拠は自白調書のみで物証はなく、鹿児島地裁は07年2月、中山さんのアリバイ成立を認定し、「買収会合はなかった」として、公判中に亡くなった1人を除く12人全員に無罪判決。事実無根の容疑で逮捕、違法な取調べのあげく起訴され、長期の身柄拘束で精神的苦痛を受けたとして、国と県に賠償を求めた国賠訴訟を提訴し、現在鹿児島地裁で審理中。 
 
  富山冤罪事件というのは2002年に富山県氷見市で起きた強姦事件と強姦未遂事件で逮捕、起訴された柳原浩さんをめぐる事件。柳原さんは富山地裁高岡支部(中牟田博章裁判長)で懲役3年の有罪判決をうけ、服役した。ところが、満期釈放後の2006年になって、別の容疑により鳥取県警に逮捕された男性がこの事件の真犯人だったことが分かり、富山地検は異例の再審を請求した。07年4月に検察・弁護側双方が無罪判決を求める再審裁判が開始され、10月に富山地裁高岡支部(藤田敏裁判長)は改めて無罪判決を出した。 
 
  富山冤罪国賠を支える会は、柳原さんの国家賠償請求裁判を支援するために08年9月20日に発足した。国賠裁判を通して冤罪が起こる原因と構造を明らかにしたいとしている。 
 
  「支える会」は次のような呼び掛けとともに、会への参加と支援を訴えている。 
 
  逮捕から5年半ぶりに無罪判決を手にした柳原さんですが、「納得いかない、本当の意味で冤罪が晴れたとは思っていない」と怒りを隠さない様子が報じられました。再審裁判では犯行現場の足跡や自宅からの通話記録などから柳原さんの犯行でないことが認定され、前の有罪判決が取り消されました。しかし、これら無罪を示す証拠がありながら冤罪が作り出されたカラクリは隠されたままです。警察や検察のしたことは何も明らかにされていません。 
 
  その解明のために柳原さんや弁護団は当時の氷見警察署の取調官や起訴した検察官の証人尋問を求めました。彼らは否認していた柳原さんを強引に自白させました。でも裁判長はその取調べを拒否したのです。 
 
  柳原さんはいま、この冤罪の成り立ちやその責任を明らかにし、被った損害の賠償を求める国賠裁判の準備を進めています。そこには冤罪被害からの名誉回復のみならず、同じような冤罪の再発を防ごうという強い意志があります。 
 
  さらに、この冤罪をただすべきだった裁判所や弁護士の果たした役割がどのようなものであったかも、明らかにしなければなりません。 
 
<支える会 連絡先> 
メール toyamakokubai@gmail.com 
ホームページ 
http://toyamakokubai.googlepages.com/home 


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