2008年11月29日11時29分掲載  無料記事
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環境

中古品名目の日本の電気・電子製品廃棄物輸出 国際的な規制が進み返送される例も増える

  化学物質による環境・健康破壊を追及している市民団体・化学物質問題市民研究会は、日本から大量の使用済み電気・電子製品が中古品名目で世界中に輸出されていることに警告を発している。その背景には、日本には中古品と廃棄物を区分する基準がなく、また中古品の 輸出前検査も求められていないという政府の規制に不備がある。リユース名目で輸出されたものは、実際には使用できず、途上国で資源回収のために処理され、処理に従事する人々の健康や周辺の環境を汚染する場合が多い。その一方で輸出される側では次第に中古品と廃棄物を区分する基準(ガイドライン)が策定されており、輸出国に返送される例も多くなっている。同研究会は廃棄物の国内処理原則の徹底と「法的強制力のある中古品基準の策定と中古品の輸出前検査の義務付け」、及び全ての有害廃棄物の輸出を禁止する「バーゼル条約禁止修正条項の批准」を強く提言している。(ベリタ編集部) 
 
  以下は化学物質問題市民研究会のサイトに掲載された電気・電子廃棄物の輸出と各国の規制の現状である。 
 
■はじめに 
 
  わが国から途上国へ中古品名目で大量の使用済電気・電子機器が輸出されています。しかし、わが国には中古品と廃棄物を区分する基準がなく、また中古品の 輸出前検査も求められていません。したがって、実際には使用できず(されず)、途上国で資源回収のために危険なリサイクルが行われることが多いと言われて います。 
 
  当研究会は、2008年G8サミットNGOフォーラムにおけるポジション・ペーパーやパブリックコメント、声明などで、「法的強制力のある中古品基準の策定と中古品の輸出前検査の義務付け」、及び全ての有害廃棄物の輸出を禁止する「バーゼル条約禁止修正条項の批准」を強く提言していますが、「国際資源循環」と「物品流通の貿易障壁の低減」を方針とする国は取り上げようとしません。 
 
  しかし国際的には、オーストラリア、EU、香港、マレーシアなどで、中古品と廃棄物を区分する基準(ガイドライン)が策定されています。したがって、日本やアメリカから香港に送られた中古品名目の使用済みテレビ(CRTに鉛を大量に含む)が有害廃棄物であるとして、送り返される事例が増えています。今後、マレーシアからの返送も増えることでしょう。 
 
■当研究会の「中古品基準の策定と中古品の輸出前検査を求める」意見 
 
▼2008年G8サミットNGOフォーラムにおけるポジション・ペーパー 
 
国内処理原則を実現しつつ、資源の国際循環を可能とする新たな3Rイニシアティブを求める 
 
▼2008年9月8日提出のパブリックコメント 
 
小売業者による特定家庭用機器のリユース・リサイクル仕分け基準作成のためのガイドラインに関する報告書(案)」に対する意見 
·パソコンを含み使用済み電気・電子機器について、動作試験を含めて中古品基準を確立すること。 
·中古品基準を満たさないもの、あるいは動作試験の行われていない使用済み電気・電子機器の輸出はバーゼル条約対象の有害廃棄物であることを明確にすること。 
·使用済み電気・電子機器を中古品として輸出する場合には、中古品基準を満たすことを示す書類を輸出業者に提出させること。 
·中古品基準の作成に当たってはEUとオーストラリの基準などを参考とし、極力、国際的に整合性のある基準とすること。 
 
  これに対する国の回答は、「家電リサイクル制度の範囲を超えた御意見もございますが、今後の施策運営の参考とさせていただきます」という、いつもの「紋切り型お役所回答」で、本気で廃棄物同然の中古品が途上国に流れ込むことを防止する気がないことを示しました。 
 
■海外の中古品基準又はガイドライン 
 
▼オーストラリア 
 
オーストラリア環境・自然環境遺産省(2005年3月)/使用済み電子機器の輸出入基準(当研究会訳) 
(内容の一部) 
·有害廃棄物はバーゼル条約及びその他の国際条約でリストされている廃棄物である。 
·廃棄物は、リサイクリングまたは最終的処分によって処分されることとなる物質または対象である。 
·有害廃棄物と定義された機器は認可なしに輸出できない。 
·テストされていない機器は有害廃棄物と定義され認可なしには輸出できない。 
 
▼EU 
 
Correspondents' Guidelines and other guidance documents 
"Revised Correspondents' Guidelines No 1 on shipments of waste electrical and electronic equipment (WEEE)" 
 
▼香港 
 
香港向け使用済ブラウン管TV及びCRTモニターの輸出について(お知らせ)/有害な部品や構成要素を含有する使用済電気電子機器の輸出入に関する助言(環境省仮訳) 
(内容の一部) 
·廃棄物を輸入/輸出する者は環境保護署から事前に許可を得なければならない。 
·その義務に従わない場合は犯罪となり、200,000 ドルの罰金及び6 か月の懲役刑となり得る。 
·どのような場合も、製造年から5年以上経過しているものは避けることを推奨する。 
·使用済機器が仕向地の技術的基準及び安全基準の両方に適合し、消費者にとって直接中古使用に適した状態であることを保証するために、使用済コンピューターモニター及びテレビを、輸出前に検査、修理、改修及び試験を行うこと。 
·それぞれの使用済機器について検査、修理及び試験の結果を適切に記録すること。 
·それぞれの使用済機器について、機器全体を適切かつ十分に個別梱包すること。 
·適切に中古販売されることを確保するため、輸入国の関係者と事前に契約を結ぶこと。 
 
▼マレーシア 
 
マレーシアにおける使用済み電気・電子機器分類ガイドラインについて(仮訳) 
(内容の一部) 
·規制に違反した者は、5年以内の禁固刑及び500,000マレーシアリンギット(約14,200,000円)以下の罰金が科せられる。 
·対象品目リスト:中古テレビ、中古エアコンユニット、中古パソコン 、中古冷蔵庫、中古洗濯機、中古ビデオレコーダー、中古pendaflourライト/蛍光灯、中古電話機、中古コピー機、中古ファックス機、中古電子レン ジ/オーブン、中古ラジオ、中古プリンター、中古オーディオアンプ、中古CRTモニター、・・・ 
·判断基準: 
(a) 機能に物理的影響がある故障、例えば、電源が入らない、マザーボードがない、・・・ 
(b) 機能又は安全性を損なう物理的な損傷のあるもの 
(c) ハードディスクドライブ、ランダムアクセスメモリー(RAM)及びビデオカードが故障しているもの 
(d) 鉛・水銀・カドミウム・リチウム・ニッケル電池の充電が不可能 
(e) 輸送中、荷揚げ、荷降ろし中に起こりうるダメージから保護するための梱包が不十分なもの 
・・・ 
(m) E-waste回収施設から二次的に製造された製品又は部品 
 
■シップバック(返送)される事例 
 
▼日本 
 
我が国から輸出した貨物の返送に関する情報(環境省) 
香港からの中古モニター、ベトナムからの中古鉛バッテリーの返送が多い。 
 
▼アメリカ 
 
「香港はCRTを収納した28個の船積コンテナーを拒絶した」 
米化学会ES&T 2008年10月22日報告:アメリカの電子廃棄物政策を批判する 
 
●化学物質問題市民研究会のサイトは● 
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 


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