2009年02月24日00時49分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200902240049102

グアンタナモ米軍基地からの訴え

元英国在住の男性がグアンタナモから英国に帰国 ー「真実を知って欲しい」と手紙に思いを託す

 キューバにあるグアンタナモ米軍基地のテロ容疑者収容所に過去4年間拘束されて来た元在英の男性、ビンヤン・モハメド氏(30歳)が釈放され、23日午後、英国に帰国した。モハメド氏は拘束中に拷問を受けたと主張している。ミリバンド英外相は、「収容所閉鎖に向けたオバマ大統領の献身を歓迎する。今回の釈放は(収容所閉鎖という)われわれが共有する目標への最初の一歩だ」と述べたが、容疑者が英情報機関の拷問への関与を示唆していることから、今後の情報公開の行方に関心が高まっている。(日刊ベリタ・ロンドン=小林恭子) 
 
 モハメド氏は医者に付き添われながらの帰国となった。メディア取材には未だ心身が耐えられない状況であることから、現在の心境をつづった手紙を弁護士に託した。これによると、キューバに連行される前のパキスタンやモロッコでの拘束を合わせると7年間不自由の身となっていた氏は「想像を絶する体験をした」、「この厳しい試練の前、拷問とは自分にとって抽象的な言葉でしかなかった。自分が犠牲者になるとは夢にも思わなかった」。 
 
 現在でも、「誘拐され、次から次へと様々な国に連れて行かれ、中世を思わせるような拷問を受けたとは信じられないぐらいだ。しかも、これが全て米国政府の指示の下で行なわれていたとは」。 
 
 モハメド氏は心身の回復を願い、過去のことはできる限り忘れたいと思ってはいるものの、グアンタナモ収容所に未だ拘束されている人々を「決して忘れられないようにする義務があると思っている」。それは、氏が最も深い絶望感にとらわれたのは、「全ての人が自分を見捨てた」と思った時だったからだ。 
 
 エチオピア出身のモハメド氏は1994年、難民申請者として英国にやってきた。2002年、パキスタンで偽のパスポートで英国に戻ろうとしているところを、当局に拘束され、後米軍に引き渡された。パキスタン、アフガン、モロッコ、そしてキューバのグアンタナモに連れてこられた。パキスタンでは英国の諜報機関高官と出会い、知っていることを全て話したと言う。 
 
 しかし、「自分を助けにやってきてくれたと思った人たちが、実は私に拷問を与えた人々とぐるになっていたことが、後で分かった」 
 
 「復讐しようとは思っていない。しかし、私が経験したことを他の人が経験しないよう、真実が語られるべきだと思う」。 
 
 ミリバンド外相はモハメド氏の帰国を歓迎し、釈放はモハメド氏の「支援者たちの並々ならぬ努力が実った結果だ」と述べた。今回の釈放で、オバマ米大統領のグアンタナモ収容所閉鎖決定が、「より一歩実現に近づいた」。 
 
 モハメド氏はこれまでに、拷問されたために、テロを計画をしていたと嘘の告白をせざるを得なかったと述べ、拷問が行われていた事実を英国の諜報機関が把握していたと主張している。 
 
 BBCによると、元在英者で未だグアンタナモ収容所に拘束されているのは、サウジアラビア出身のシェイカー・アブドルラヒーム・アーマー容疑者だ。2001年、アフガニスタンで拘束された。アーマー容疑者は1996年から妻と子供と共にロンドンに住んでいた。家族は既に英国籍となっている。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。