2009年04月22日00時23分掲載  無料記事
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北朝鮮

朝鮮の危機を深める 北朝鮮の“UFO”についての安保理の非難  ガバン・マコーマック

 【Japan Focus 特約】国連安全保障理事会のメキシコ人の議長、クロード・ヘラーは理事会を代表して4月13日(東アジア時間4月14日)、「声明」を読み上げた。彼は、北朝鮮が4月5日に行った「発射」とされる何かのために同国を非難し、そのような行動を今後しないように要求し、2006年の安保理決議(1718号。2006年に北朝鮮がミサイルと核実験をしたのを受けて採択され、「ミサイル関連活動」を禁じている)の原則を確認し、国連制裁委員会に対して順守のために、更なる措置を取り、制裁リストを拡大する可能性について助言するよう指示し、北朝鮮問題についての北京での6者協議の早期再開を求めた(1)。 
 
 とりわけ、安保理は北朝鮮が何を発射したのかどこにも明記しなかった。それは理事国が合意できなかったからである。ミサイルだと考える国もあり、人工衛星だと考えた国もあった。名詞で合意できず、動詞の”launch”(発射)で妥協した。安保理の強く、有無を言わせない外交用語―「非難」「要求」などーは従って、何を非難しているのか決められないという、奇妙にも調子の狂ったものであった。実質的には、北朝鮮はこれ以上の未確認飛行物体、“UFO”を発射してはならないと言った。安保理は事実上、「発射したのが何にせよ、そうすべきではなかったし、再びそうしてはいけない」と言った。 
 
 それは奇妙な結果であった。安保理がばかげたものようにみえるものであった。日本にとって空虚な勝利であった。安保理が正式に認めた大義を後退させるような措置であった。つまり、対話を通じた「朝鮮半島と北東アジアでの平和と安定」である。 
 
 非常任理事国で、実際。モンゴルを説得して譲ってもらって得た理事国の議席であるのに、日本は常任理事国と1週間にわたり、独占的に協議する特権を与えられた。北朝鮮を非難し、新たな懲罰的な制裁を科す拘束力のある新たな決議を通そうと躍起になって、「値切り交渉をした」(とニューヨーク・タイムズ紙が述べた)(2)。ロシアと中国、特に後者の反対に直面して、結局、あきらめて、「議長声明」で我慢した。日本はニューヨークでは勝利を収められなかったが、東京ではできた。4月10日、官房長官は、それまで「飛翔体」と呼ばれていたものは、「ミサイル」として知られているものであると発表した(3)。 
 
 北朝鮮が発射したそれは何であったのか?テポドン2号(大陸間弾道ミサイルで、恐らく日本と米国を脅かそうとしたもの)か、それとも、光明星2号(さまざまな調査目的と革命歌を放送するための実験通信衛星)なのか?謎の物体は世界の注目を集めた。また、宇宙か太平洋にそれが消える前に、大量な敵対的な軍事力が集中した。米国と日本、韓国からの9隻のエイジス駆逐艦、潜水艦、偵察機、衛星、レーダーシステム。 
 
 米国と同盟国は、ロケットは始点から3000キロメートル(後に3800キロメートルと修正)の西太平洋に沈んだと発表した。北朝鮮は発射後、9分で軌道に乗り、104分12秒の周期で490から1426キロメートルの高度で回っており、470メガヘルツで「金日成将軍の歌」と「金正日将軍の歌」を放送している主張している(4)。発射の前に、米国の情報当局は、発射物体は恐らく衛星で、ミサイルではないとみていると述べた(5)。発射後、韓国の国防相は、軌跡は衛星を軌道に乗せるために設定されていたようにみえると語った(6)。 
 
 それから1週間後、最高の科学的評価は、ロケットの1段目と2段目は計画通り、発射物体を一時的に高度約50マイルの地球の大気圏外まで運んだが、3段目は分離に失敗し、海上に落ちたというものであるようだ(7)。衛星の電波の周波数割当を担当している国際機関の国際電気通信連合(ITU)は、通信衛星を軌道に乗せたとする北朝鮮の主張を退けた。韓国の衛星技術調査センターも470メガヘルツで出ている信号を確認できなかった(8)。もちろん、謎の物体が実際、軌道にあり、どこかの望遠鏡がそれをとらえることもあり得る。だが、その可能性はますますなさそうだ。 
 
 北朝鮮は、その目標は2012年までに「強盛大国」になることであり、4月の発射(あるいは、発射の試みと言ったほうがいいかもしれない)は法的権利内にあると主張する。1967年の宇宙条約は、すべての国に宇宙の科学的探査への絶対的権利を保証している。北朝鮮は必要とされる法的な細かい点を守った。ITUからの必要な許可は得ていないが、しかるべき国際海事・航空機関(IMO・国際海事機関とICAO・国際民間航空機関)へ事前の通告をしている。 
 
 しかしながら、主要政府、特に日本、韓国、米国は、北朝鮮がそのような権利を持つことを否定した。発射物体が衛星であったとしても、安保理決議1718号のもとで禁止されていると主張する。米国のオバマ大統領が(プラハで「発射」のニュースで朝4時30分に起こされ)、「ルールは拘束力がなければならない」、「違反は罰せられなければ」と宣言し、確かに、ものごとを単純化しすぎていた。なぜなら、この場合―1967年の条約と2006年の決議のもとでー二つの異なる、相反する「ルール」が明らかにあった。また、一つの国だけに適用されるものは、ほとんど「ルール」とはみなされないからでもある。北朝鮮が発射したものが実際、ミサイルであったとしても、2008年に世界で(米国を除いたとしても)100以上のそのような発射があり、安保理や大統領の懸念を引き起こすことはなかった(9)。オバマ大統領は、なぜ北朝鮮のミサイルだけが「ルール」のもとで問題になるのか考える必要があった。 
 
 発射の後、日本は非常に精力的に、その問題を追求した。安保理がしかるべき懲罰措置を取るように要求した。けれども、拒否権を持つ中国とロシアは、2006年の安保理決議は1967年条約で保証された権利を失わされると説得されることはなかった。中国は新たな決議をすることは即座に拒否したようだが、議長声明という穏やかな形を不承不承で受け入れた。2006年決議はほとんど無視されてきた。1年以上にわたり、実施についての措置を報告した国はなかった。あらためて声明を出すことが大きな違いを生じるのか不明確である。とにかく、北朝鮮に関するより大きな問題は、ニューヨークの国連ではなく、北京の6者協議で取り組まれる。 
 
 全体として、世界的メディアは北朝鮮を非難することで素早かった。不運な国のイメージはそのようなので、事実、ほとんどは事前に同国を非難する構えであった。しかしながら、相反するルールの解釈についての技術的問題は別にして、発射はより広い背景で見なければならない。北朝鮮が侵略の脅威を与えているとする見方にはほとんど根拠がない。むしろ同国は、より強大な敵による攻撃を免れる絶対的保証という形の安全保障に取りつかれている。針毛を固くして外国組織に抵抗する、一種の「ヤマアラシ国家」である。拡張国家でも、大暴れする国家でもない。第2に、北京の多国間交渉の停止と2007年2月の合意の第2段階の行き詰まりの責任は、少なくとも平壌と同様に他の参加国にもある。同国は細心の注意を払って合意された義務を履行したが、米国はあらたな、受け入れがたい(検証についての)要求をした、と抗議している。また、オバマ政権が交渉と「新」外交を約束して政権についたが、3月、半島でのあらたな戦争を予行演習するために5万人と大艦隊と戦闘機を動員し、米韓軍事演習を進めた。平壌にとって、4月の発射が日本と米国にとって挑発であったのと同様に、それは挑発であった。 
 
 北朝鮮の交渉への関心は、他の参加国が焦点を核とミサイル計画(日本の場合は拉致)に狭めようとすると減り、議題が包括的正常化、朝鮮戦争の休戦条約、多角的経済協力、日本の植民地主義への賠償が含まれると増すことを歴史が示している。現在のこう着状態は主に、北朝鮮の管理を超えた要素による。米国と韓国での選挙と新政権、それに日本の特有な国内的な事柄。そうした要素が組み合わさって、焦点を狭めて、北朝鮮に不利になっている。 
 
 北朝鮮は、高度の軍事態勢を維持しなければ、米国の注目を引くことも、おざなりの尊敬を勝ち取ることさえもできないことを学んだ。レオン・シーガルが書いている(Bulletin of the Atomic Scientists, January 2009)ように、「米国が約束を果たさなかった時はいつでも、北朝鮮はすぐに報復する。1998年、平壌はウランを濃縮し、長距離のテポドン・ミサイルを実験する方法を求めた。2003年にはプルトニウム計画を再開させた。2006年にはテポドンを発射し、核実験を行った。昨年8月には、寧辺の施設の解体を中断し、プルトニウムの生産を再開すると脅した」。言い換えると、1998年にテポドンによって、米国を交渉のテーブルに着かせ、核実験によって、2006年に包括的合意への道を開いたのなら、2009年に同様の結果がうまれるのではないか?従って、その戦術は頑固さ、脅迫、あるいは好戦性として見るより、米国と日本の脅迫に対する、計算された反応として見たほうがいい。 
 
 
 韓国については、もちろん、北での出来事に最も影響を受ける。しかし、今のところ、影響力をほとんど持たない。なぜなら、南北関係は2007年末の李明博政府の選出後、徐々に悪化し、最悪の状態にあるからだ。北朝鮮は李政府が「太陽政策」から距離を置こうとしていること、2000年6月と2007年10月の南北共同宣言を順守しようとしないところまでいっていることに怒っている。 
 
 けれども、韓国社会は北の同胞と関与という10年間の特異な経験を持っており、保守派を含めて誰も、冷戦の敵対的対決に戻ることを望んでいない。従って発射の前、李明博大統領はフィナンシャル・タイムズ紙とのインタビューで前向きな和解を打診した。「われわれの究極的目的は北朝鮮に納得させて核兵器を放棄させ、二つのコリアが共存できるような時代を導くことである。われわれにとって、強硬な立場をとり、他の道を行くことは、究極の目的を達成するうえで助けにならないと思う」と述べた(10)。発射後、李大統領は日本と中国の間で妥協の進展を仲介するうえで活発に動いた。韓国の多くの人々は、平壌が韓国を追い抜いたことに感心しているかもしれない。なぜなら、南の衛星発射の試み(ロシアの協力に大きく依存している)は、7月に予定されているからである(11)。将来の統一コリアのもとでの国家宇宙計画という空想は政界全体で関心をかきたてたに違いない。 
 
 しかしながら、韓国は発射に対して、一つの明確で強硬な反応で脅した。米国主導の大量殺傷武器拡散防止構想(核兵器、ミサイル、関連物資の北朝鮮への積荷を阻止するブッシュ時代のプロジェクト)に参加するかもしれないとした。法的に戦争状態が存在している中、韓国の海軍が北朝鮮の船舶や北朝鮮に向かう船舶を公海で停止させ、乗り込み、臨検することは、非常に挑発的に見えるし、北朝鮮はそれを「宣戦布告」とみなすと応じた。しかしながら、発射から1週間後のソウルから示すものは、この措置を実際にとるかもしれないというものである。 
 
 発射後の怒りと非難の興奮の中で、面白い面を見られたのは恐らく韓国だけであった。「ミサイルなし」と題するハンギョレ新聞の4月6日のこの漫画の標的は、日本の麻生太郎首相である。ロケットからおみくじ入りクッキーのようにでてきた金正日の光景にがっかりしている。「わたしを迎撃しようとしていたのかね?」。「魚なし」はプンアプバンと知られている魚の形をしている韓国の練り菓子。おおざっぱに訳すと、魚の入っていない魚パンという意味になる。「ミサイルなし」は、ミサイルを含んでいない飛翔体である。 
 
 日本にとって北朝鮮は、少なくともテポドン1号が1998年に予告なしに上空をあっという間に通り過ぎて以来、最大の関心事であった(12)。それでも、日本の立場は北京の他の参加国とは非常に違っている。日本だけが、ブッシュ政府の交渉への転換とそれが米朝関係にもたらした融和に猛烈に反対した。長年にわたり成功しなかったが、30年前の日本人拉致を北京での議題に含められるべきであるとする意見に米国が同調するよう説得しようとした。一方で、自国民には、拉致問題は核兵器やミサイルよりも重要であると主張した。2006年2月以来、北朝鮮との会談で日本は拉致問題以外を討議しようとしてこなかった。北京での2007年の合意後、その実施を阻止するか、遅らせようと大きな外交努力をした。最初に、ブッシュ政権に北朝鮮をテロ支援国家のリストから外さないように圧力をかけ、北朝鮮に重油を提供するという自国の義務を果たすことを拒否した。発射にいたるまで、メディアと政治家は、北朝鮮が東京をミサイル攻撃することを計画しているかのように恐怖を広げることに加わった。 
 
 日本だけがロケットを撃ち落とそうとするかもしれないとほのめかした。北朝鮮がそれを戦争行為とみなすと言うと、態度を和らげ、日本の領土に落ちてくる破片を撃ち落とすと言った(技術専門家は、それは不可能であると主張した)。発射直後、「飛翔体」という言葉が政府とメディアによって採用されたが、5日後に政府とメディアはいっせいに「ミサイル」という言葉を採用した。北京での協議の参加国のうちで、日本だけがこの見方をした。政府は、衛星という北朝鮮の主張は証明されていないという以外の説明はしていない。他の国では広く受け入れられている説明、つまり、北朝鮮は衛星を打ち上げようとしたが、失敗したという論理的な別の可能性を拒否し、日本政府は北朝鮮に関係する事柄で顕著なパターンを繰り返した。「科学的事柄に口を挟み・・・、外交的失敗になったことを埋め合わそうと躍起になる」(13)。 
 
 4月5日、多くの一般市民がさくらの花見を楽しんでいる中、発射は日本の支配層を激高させ、恥をかかせた。平壌を降伏させようと締め付けた長年の努力は徒労であった。拉致に関しては進展せず、米国を説得して強硬路線や拉致を北朝鮮の主要な犯罪として見るように同調させることに失敗し、発射をやめさせることに失敗し、発射は民用ではなく決定的に軍事的なものであると世界を納得させることができず、発射の後にあらゆる努力をしたのにかかわらず、安保理から目指した非難決議を引き出すこと失敗した。さらに、日本の厳しい制裁政策にかかわらず、北朝鮮の発射は、その科学的・軍事的行動計画はほとんど影響を受けていないことを示しているようだ。今回、軌道に乗ったという証拠はないが、北朝鮮は明らかにそれを成し遂げることに近づいた。 
 
 一方、日本の大いに自慢されているミサイル防衛計画は2回、誤った警報を出し、すぐに撤回された。2003年以来、日本は北朝鮮の上空を定期的に偵察しているが、北朝鮮が日本の上空にスパイ衛星を打ち上げる能力を持つようになる可能性ほど日本の官僚にとって苦々しいものは恐らく、ないであろう。 
 
 ソウルの京郷新聞は、4月5日のこの漫画を掲載して発射に応じた。北朝鮮の惨めな金正日が、ひどくカリカチュアされた日本の戦時中の人物と一緒に描かれている。「打ち上げるのではないではないかと心配していた」とこぼす人物のロケットには「自衛隊」「憲法改正」と書かれている。米国のロケットは「ミサイル防衛拡大」と書かれ、スーツケースには「軍事産業」と書かれている。 
 
 ばか騒ぎと計算された狂乱という日本の対応にもかかわらず、発射が日本の上空を越えたという事実は、たとえはるか上空だとしても、無視することができるものではなかった。けれども、その反応は、2003年以来、北朝鮮上空を定期的に飛んでいる自国の「スパイ」衛星についての内省、あるいは、不安定な状態を増大させている日本の敵対的行為(それが北朝鮮をそれに挑ませている)の役割についての内省がないことは注目に値した。 
 
 日本の発射と同じように、北朝鮮の発射は太平洋上空で行われる。世界中のほとんどすべての衛星発射が実際そうするように、真東に向けられる。これは、地球の自転が軌道に入るのに必要な速度の最大5%を供給するという技術的理由による。しかしながら、世界のどこでもほとんどすべての発射は、海や砂漠、人口が希薄な地域の上空で行われるが、北朝鮮の太平洋への東への針路は日本によって遮られているという地理的事実のために、ほかの選択肢はない。宇宙探査の権利を主張するなら、日本領土の上空を越えて発射しなければならない。そうした方向は科学的に決められるもので、政治的なものではない。同じ問題が韓国が今年計画している発射の場合も起きる。北朝鮮の発射が日本北部を越えたように、韓国の発射は広島と沖縄の間の日本西部を越えなければならない。そうした問題を解決する唯一の方法は、国際的に受け入れられる発射地点を提供するための国際的合意である(14)。 
 
 麻生首相の強硬な姿勢と、発射からの破片を撃ち落とせという命令は、国内支持率を上げ、どれほどわずかであっても、数ヶ月後にある選挙での見通しを改善させたようだ。それはまた、彼が提案している実証されていない、非常に高価なミサイル防衛システムを選挙民に「売り込む」のに役立ったかもしれない。また、恐らく、憲法改正、(上記の韓国のマンガがほのめかしているように)日本の全面的再軍備を訴える議論を強めそうだ。しかし、そうした措置は単に、日本と地域をさらに不安定にさせる恐れがある。歴史が示していることは、平壌は懲罰的措置には、報復で対応し、利用するものがあれば、抑圧を強めるということである。半島と周辺地域の過去と現在のひずみ、暴力と傷、それに北朝鮮を含んだすべての関係国の苦しみが取り組まれた時にのみ、永続する平和と安定が可能である。それらの苦しみには、朝鮮半島における植民地主義、戦争とその後遺症を含む。 
 
 4月の出来事への世界的な対応は、現在のこう着状態に対する複雑な構造的要素と広く分散した責任についての正しい認識が欠けていることが注目に値する。 
 
 3つの例外について言及できる。一つは発射後間もなく、朝鮮についての専門家、約60人の学者グループ(筆者を含む)が出した声明である(15)。その声明は「増加する軍事支出を含む東北アジアでの拡大する軍国主義、半島周辺での不安定化する米国の軍事演習、北朝鮮の好戦的レトリック」に注目し、「日本はこの危機をミサイル防衛計画を加速するチャンスととらえ、韓国は非妥協的立場を強めている」と指摘した。学者たちは「北朝鮮のロケット発射への過剰反応は北朝鮮の疑念を増すだけであり、交渉をさらに困難にする」と正確に予測した。 
 
 二つ目は、4月6日にモスクワで行われた、朝鮮に関する尊敬され、広く知られた3人の権威の議論である。ロシア科学アカデミーのアレクサンドル・ボロンツォフは、世界が直面している真の脅威は「すでに存在している核兵器」であり、11年間で3回、宇宙で実験したミサイル(満足な結果とは程遠いものと彼は付け加えた)ではないとした。厳しい対応をすることで北朝鮮を6者協議から追い出すことは、事態を悪化させ、良くすることはないと予測した。極東研究所のアレクサンドル・ジェービンは、北朝鮮は「深刻な経済危機にあり、住民は餓え、疲れ、士気が落ちている。一方、軍隊は1960年代から1970年代の武器・装備を使っている」と指摘した。ロシア科学アカデミー・朝鮮プログラム所長のゲオルギ・トロラヤは、発射を北朝鮮の国内の政治目標、特に「同国のたるんだ士気を高める」必要を反映しているとみる。トロラヤは日本の反応を、ミサイル防衛能力を上げようと前もって計画されたものだとした。3人のロシア人はみな、日本の反応は病的なものであるとした。3人は、北朝鮮を相手にするときは、圧力は何もなし遂げないと指摘した。重要なことは、対話と妥協の準備である。それは1994年と2006年の合意を導いた要素である。 
 
 上記に加えるとすると、尊敬される米国の専門家で30年間にわたり北朝鮮をよく訪れているセリグ・ハリソンの分析である(17)。ハリソンもまた、北朝鮮の「脅威」をほとんど見出さない。それよりむしろ、発射は金正日による彼の国内的威信を高めるためのものと、北朝鮮のロケット技術を宣伝するための大きなショーのようにみえた。これが挑発的なら、今年予定されている日本のH―2の発射もそうであろうと彼は言う。7月の韓国のKSLV-1もそうである(と彼は付け加えたかもしれない)。 
 
 安保理が声明を発表した数時間後に、予言の中で最も悲観的なものが生まれた。北朝鮮は、議長声明の言葉に応え、「強盗的」で「理不尽な」主権の侵害を断固として非難し、北京の6者協議には「決して参加せず」、核施設を再開させると宣言した。それは、まさに事前にそうすると宣言していたものである。日本に強硬に駆り立てられた安保理は、「北朝鮮問題」を解決困難な危機に戻し、核化の脅威を朝鮮だけでなく、地域にもエスカレートさせ、北朝鮮の惨めな国民を「親愛なる指導者」の腕の中に戻してしまった。 
 
 
本稿は2009年4月13日の京郷新聞(ソウル)に韓国語で掲載された文章を加筆、最新のものにしたものである。 
 
本稿はThe Asia-Pacific Journal(2009年4月15日)に掲載された。 
原文 
 
*ガバン・マコーマック The Asia-Pacific Journalのコーディネーター。オーストラリア国立大学名誉教授。Target North Korea: Pushing North Korea to the Brink of Nuclear Catastrophe.の著者。 
 
邦訳書 
「北朝鮮をどう考えるのか」(平凡社) 
「侵略の舞台裏―朝鮮戦争の真実」(影書房) 
「属国―米国の抱擁とアジアでの孤立」(凱風社) 
「空虚な楽園―戦後日本の再検討」(みすず書房) 
「共生時代の日本とオーストラリア―日本の開発主義とオーストラリア多機能都市」(明石書店) 
「泰緬鉄道と日本の戦争責任」(共著)(明石書店) 
「小笠原諸島―アジア太平洋から見た環境文化」(平凡社) 
「多文化主義・多言語主義の現在―カナダ・オーストラリア・そして日本」(共著)(人文書院) 
 
 
 
注 
 
 
[1] “Full text of U.N. Security Council’s statement on N. Korean rocket launch,” Yonhap News, 14 April 2009, http://english.yonhapnews.co.kr/national/2009/04/14/65/0301000000AEN2009041400. 
 
[2] Neil MacFarquhar, “U.N. Council may rebuke North Korea,” New York Times, 12 April 2009. 
 
[3] “Its official: N. Korea fired ‘missile’,” Asahi shimbun, 11 April 2009. 
 
[4] Chosen shinpo, 5 April 2009. For web versions of these songs: 
Song of General Kim Il-sung, and Song of General Kim Jong-il 
 
[5] Kim Sue-young, “N. Korea likely to launch satellite, not missile, Dennis Blair,” Korea Times, 11 March 2009, quoting Dennis Blair, director of U.S. National Intelligence, and (on the configuration) Choe Sang-hun and David E. Sanger, “Defying world, North Koreans launch rocket,” New York Times, 6 April 2009. 
 
[6] Defense Minister Lee Sang-hee to a National Assembly hearing in Seoul, “S. Korean gov’t admits DPRK rocket followed satellite trajectory,” Xinhuanet, 14 April. 
 
[7] Craig Covault, “North Korean rocket flew further than earlier thought,” Spaceflight Now, 10 April 2009. 
 
[8] “ITU Dismisses N. Korean Satellite Claim,” Chosun ilbo, 10 April 2009. 
 
[9] According to Henry Obering, Director of the US Missile Defense Agency till his retirement in 2008, interview in Asahi shimbun, 27 March 2009 
 
[10] Lee Myung-bak, Transcript, Interview with the Financial Times, 29 March 2009. 
 
[11] Kim So-hyun, “Seoul lags N.K in rocket technology,” The Korea Herald, 7 April 2009. 
 
[12] For a fuller discussion of the relationship, see my “Japan and North Korea: the Long and Twisted Path towards Normalcy,” US-Korea Institute at Johns Hopkins University School of Advanced International Studies, Working Paper series, WP08-06, November 2008. 
 
[13] “Politics versus reality,” editorial, Nature, Vol. 434, 17 March 2005, p. 257 (in reference to DNA evidence on the Japanese victims of North Korean abduction). 
 
[14] During 2000, one proposal considered was for North Korean satellites to be launched by the US in return for a North Korean pledge to suspend its own long-range missile development. 
 
[15] Alliance of Concerned Scholars about Korea, “Statement,” n.d., http://www.asck.org/ 
 
[16] The following compiled from two sources: Russian News and Information Agency Novosti, “Russian pundits play down N. Korea's missile threat,” Moscow, 6 April 2009, and “’Kita misairu hassha’ Ro no senmonka-ra ‘Nihon no hanno wa byoteki,” Sankei News, 7 April 2009. 
 
[17] Selig Harrison, “Column, Was the North Korean launch a ‘provocation’,” The Hankyoreh, 14 April 2009, http://english.hani.co.kr/arti/english_edition/e_opinion/349654.html 
 
 
 
(翻訳 鳥居英晴) 


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