2009年05月07日13時32分掲載  無料記事
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遺伝子組み換え/ゲノム編集

米国の遺伝子組み換え反対活動家に聞く 「推進国米国でもいま転換点を迎えている」

  遺伝子組み換え作物の危険性を暴露した世界的ベストセラー『偽りの種子−遺伝子組み換え食品をめぐるアメリカの嘘と謀略』の著者、ジェフリー・スミスさんが2009年2月7日来日し、遺伝子組み換え食品いらないIキャンペーンなど組み換え食品に反対する日本の団体と意見交換を行なった。彼は、遺伝子組み換え推進国アメリカで、変化が現れるきざしが見えてきたと語った。以下、スミスさんの話の要約である。(網顧美千世) 
 
 
  アメリカでは現在、モンサント社製造の「遺伝子組み換え牛成長ホルモン」(注)に対する反対運動が盛り上がっている。これを注射した牛の腺がんの発生率が高くなるといった危険性を訴え続けた結 
果、消費者から成長ホルモン投与牛の牛乳を拒否する声が高まり、大手スーパーマーケットも成長ホルモン使用の牛乳は売らないと宣言するまでになった。 
 
  私は日頃から、アメリカの消費者の5%にあたる良心的な組み換え反対層に働きかければ、世論を動かせると考えている。アメリカは、今まさに組み換え問題において大きな転換点を迎えつつあると感じている。 
 
◆情報発信の大切さ 
 
  組み換え食品の健康影響についての講演をさまざまな場所で行なってきて確信したのは、知れば知るほど人は組み換え食品を避けるということだ。牛成長ホルモンに関する一連の動きからも、消費者への正しい情報提供がいかに大切かをあらためて学んだ。 
 
ただ、アメリカでは企業の巧みな情報操作によって、組み換え食品に関する情報がきわめて少ない。アメリカ人の約60%が組み換え食品を食べたことがないと思っているというアンケート結果がよい例 
だ。 
 
  私たちは現在、情報発信先として次の四つのグループにターゲ。トを絞っている。 
 
(1) 有機農産物を定期的に購入するなど健康的な食生活への関心が高い人たち、 
(2) 医師や看護師、栄養士など医療従事者、 
(3) 親を含む学校給食関係者、 
(4) 宗教関係者だ。 
 
◆オバマ新政権は表示を公約 
 
 オバマ大統領は組み換え表示をすると公約している。アメリカ国民の53%が表示があれば組み換え食品を食べないと言っていることを考えると、これは大きな変化をもたらすことになるだろう。 
 
 トム・ビルザック新農務長官は、推進側によって洗脳されてはいるか、これまでの農務長官のように、いわゆる「モンサントの人間」ではない。すバマ大統領もそうだが、正しい情報が与えられていない点に問題がある。政治の中枢にいる人間も教育していかなければならないと考えている。 
 
(注)遺伝子組み換え牛成長ホルモンを注射した牛からは通常より10〜15%多く搾乳できると宣伝されているが、その牛乳を飲んだ人は乳がんなどの発生率が高くなるという論文があり、EUやカナダなどでは使用が禁止されている。 


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