2009年06月22日00時16分掲載  無料記事
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社会

臓器移植法A案審議に向け、「難病の会」が声明  参議院では慎重な取り扱いを

  難病をもつ人の地域自立生活を確立する会(難病の会)は6月21日、衆議院を通過して現在参議院で審議が粉割れる臓器移植法改正案(A案)について疑問点と要望を盛り込んだ声明を発表、参議院での慎重な取り扱いを求めた。疑問点は、本人意思に反して脳死が強制され、生きる権利が奪われる可能性がないのかどうか、難病をもつ人、知的障害者や精神障害者、重度心身障害者など意思表示ができない可能性のある人をどう思うのか、など4点を指摘している。(日刊ベリタ編集部) 
 
 
 難病の会声明は以下のとおり。全文を掲載する。 
 
 
意思表示をしていない、できない人への脳死判定拡大をする臓器移植法A案に対する緊急声明 
 
難病をもつ人の地域自立生活を確立する会(代表:山本創) 
 
  私達はどんな種別の疾患、障害があっても、お互いの命を尊重し生活できるように、当事者同志が集まり、活動している団体です。今回衆議院で通過した臓器移植法A案は、意思表示をしていない人、意思表示できなかった人への脳死判定拡大という重大な問題があるにもかかわらず、衆議院で成立したことに強い危機感をもっております。他者の命の尊重が軽んじられ、命に格差が生じていないでしょうか。以下の疑問点、要望等様々な声に答えず、あいまいなまま結論を急げば、両者に大きな禍根を残します。参議院での慎重な取り扱いを求めます。 
 
【疑問点 1】 
臓器提供の意思表示をしていない人、意思表示をできなかった人の中で、本当は臓器提供をしたくない人が含まれているのか、いないのか明確にすること。もし仮に数%でも含まれるなら、本人意思に反して脳死が強制され、生きる権利が奪われる可能性があります。臓器提供を待つ人も、臓器提供したくない本人の意思に反してまで、臓器摘出を望んでいません。家族や移植された人が後々まで悩み続ける、大きな禍根を残すA案となっていないでしょうか。 
 
【疑問点 2】 
 事前に臓器提供にかんする意思表示ができない可能性のある人には、難病をもつ人、知的障害者や精神障害者、重度心身障害者等も含まれるのか、含まれないのか。意思表示できない方たちは、自動的に第3者の判断で、脳死判定をするかどうか決められ、「生死」の線引きがされれば、意思表示できる人とのあいだに、命の格差を生じさせることにならないでしょうか。 
 
【疑問点 3】 
 子供においても、「脳死」の選択や臓器提供は思い悩みます。思い悩み、決断しにくいからこそ、子どもの悩む権利、生きる権利は慎重に、慎重をきして保護される必要があります。子供本人がどう思っているか解らないまま、家族が子供の「生死」を決め、臓器を摘出することがあれば、子どもの人権上も大きな問題があり、後々まで禍根を残すことにならないでしょうか。 
 
【疑問点 4】 
 世論調査でも、まだ迷っている人、意思表示をしていない人も多くいます。迷っている、意思表示していない方達に関わる「生死」の問題まで拡大し、第3者の判定で一律に脳死とし、「生死」の線引きをする法律を、国会の多数決で決めていいのでしょうか。 
 
<要望項目> 
1、臓器提供の意思表示のない方、意思表示できない方も明確に臓器移植法の適用外とし、本人意思が不明な場合において、家族が代わって「生死」の選択を行わないこと。 
2、脳死を人の死とすることの議論、国民的合意は不十分です。反対、賛成の両論の有識者、法令学者、関係当事者等が公平に参加できる脳死臨調等の審議会を早急に設置すること。議論の透明性ある公開、データ検証等がないままに結論を急がないこと。 


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