2009年07月04日12時58分掲載  無料記事
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社会

いのちに格差をつくり、弱者の生存権を侵害 臓器移植法で「難病の会」が六点の質問

  参議院で審議されている臓器移植法案への疑問が高まっている。なかでも、生命に関して最も弱者の側にいる難病の人たちからは、「弱者の生存権侵害ではないか」という強い疑念が出されている。「難病をもつ人の地域自立生活を確立する会」は、「意思表示をしていない」「意思表示をできない」障害者等への拡大は、明らかに一線を越えたもので、命の格差、弱い立場にある方への生存権侵害が懸念されると指摘、「私達抜きに、私達に関することを決めないでください」と六点にわたる疑問をつきつけている。以下、その質問点を紹介する。(日刊ベリタ編集部) 
 
 
質問 1 私達抜きに、私達に関することを決めないでください。 
 
  「私達ぬきに、私達に関することを決めないでください」と障害者自立支援法の取り組みや、障害者権利条約等でもスローガンを掲げてきました。当事者参加の保障を考えても、長期脳死の方の声など、障害当事者の国会参考人等での参加が予定されず、審議が進められているのはなぜでしょうか。 
 
 
質問 2 本当はまだ生きたい、脳死判定して欲しくない人が含まれていないか。 
 
  「臓器提供の意思表示をしていない人」、「意思表示をできなかった人」の中で、本当は臓器提供をしたくない人が含まれている可能性はあるのか、ないのか明確にしてください。もし仮に数%、一人でも含まれるなら、本人意思に反して脳死が強制され、生きる権利、生命が奪われる可能性はあるのでしょうか、ないのでしょうか。臓器提供を待つ人も、臓器提供したくない本人の意思に反してまで、臓器摘出を望んでおらず、本人意思に反した家族への負担や、虐待の検証の透明性等を考えても、大きな禍根を残すことにならないでしょうか。 
 
 
質問 3 それぞれの死生観を尊重するなら、意思表示していない、できない人を外すべき。 
 
  ドナーカードの所持状況については政府参考人から、七・九から八・四%に増加していても、ドナーカードの記入状況については、カード所持者のうち五〇・三%と、前回より一〇ポイント減少しており、全体としても記入している方が三・八%、こちらも若干減少しているという報告がありました。そうすると95%を越えるほとんどの方が意思表示をしていない方であり、そういった意思不明の方の生死の問題を、一律にA案、法律で拡大し対象にしてく変更をしていいのでしょうか。 
  A案の提案者もどちらの意思も尊重するとおっしゃっているのですから、まずは本人の意思確認を丁寧にすすめ、意思表示のある方だけに限定していくことが必要で「臓器提供の意思表示をしていない人」、「意思表示をできなかった人」については明確に臓器移植法の適用外とする必要があると考えますがいかがでしょうか。それぞれの死生感、日本固有の死の概念を尊重するのであれば、思い悩む時間を与える、表明していない人は思いが決まるまでまつ、意思表明できない立場にある方は除外していく等、それぞれの立場を尊重した法案とする必要があると考えますがいかがでしょうか。 
 
 
質問 4 A案は「脳死を人の死」とするのか。 
 
  A案提出者、支持する人の間でも発言がぶれているようなので、もう一度お聞きします。医療現場では「脳死を人の死」としなければ混乱が起こるといった発言がありましたが、A案は「脳死を人の死とする法案かどうか」それとも「臓器移植をする場合に限り人の死とするのか」どちらですか。 
 
 
質問 5 A案と現行制度の変更点を明確にすべき。 
 
  衆議院の審議では「脳死は人の死」であることは、臓器提供を選択した場合のみとすることがA案提出者からの説明がありました。しかし、現行の移植法では「意思表示していない人」「知的障害者など、意思表示できなかった人」を適用外としていますが、A案では本人意思が不明であっても「脳死を人の死」とすることができます。現行制度とA案において「意思表示をしていない人」「意思表示できなかった人」がどのように変更されるのか、明確に説明ください。 
 
 
質問 6 意思表示していないことの証明、確認方法について。 
 
  意思表示していない人、決めかねている人は、そのような意思確認をどのようにすると思われますか。例えば、「臓器提供しない」意思表示をしたものをその場で所持していなくても、自宅に保管してあったり、第3者に託していることもあるかもしれません。本人の意思に反した移植があれば、移植されたがわにも禍根を残し、事件にすらなってしまいますので、本人意思の確実な担保が必要だと思われます。そのような確認作業はどのようにおこない、本人意思の確認ができると思われますか。 
 
 
質問 7 知的障害者などの意思表示、コミュニケーション保障はどうなる。 
 
  現行の臓器移植法では、意思表示していない、できない方を除外しています。現行の制度で臓器提供する側から除外されていた知的障害者等、意思表示に困難を有す方、コミュニケーション保障が必要な方についてはA案でどのように変更されるのか、明確に答弁ください。 
 
 
質問 8 適用外になっている経緯を明らかに。 
 
  角膜、腎臓に関しては現行法でも本人の意思表示がなく家族の判断で臓器移植できるとされていますが、なぜ、現法案では角膜、腎臓に限られ、心臓等の臓器に関しては除外されたのでしょうか。腎臓と心臓の摘出におけるドナー側の状態についてどのような条件の違いがあるか明確に答弁ください。 
 
 
参議院審議 臓器移植法A案等に必要な解明点 
09年07月02日 難病をもつ人の地域自立生活を確立する会 山本 創 


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