2009年12月18日12時41分掲載  無料記事
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環境

コペンは雪  環境グループ、先住民、左派政党、労働組合、小農民、反貧困・反破壊的開発反対グループらの主張が街頭に響いた

  コペンハーゲンで開かれている気候変動会議COP15もいよいよ大詰め。世界中から首脳が集まってきたが、出口は見えそうにない。同じく世界中から集まった市民団体、NGOは会議内部で,あるいは街頭でデモンストレーションを繰り広げている。日本のメディアだけみていると、何とも乱暴狼藉を働いているとしかみえないが、本当はどうなのか。日本おNGOメンバーとして現地で活動している大倉純子さん(ジュビリーサウス)からの手紙を紹介する。とてもすてきで、楽しく、地球と生命の未来を語り,歌う人びとの姿が見えてくる。(日刊ベリタ編集部) 
 
  まずは写真と動画を見てください。 
 
http://www.guardian.co.uk/environment/gallery/2009/dec/16/reclaim-power-march-copenhagen?picture=356981594 
 
http://www.huffingtonpost.com/2009/12/16/protests-in-copenhagen-de_n_393784.html 
 
  動画の左の方に土地なし・小農民の世界的ネットワーク、ビア・カンペシーナの 
緑の旗が3枚ほど見えますが、私はその丁度真後ろあたりにいました。そこから数列置いた後ろにジュビリーサウスAPMDDの旗が見えます。 
 
  英ガーディアン紙をチェックすると参加者4千人、拘束260人となっています。 
 
一方、オフィシャルの会場の方にはFOEinternationalやtcktcktck、AVAAZなど、 
大きなNGOも昨日センターに入れなかったそうで、理由もいわれなかった(唯一の 
理由は会場のキャパ)そうです。 
 
  FOEinternationalはフロントロビーでsit-inをしましたが、そこはボディチェッ 
クと、会場に入場する際のパス(バッジ)のチェックポイントの間にあるところ 
で、ボディチェックさえ通れば中に入れない人でも入れます。 
 
http://www.guardian.co.uk/environment/2009/dec/16/copenhagen-protest 
 
  COP15の参加資格がどんどん制限され、平和的マーチや若者の宿舎がなにも違法行為をしてなくても警察に狙い撃ちされ(デンマーク政府はコペンハーゲンをHopenhagen 
(希望のコペンハーゲン)として売り出したかったようですが、人々の間では Cop-enhagen 
(警察都市コペンハーゲン)と呼ばれ始めています)、 
 
  一方オフィシャルの会場の中では貧しいコミュニティやNGOどころか、途上国代表の主張さえまともに届かない非民主的・不透明な運営が続いていることへの抗 
議の声があふれています。 
 
(もし、twitterをされている人がいたら、ぜひ@ks91020さんを覗いてみてください。各国代表の発言をざっとですが翻訳して載せてくれてます。話題のチャベス節も載ってますよ。 
 
  これを読むと、いかに非民主的な運営がされているかよくわかります。 
 
  途上国も交えて夜明けまでかけて作ったドラフトはどっかに消えて、議長が「も 
っと新しいドラフトを用意したからこれで討議しましょう」みたいなことをしているようです。 
 
  公式交渉の途上国発言はほとんど報道されないですが(チャベスとか以外)、 
「えー、政府高官がこういう演説するんだー」と思わせるものがあります。ボリビアとかもそうだし。 
 
  モルディブとか読んで泣けました。すみません、ちょっとだけ勝手に引用 
「私にはふたりの娘がいます。私は、孫を見たい。見られなくなるかも知れないのですよ。これは、お金の問題ではない。お金の問題だと思うのは思い上がりもはなはだしい。」 
 
  運営上の透明性の欠如や不平等に加えて、CDM(クリーン開発メカニズム)など市場メカニズムで気候変動を 解決しようとすること、巨額の気候対策資金がこれまで化石燃料プロジェクトに巨額の支援をしてきた(そして意思決定が非民主的な)世界銀行の管理になりそうなこと(米 国が強く主張している)、汚染したものがその責任を負うべきという原則がないがしろにされそうなこと、などへの批判が草の根の運動やNGOから出ています。 
 
  気候変動の被害をすでに受けている人たちからの緊急の叫び、そして先住民、小 
農民、森林に依存するコミュニティからは「私たちの生活の場、祖先の魂の宿る場、水、大気を商品にするな!」という声がクリマフォーラムでも路上でもそしてベラセンター内部でもどんどん膨らんでいっています。 
 
  本来、気候対策はみんなで考えるみんなのモノであるべき。会場の外と中からベ 
ラセンターを開放して中でピープルズフォーラムを開こう!というのがこのデモの呼びかけの趣旨でした。 
 
  (といっても抜き打ちデモではなくてちゃんと最初からアクションガイドに記載 
されていました。) 
 
  (これは後から知ったんですが、デモをどのように作るかの話し合いがさまざま 
な運動団体を交えて行われ、「ブルーブロック」といわれるグローバルサウスなど途上国からの参加グループはデモ申請も行い、警察に阻止されたらあえて突入強行しない方針を立ててあったそうです。一方、阻止されてもあくまで強行突破を目指すイエローグループ、その他いろいろな場所から侵入を試みるグリーンブロックと分かれていました) 
 
  朝8時にベラセンターから数キロ先の駅前に集合。 
  雪がちらつき寒い! 
  そのときは何人くらいいるかわかりませんでしたが、12日のデモほどではないにしても一時は人の壁で周囲がみえないほどでした。 
 
  その日はタイからのグループと一緒に行動しました(今回の滞在でとてもお世話 
になりました)。タイからの代表は欧州語を話さない方もいるので、ともかくばらばらにならないように、みんなで大きなバナーを持つのもアピールというより迷子対策(?)ジュビリーサウスは私たちのすぐ後ろ。ATTACの旗が遠くに見えましたが、そこまで行けませんでした。 
 
  9時頃にトラックが到着して出発。 
 
  ドラム、バグパイプなど鳴り物とともに 
 
"Reclaim Power!" 
"Pay up your Climate Debt!" 
"Hey!Ho! Bella Centre, here we go!" 
"Power to the People for System Change, Another World is Possible and 
We know What to do!" 
 
  などのチャントを繰り返して進みます。 
 
  突然白いドレスとタキシードにシャンペングラスを持った一群が乱入。札束をち 
らつかせながら「私たちはグリーンキャピタリズムを愛しているのよ!」「市場による気候変動解決を!いま!」。もちろんお芝居です。 
 
  参加者はATTAC、Our World is not for Saleなどの反グローバリゼーション運動、さまざまな青年環境グループ、先住民グループ、左派政党、労働組合、石油・石炭開発反対運動、反貧困・反破壊的開発NGO、ビア・カンペシーナ、ジュビリーサウス、世界女性行進など(ブラックブロックはみかけなかったような?) 
 
  沿道ではずーーーーっと警官が並んで張り付いていました(動画を見ればわかり 
ます)。 
 
  感動したのは、もし逮捕されるとなったら一番の矢面に立つはずの道路の両側に 
、男女問わず若者がずらっと腕を組んで中の参加者を守ったこと。 
 
  トラックのアナウンスも「ぴったりくっついて、しっかり互いに腕を組んで、隣 
の人と気遣いあって、連れてかれないように!」と呼びかけ、私たちもバナーはたたんで互いに腕を組みます。 
 
  ベラセンター直前までは一応何事もなく進み、私たちも警官に「あなたはキュー 
トでセクシーだからそのライフジャケット取ったらどう?」などとチャント。 
 
  ところがいよいよベラセンターへの角を曲がったところで装甲車と警官がにじり 
寄ってきました(ここが丁度動画が映っているところです)。 
 
  催涙ガスが吹き付けられ、たくさんの人が目を腫らして水で洗っていました。タ 
イグループは数列後方で、直接はかけられなかったけど、後々まで喉の調子が変でした。何人かはベラセンターのフェンスに超えようとして阻止されて断念。装甲車に乗った人は殴られて落とされました。 
 
  その場(交差点)でピープルズフォーラムをしようとトラックから提案がありま 
したが、トラックも警官に乗っ取られてしまいました。 
 
  その後は湾にかかる道の方にじりじり追い込まれました。一方の端はすでにブロ 
ックされていて袋小路状態です(小さい橋に追われて殴れた人たちもいるようですが、私のいる場所からは見えませんでした)。 
 
  みなから「こっちは平和的なのになんて暴力的なんだ、恥を知れ!」「世界が見 
てるぞ!これが民主主義か!」の声。路上でドラム、ダンスと、輪になっての議論が始まる中、一応警官はじりじりとひろがりつつも静観。 
 
  一方で、多くの人が道の外の沼地に降りて五月雨式に散っていきました。こちらも犬を連れた警官などがいて、後からベラセンター横のグループに戻ろうとするのは阻止されましたが、帰路に向かう方はとめられませんでした。私もタイグループと一緒に切り上げてもどりました。 
 
  でもデモ参加者からの投石や物の破壊、警官への暴力は一切ありませんでした。 
 
  ちょっとショックなのは、動画の元のYoutubeのサイトのコメントを見ると「お前らのせいで気候変動がとまらないんだ」「警官、もっと頭を狙え」「そんなことしてないで働け」みたいなのばかりということ。 
 
  その人たちはもちろん、気候変動のことを心配して行動を起こしているような人 
ではなくて、そういう書き込みをするのが好きな人たちなんだと思うけど、やはり前後の文脈を知らないと、「また過激派が暴れて」みたいな受け取られ方しか(特に産業先進国では)しないのかな・・・と改めて思いました。 
 
  クリマフォーラムをはじめとするピープルサイドのイベント、アクションの準備 
、海外ゲストの宿泊・食事・その他必要なものの提供(ダイレクトアクション中の出来事でトラウマを抱えてしまった人の相談サービスまでありました)、 
 
  ボランティアによるサービス、さまざまな便宜のための情報提供など(デモの最 
中には「あなたの法的権利」と印刷された小さいメモが配られました。ウェブにも載ってますが、改めて手元にあると助かる。また、多様な信仰や習慣がある人を尊重し、寺院・教会の案内、ヨガセンター、瞑想できる場所の案内もクリマフォーラムガイドに載っていました。こういう多様な人がいることへの知識・想像力は大事だと思いました) 
 
  ここまで準備するのは本当に大変だったと思います。 
 
大倉純子 


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