2010年02月06日13時55分掲載  無料記事
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イスラエル/パレスチナ

【パレスチナの村から】(2) クスクスと難民

(ラマラ6日=大野和興+上垣喜寛)土壁がところどころ崩れた年代物の建物に案内された。中に入ると、白衣を着た中年の女性が大勢忙しく働き、クスクス(couscous)の食材を作っている。土間にあぐらをかくようにどっかりと座り、粉をこねる女たちは全員この地域にある難民キャンプのクスクス生産組合のメンバーだ。パレスチナでは人びとのあらゆる活動がイスラエルの占領と重なる。 
 
  その加工施設はPARC(パレスチナ農業復興委員会)の農産加工施設のひとつ。西岸地区の中心都市ラマらから東に向かい、ジェリコの郊外にある。昨年までここはナツメヤシの実の選別と箱詰め工場だった。それが近代的な選別機の導入に伴いよそに移転、その後女たちの働き場となった。 
 
  女たちはそれまでは難民キャンプの中で集まり、作業をしていた。1948年、欧米の後ろ盾を得てこの地に建国したイスラエルは、531ヶ所の村と町を破壊して住民を追放、72万6000人がヨルダン川西岸とガザなどに避難、難民キャンプをつくった。その後も続く占領地域の拡大や土地接収で、生活と生産の場を奪われる人たちが増え続けた。 
  難民生活は世代を越えて続き、生存の基盤の失った結果として貧困層が多い。この加工場で働く女性たちの多くは夫を失った人たちで、クスクスの食材加工で得る収入が主な収入源となっている。 
 
  クスクスというのは家庭料理で、通常は家で作り食べる。小麦粉を捏ね、時間をかけてにひねり、捏ね、米粒ほどの粒にする。その様子は練達のそば職人のふるまいを想起させる。 
  できあがった粒は15分ほど蒸し、乾燥させる。女たちはそれを共同作業することで商品化し、収入源に育てた。PARCはその女たちの活動を助け、より精密な乾燥や選別の施設を用意し、販売先を開拓。訪れたこの日はイタリア向けの製品が作られ、箱づめされていた。パレスチナでは小麦はあまり生産されておらず、輸入されているが、ここで使う小麦粉は地元産をと生産も始めている。 


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