2010年02月23日20時24分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201002232024032

ロシアン・カクテル

(19)マースレニツァ(冬を送る祭り)<下> 遊びを楽しみ幸せな生活を願う タチヤーナ・スニトコ

  現在は「マースレニツァ祭り」は8日間行われ、それぞれの日には特別な名称がつけられています。 
 
 初日の月曜日は「出迎えの日」と言います。昔は子供たちが朝家を出て、雪山を作って特別な詩を唱え、「マースレニツァ」を呼びました。そして、“マースレニツァが来た!マースレニツァが来た!”と大声を出して、殴り合いの遊びをするのです。大人たちは初日には親戚を訪問します。 
 
 寒い冬を象徴する「マースレニツァ人形」は細い白樺の幹、枝、麦わらから作られています。「髪の毛」はお下げに結んだ亜麻の繊維であり、頭にはプラトーク(頭巾)をかぶっています。 麦わらと木は春の生物の力を現しています。 
 「マースレニツァ人形」の手には「ブリヌイ」(パンケーキ)を作る器を載せて、望みを託した色とりどりの好みのリボンをつけるのです。そのリボンは「マースレニツァ祭り」の最終日に「マースレニツァ人形」と一緒に燃やすと望みがかなうと考えられています。それぞれの「マースレニツァ人形」には“ヅニャ”(Дуня)や“アヴドチヤ”(Авдотья)などの名前をつけます。 
 
 二日目の火曜日は「ザイグリシ“遊びのはじめ”」と言います。様々な「マースレニツァ」の遊びを楽しむ日です。たいていの場合、未婚の若者はパートナーを選ぶのです。これは求婚する方法です。 
 
 三日目の水曜日は「ラコムキ “美食家・甘口”」と言います。「ブリヌイ」(パンケーキ)を楽しむ日です。この日には、姑は「ブリヌイを楽しむ」ことに婿を家へ招くのです。昔は招く婿が一人や二人ではなく5人も10人も招きましたので、娘が多い家族には大変でした。 
 
 ところで、「マースレニツァ祭り」には沢山食べなければなりません。沢山食べるとその年は豊作になると言う考え方があります。それで、普段頑張らないロシア人もみんな頑張って食べます。ロシアの言葉では「犬が尻尾を振るように食べなければならない。」と言います。たびたび、若い女性も年寄りの女性も「良い姑(婿にブリヌイの御ちそうをする)」の歌を歌いながら村から村へ橇で周ります。 
 
 四日目の木曜日には「“雄大な”マースレニツァ祭り」が始まります。大衆行事の殴り合い遊びが行われます。マースレニツァ祭りの歌を歌いながらマースレニツァ人形を家から家へ回します。“雄大なマースレニツァ祭”が始まると仕事は4日間禁止です。 
 
 五日目の金曜日は「姑の夜会(パーチー)」と言います。この日には婿の方がお返しに姑に「ブリヌイ」(パンケーキ))を馳走します。 
 
 六日目の土曜日は「義理の姉妹(現在の結婚式の習慣が)の夜会」と言います。結婚した若い女性は夫の親戚を招いて「ブリヌイ」(パンケーキ)をご馳走します。「ゾロブカзоловка」(義理の姉妹)という言葉は“悪”(зло)を意味します。もう一つの義理姉妹の名前は「ネヴェスツカневестка」です(ゾロブカとネヴェスツカは姉妹です)。「ネヴェスツカ」は「どこから来たのは知らないпришла невесть (неизвестно) откуда」を意味します。夫の姉妹はその「どこから来たのは知らない」女性は好きではないのです。 
 
 七日目の日曜日はマースレニツァ祭りの最終日です。その日は「マースレニツァの見送り」・「キスの日」・「許しの日」です。人々は互いに許しを請います。「あなた対して悪いことをしましたかもしれません、許してください」、と言って、キスをして、深々とお辞儀をします。そして、寒い冬の象徴であるマースレニツァ人形に「ブリヌイ」(パンケーキ)をあげて焚火に入れて燃やします。 
 
 マースレニツァ祭りには大きなマースレニツァ人形だけではなく小さな家庭用のマースレニツァ人形も作ります。その家庭用マースレニツァ人形の大きさは20〜25センチで、麦藁で作ります。顔は白で目・鼻・口なしの布製です。 
 
 「家庭用マースレニツァ人形」は家族の幸福・子孫の健康・家の守りのシンボルです。昔は、この人形を「クラスニイ・ウゴルКрасный угол」(床の間のような大事なところ)に飾りました。「マースレニツァ週間」中には、この人形を窓辺に飾りました。 
 
 さて、現在の結婚式の習慣である花嫁人形を車を飾る 「家庭用マースレニツァ人形」の由来です。 
 
 遊び好きなロシア人は幸せな生活についてこのように表現します。 
 
 「このような生活はまるでマースレニツァ祭りのようです!」 
“Не жизнь, а Масленица!» 
(つづく) 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。