2010年03月29日11時14分掲載  無料記事
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社会

売れるならそれでいいのか  排外主義を煽る本で書棚は満杯、書店の社会的責任はどこに

  激烈な差別と外国人憎悪を流布する運動「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の出現や、民主党政権がいわゆる「高校無償化」法案の対象から在日朝鮮人の子弟が通う朝鮮高校を除外する「論議」出るなど、日本社会に根付く差別と排外主義が表面化し、問題視されている。国連の人種差別撤廃委員会が発表した日本の人権状況に関する見解は、日本政府に対して人種差別の扇動に歯止めをかけるよう要請すると同時に、メディアの責任についても言及している。日本社会に蔓延する差別と排外主義の言動は国際的に対応を求められているのが現状だ。私たちの身近にも、人種的偏見を煽る言説は蔓延っている。そのひとつが日本を代表する大型書店、紀伊国屋書店の某店舗。書棚には「在特会」の源流ともなった「マンガ嫌韓流(山野車輪著 晋遊舎)」などの人種的偏見をあおる出版物が、大々的に展開されていた。書店はベリタの取材に対し「『売れているから』としか答えられない」としている。(村上力) 
 
  本稿に掲載した写真にあるように、紀伊国屋書店の某店舗では「マンガ嫌韓流(山野車輪著 晋遊舎)」シリーズや、「在特会」会長桜井誠氏の著作「反日韓国人撃退マニュアル(桜井誠著 晋遊舎)」などの、人種的偏見を煽る出版物を平積み欄にて大々的に展開している。なお、掲載した写真は昨年6月のものであるが、同店は今現在も同様の配置を継続している。 
 
  「マンガ嫌韓流」シリーズの流行を源流とする「在特会」は、最近各地で人種差別・排外主義に基づく悪質な事件を引き起こしている。昨年12月に同会の関西支部(当時)構成員が朝鮮学校に対して行った街宣活動は、国連の人種差別撤廃委員会でも取り上げられ物議を醸した。現在、「在特会」の会員数は8000人を超え、朝鮮学校に対してデモ行進を仕掛けるなど、活動もより過激化していると見られる。 
 
  今年三月中旬に、記者は上記の紀伊国屋書店某店舗に対して「『マンガ嫌韓流』などの人種的偏見をあおる出版物を平積みで展開しているのはなぜか。そのことによる社会的影響をどう考えているか」との内容で取材を申し込んだ。これに対し、書店は「『売れているから置いている』としか答えようがないので、取材に応じることはできない」として、事実上取材を拒否した。 
 
  「『売れているから置いている』としか答えようがない」とする書店の認識は率直なものであったと捉えている。「在特会」が「日本最大の保守系市民団体」を自称していることを想起すれば、「マンガ嫌韓流」シリーズをはじめ外国人憎悪を煽る出版物が日本の保守層を中心に爆発的な人気を博していることは理解できる。 
 
  同時に上の書店の認識は、同店の書店としての社会的責任の希薄さを露にした。「売れているから」それで良いのだろうか。上述のように、日本における人種差別の思想の流布が国際的に問題化されているのは事実であり、また最近では「在特会」などの排外主義の広がりを懸念する声が市民団体などから出ている。紀伊国屋書店は、そうした動きに逆行することも恥じないのであろうか。 


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