2010年06月20日18時50分掲載  無料記事
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政治

「もうやめよう!日米安保」に参加して 安保条約の自然成立から50年目の日 安原和雄

  現行日米安保条約が「反対の声」で囲まれた国会で自然成立してからちょうど50年目の2010年6月19日、集会「もうやめよう! 日米安保条約」が開かれた。その集会に参加して講演「日米安保体制の問題点と目指すべき日米関係」を聴いた。講演の要点は3つにまとめることができる。すなわち<「平和をもたらすオバマ米大統領」は誤解>、<民主党政権はなぜ沖縄の民意を無視するのか>、<今後目指すべき日米関係のあり方> ― である。 
 いずれも見のがされやすい視点である。今後のオバマ米政権、日本の民主党政権の行方はもちろんのこと、軍事基地反対の沖縄の民意は実現できるか、さらに日米軍事同盟とは異質の望ましい日米関係のあり方をどう考えるか ― など斬新な分析と主張には学び、かつ実践していくべきことが少なくない。 
 
 集会「もうやめよう! 日米安保条約 ― 米国・日本・沖縄の新しい関係をめざして」(正式名称)は「2010安保連絡会」(注)主催で、社会文化会館(東京・千代田区永田町)に約500名を集めて開かれた。 
(注)2010安保連絡会は首都圏を中心に戦争反対、軍事基地反対、安保反対に取り組んでいる団体や個人が集まってつくった組織で、日米安保破棄を目指している。 
 
 この集会ではまず小林アツシさん(映像ディレクター)制作の「どうする安保」を上映、続いて浅井基文さん(広島平和研究所所長)の講演「日米安保体制の問題点と目指すべき日米関係」、さらに安次富浩さん(沖縄・ヘリ基地建設反対協議会共同代表)の報告「沖縄・辺野古の闘いと日米安保」などがあった。 
 集会終了後、参加者は国会正門前、首相官邸前で「安保NO!」などのプラカードを掲げてアピールを行った。 
 
 ここでは浅井さんの講演(要旨)を次の3点に絞って紹介する。 
*「平和をもたらすオバマ米大統領」は誤解 
*民主党政権はなぜ沖縄の民意を無視するのか 
*今後目指すべき日米関係のあり方 
 
▽ 「平和をもたらすオバマ米大統領」は誤解 
 
 オバマ大統領のチェコの首都・プラハでの「核兵器のない世界」に関する演説(2009年4月)は誤解されている。彼の軍事政策はブッシュ前大統領と変わってはいない。「平和をもたらす大統領」という「オバマ神話」は誤解である。 
 彼はプラハ演説では次のように述べた。 
「核保有国として、核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道議的責任がある」と。 
 しかし厳密に言えば、「行動する道義的責任」と言ったとき、「何について」「どのように」「どこまで」行動するのかを示してはいない。これは目標を言ったにすぎず、政策ではないことを認識する必要がある。 
 
 さらに次のようにも述べた。 
 「私は、米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを明言する。私は甘い考えはもっていない。この目標はすぐに達成されるものではない。おそらく私の生きているうちには達成されないだろう」と。 
 オバマ大統領はノーベル平和賞受賞決定に際して次のように述べた(09年10月9日)。 
「核兵器廃絶などの課題は、私の生きている間には完成しないだろう」と。 
 
 もう一つ、オバマ大統領は戦争肯定思想の持ち主である。ノーベル平和賞受賞演説(09年12月12日)で以下のように述べている。 
 「我々は厳しい真実、すなわち我々が生きている間には暴力を伴う紛争を根絶することはできない、という真実を認めなければならない。武力行使が必要なだけではなく道義的に正当化されると国家が考える場合が出てくるだろう」、さらに「米国民への脅威に対して手をこまねいていることはできない。間違ってはいけない。世界には邪悪は存在する。非暴力の運動では、ヒトラーの軍隊を止めることはできなかっただろう。交渉では、アルカイダの指導者たちに武器を置かせることはできない。武力行使がときに必要だということは、冷笑的な態度をとることではない。それは人間の不完全さと、理性の限界という歴史を認めることだ」と。 
 
<安原の感想> 「オバマ神話」は間違っている 
 なぜわざわざ「核廃絶は私の生きている間には完成されないだろう」などと否定的な言い訳をする必要があるのか、疑問が消えなかった。困難なことは事実としても、大統領という地位にあるのだから、「いのちある限り廃絶に努力したい」というべきではないかとこれまで機会あるごとに指摘してきた。米国における軍産複合体という巨大な戦争勢力からの反平和的な圧力を感じていたのではないかと想像してもいた。 
(ブログ「安原和雄の仏教経済塾」09年10月12日付=掲載の記事「米大統領にノーベル平和賞授与の波紋 ― 軍産複合体をどう封じ込めるかが課題」を参照) 
 
 しかし浅井式分析ではオバマ大統領もブッシュ前大統領同様の戦争肯定思想の持ち主であり、平和主義者という「オバマ神話」は間違っていると強調している点に注目したい。アフガニスタンへの軍事的侵攻を継続していることなどからも、たしかに「オバマ神話」はすでに崩壊している。 
 
▽ 民主党政権はなぜ沖縄の民意を無視するのか 
 
 民主党政権はなぜ「米軍基地反対」という沖縄の民意を無視するのか。その背景に日米軍事同盟の変質強化が進んでいるという事実がある。 
 まず武力攻撃事態対処法(2003年)など国内有事法制の整備がある。 
 さらに「日米同盟:未来のための変革と再編」(2005年10月)は「世界をにらんだ日米軍事同盟」として次のようにうたっている。「日米同盟は日本の安全とアジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠な基礎」、「同盟に基づいた緊密かつ協力的な関係は世界における課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしており、安全保障環境の変化に応じて発展しなければならない」など。 
 見逃せないのは、「未来のための変革と再編」に基づく日本全土の米軍への支援策で、「日本は、日本の有事法制に基づく支援を含め、米軍の活動に対して、事態の進展に応じて切れ目のない支援を提供する」とわざわざ「切れ目のない支援」という文言を使っている。 
 
 これを受ける形でつくられたロードマップ(2006年5月・具体的な実施日程を含む計画)に「兵力削減とグアムへの移転」「ミサイル防衛」などと並んで、普天間代替施設について「普天間飛行場代替施設を、辺野古岬とこれに隣接する大浦湾と辺野古湾の水域を結ぶ形で設置」と書き込まれている。 
 
 このロードマップ合意の直後にまとめられたブッシュ・小泉共同声明「新世紀の日米同盟」(2006年6月)は次の3点を強調した。 
・「日米の安全保障協力は、弾道ミサイル防衛協力や日本における有事法制の整備によって深化してきた」 
・「両首脳は日米同盟を将来に向けて変革する画期的な諸合意が行われたことを歓迎した。米軍及び自衛隊の過去数十年間で最も重要な再編であり、歴史的な前進である」 
・「両首脳はこれらの合意の完全かつ迅速な実施が、日米両国にとってのみならず、アジア太平洋地域の平和と安定にとって必要であることについて一致した」 
 
 つまり「ロードマップ」の完全実施は米国の世界戦略上不可欠ということであり、これこそが民主党政権が沖縄の民意を無視してまでも対米約束の履行にこだわる理由である。 
 
<安原の感想> 対等な日米関係は「夢のまた夢」か 
 「ロードマップ」の完全実施は、世界をにらむ覇権主義に執着する米国にとっては不可欠であるとしても、歴史的に観て破綻状態に近い覇権主義は醜悪でさえある。問題はなぜ自民党政権に代わって登場した民主党政権がその覇権主義に100%に近い形で同調し、支援を重ねなければならないのかである。 
 答えは単純である。それは民主党も日米同盟堅持が主流となっているからである。この点は自民党と変わらない。 
 菅政権に居残った岡田外相、北沢防衛相らは自民党顔負けのタカ派ぶりともいえる。誰よりも菅首相自身が「日米同盟は国際的な共有財産」(所信表明演説)という日米同盟賛美観の持ち主で、そこに安保批判の入る隙間はうかがえない。これでは「従属的な対米関係」を克服して、新しい「対等な日米関係」の構築を民主党政権に期待することは「夢のまた夢」というほかないだろう。 
 
 「米軍駐留は不可欠」という大見出しの記事が毎日新聞(6月20日付)に掲載されている。クリントン米政権の国防次官補などを努めたジョセフ・ナイ米ハーバード大教授との会見記事で、気になるのは以下の発言である。 
問い:米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり日米間がぎくしゃくしたことについて 
答え:困難な時期だったが、学習の時期だった。両国が日米同盟の重要性について再認識し、この時期を経て同盟関係は弱くなるどころか、強化されたと考えている。 
 
 発言の中の「学習」とは日米双方にとっての学習、という意だろうが、日米政府ともに「沖縄の民意」を学習したとはとても言えない。覇権主義はそもそも民意とは両立不可能であろう。しかも「日米同盟は強化された」という認識だから、現実を願望と混同する超楽天主義とでもいえようか。 
 
▽ 今後目指すべき日米関係のあり方 
 
 目指すべき日米関係のあり方について次の項目が挙げられている。 
(1)国際的に恵まれた視点:日本国憲法という座標軸を出発点にできる日本の私たち 
(2)私たちが日米関係を動かすことを可能にする条件 
(3)日米関係を健全なものとするために私たちが克服すべき課題 
 (イ)日本という国家の国際的重みを正確に理解し、健全な国家観を育むこと 
 (ロ)曖昧な平和観を鍛える 
(4)私たちの運動のあり方に対する私見 
 
 ここでは(1)、(2)に絞って紹介する。(3)、(4)も興味深い視点であるが、割愛する。 
 
 まず(1)の内容は以下の通り。 
*平和憲法9条のよって立つ根拠 
・2度と戦争をしないという不戦の誓い(国際公約) 
・原爆体験に基礎を置く非核・反戦の思想 
・人間の尊厳を最重視する「力によらない」平和観 
*21世紀の人類の歩むべき方向性を指し示す先駆性 
・人権、民主と「力によらない」平和観を両輪とする日本国憲法 
・人類の歩みに対して基本的方向性を提起している憲法前文と25条を含む人権条項 
 
 次に(2)について 
*核廃絶の先頭に立つ使命と責任 
・米国の原爆投下責任を問いただす:このことなくして、米国をして核抑止肯定論を最終的に断念させることはできない。日本が本気になることによってのみ米国核政策の根本的転換を導くことが可能となる。 
・核兵器につながり、放射能被害をもたらす原子力発電を清算する必要性 
・朝鮮半島の非核化 
 
*「力によらない」平和観による新たな国際平和と安全の体制の構築 
・「力による」平和観(権力政治)による旧国際秩序構想に対する「力によらない」平和観による新国際秩序構想の提起 
・人間の尊厳を普遍的価値として承認、国際的相互依存の深まり、現代の戦争の破壊性や非人間性を認識の根底に据えた時の「力によらない」平和観の21世紀的説得力 
・平和大国日本が担うべき軍事超大国アメリカに対する代替軸提起の役割 
 
*大国であること(経済力、科学技術力、人的資源) 
・「大国」論は事実認識の問題であり、価値判断の問題ではない。 
・国際関係において大国が担う客観的役割:過去の大国が軍事的覇権に走った事実を認めた上で、平和憲法に基礎を置く平和大国・日本の担いうる国際的役割を認識する。 
・私たちがその気になりさえすれば、米国に根本的変化を促す力量を備えていること。その条件として次の2点が必要である。一つは旧思考(北朝鮮・中国脅威論)を清算し、アジアの中の日本という「立ち位置」を明確にすること、もう一つは経済大国・日本が新自由主義を清算することで、これによって米国に政策転換を強いる巨大な力となる。 
 
<安原の感想> 「日米関係の未来図」実現に必要な条件 
 これほど多角的視点に立つ日米関係の望ましい未来図はあまりお目にかからないような印象がある。要点は以下の4つに整理できる。その実現に必要な条件を考える。 
 
日本国憲法の理念(平和、反戦、人権、民主)に基づく「力によらない」平和観の実践=憲法の平和理念と根本的に矛盾する日米軍事同盟の破棄・解体が必須条件である。 
 
核廃絶の先頭に立つ使命と責任=核廃絶は日本にとっては歴史的な使命と責任である。そのためには核抑止力論を否定する立場から、中国と北朝鮮を含む東アジアの非核化推進が不可欠といえる。同時に日本の国是「非核3原則」が事実上「非核2.5原則」(核搭載艦などの一時寄港を容認する核密約のため)に後退している現状を改める必要がある。 
さらに浅井提案では「原子力発電の清算」も挙げられているが、当然の指摘であり、その代替策として再生可能な自然エネルギー(太陽光など)への中長期的な転換策が不可欠である。 
 
平和大国日本が担うべき軍事超大国アメリカに対する代替軸提起の役割=これは平和憲法の理念を生かす理想的な姿といえるが、日米同盟信者が多い現状の民主党政権には期待できない。ただ憲法9条本来の理念(戦争放棄、非武装、交戦権の否認)への期待は世界で高まってきており、21世紀の新しい潮流でもあり、決して夢物語ではないという展望を持ちたい。 
 
経済大国・日本が新自由主義を清算すること=ブッシュ・小泉時代に頂点に達し、大きな災厄をもたらした新自由主義(=自由市場原理主義)には「軍事・安全保障」と「経済」の2つの顔がある。前者では軍事同盟を足場とする軍事力信奉主義であり、後者は弱肉強食、格差拡大、貧困を招く競争促進主義である。 
 前者は沖縄での強い抵抗を受けてぐらついたが、菅政権の登場とともに立て直しを策している。一方、後者は2008年の世界金融危機をきっかけに破綻したが、決して消滅したわけではない。政・官・財・学・メディアなどの分野でつねに復活の機会をうかがっている。新自由主義の清算も時代の要請であるが、決して手軽な仕事ではない。 
 
*本稿は「安原和雄の仏教経済塾」からの転載です 
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