2010年06月26日10時06分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201006261006496

ロシアン・カクテル

(25)鳥文化の国<下> 女性の頭被り「ココーシニク」 タチヤーナ・スニトコ

  女性の伝統的な服は「世界樹」を象徴しています。女性の体は、世界樹に合わせて三つの部分(“界“)から成っています。女性の「頭と手」は「上界:空」を表しています。そして、頭は「梢」、手は「枝」を表しています。太陽、月、鳥は「空」を象徴し、「胴体」は「幹」(中界:地球、蜂)、「足」は「根」(下界:蛇、ビーバー)を表しています。 
 
 頭のかぶりものは、形も名前も「上界:空」と関係があります。かぶりものの部分も、太陽か月かトーテムの鳥(白鳥、鴨、鴈、雄鶏など)を表しています。 
 
 一番よく知られている頭のかぶりものは「ココーシニク」(кокошник)と言います。「ココーシニク」という言葉は、古代スラブ語の「コーコシ」(卵をかえしている雌鶏・太陽を呼びさます雄鶏を意味する)という言葉から由来しています。「ココーシニク」の特徴は「とさか」です。その形は地方によって異なっています。例えば、ロシア中部では半月(又は三日月)の形をしている「ココーシニク」が通常使われていました。 
 
 又、別のよく使われていた頭のかぶりものは「キーカ」(кика)と呼ばれていました。「キーカ」という言葉は白鳥の鳴き声を意味しています。形も白鳥の頭に似ています。 
 
 「キーカ」は15世紀には女帝の頭のかぶりものとして知られていました。その後、農婦たちも「キーカ」に角(繁殖力・多産の象徴)をつけてかぶるようになりました。何世紀もの間、 ロシア正教はその「悪魔の角」を何とか廃止させようと戦かっていたがうまくいきませんでした。一本もしくは二本角の「キーカ」は北方ロシアで普及していました。 
 
 面白いのは、女性が産む子供の数が多くなるほど「キーカ」は高くなったことです。 
 
 又、「鳥」の名前は、ココーシニクかキーカの上にかぶる織物にあります:「ソローカ」(сорока:かささぎ)と言います。ソローカの部分にも名前があり、「羽」と「尻尾」です。刺繍の模様にも鳥があります。 
 
 「ココーシニク」は女性の魔除けでしたので、その装飾も象徴的です。例えば、真中には女神の象徴(その象徴はロシアのアルファベットの一つの文字になった:“Ж”)です。その両方には”S”字形をした白鳥、ココーシニクの裏側には「世界樹」、「鳥」、「種」、「実」が刺繍されています。 
 
 「ココーシニク」や「キーカ」の中には、刺繍に「こぶ」(凸面)があるものがあります。その「こぶ」(凸面)は「繁殖力・多産」を意味しています。それは、頭に「こぶ」のある白鳥の種類に由来しています。ロシアには、二種類の白鳥がいます。一つは「クリクン」という「こぶのない」白鳥で北極園地方にいます。もう一つは、「シプン」と呼ばれている白鳥で「こぶ」がある種類です。一般的に見かける白鳥は皆「こぶ」のある種類の白鳥でしたので、その「こぶ」に繁殖力があるとして解釈されていたのです。 
 
 スラブ民族の女性たちはいつも頭に何かかぶっていました。その理由は、女性の力というものは大地から受けるもので、空から受けるのではないという考え方があったからなのです。 
 
 妙なことには、神話的な考え方は依然として現代に繋がっています。 
 
 ロシアの女性刑務所では、冠をかぶっている白鳥のタトゥー画に人気があります。そのタトゥー画は「昔、私は自由で罪のない女性だった。」という意味なのです。不思議なことに、そのタトゥーはラテン語で書いてあるのです。(ロシアの教育システムは理解しがたい!) 
 
 「ココーシニク」は、現在はロシア民族舞踊を踊ってる女性か又は建築にしか見るしかできません。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。