2010年09月05日12時08分掲載  無料記事
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労働問題

分限免職処分の取り消しを求め社保庁元職員が集団提訴  解雇に合理的理由はなく、違法

  社会保険庁(現・日本年金機構)の元職員15人が7月23日、国を相手取り、昨年末の社保庁廃止に伴う分限免職処分(民間の「整理解雇」に相当)の取り消しを求めて京都地裁に集団提訴した。15人は厚生労働省の職員団体「全厚生労働組合」(全厚生)に加入する組合員で、業務は引き継ぐにもかかわらず雇用は継承しない問題や、「整理解雇の4要件」に照らして処分が違法であることを裁判を通じて世の中に訴えていく方針だ。 
 
  主張のポイントは、次の4点に集約される。 
 
(1)人員削減の必要性の不存在 
  民営化時の社会保険庁の職員が欠員状態にあったこと、そして年金機構が民間から1000名の職員を新たに雇用する計画であったことから、人員削減の差し迫った必要性は認められなかった。 
 
(2)分限免職処分回避努力を尽くしていない 
  日本年金機構への職員採用の際、政治的思惑から「新規採用」方式を取り、懲戒処分歴のある職員は一律に応募資格がないとした姿勢には、分限免職処分を回避しようとする努力が見出しにくい。また、日本年金機構に不採用になった職員や懲戒処分歴のある職員に対して、再就職斡旋や厚労省への配転等、分限免職を回避する努力を尽くしたとは言えない。 
 
(3)平等取扱の原則に反する 
  この間の行政機関の独立行政法人化や業務の廃止・縮小にあたっても、当該職員の雇用と身分は確保されている。特に、農水省の2500人を超える余剰人員は、政府が設置した「雇用調整本部」による省庁間配転で雇用が確保されている。 
  社保庁職員に対する整理解雇は、憲法や国家公務員法の平等取扱の原則に反する。 
 
(4)分限処分となる職員の選定の恣意性・不合理性 
  懲戒処分歴のある職員の日本年金機構への不採用は、実質的な二重処分に当たる。また、日本年金機構への不採用の理由や厚労省への配転拒否の理由が示されていない。 
 
提訴に至る経過は次の通りである。 
 
  全厚生は今年3月、分限免職処分が不当であるとして人事院に不服を申し立てた全厚生組合員39人を中心に、「全厚生不当解雇撤回闘争団」(団長・飯塚勇全厚生委員長)を結成して処分撤回闘争に臨んでいる。 また、全厚生の上部団体である「日本国家公務員労働組合連合会」(国公労連)も、同じく3月に「国公労連社保庁不当解雇撤回闘争本部」(本部長・宮垣忠国公労連委員長)を設置し、全厚生闘争団の支援に乗り出している。 
 
  宮垣闘争本部長は、5月に結成された「社会保険庁不当解雇撤回全厚生闘争団を支える会」の結成総会の中で、「国民に対するサービスを確保するとともに年金業務問題を解決するためにも、政府と日本年金機構に分限免職・整理解雇処分の取り消しと、『過去に懲戒処分を受けた職員は日本年金機構に採用しない』という基準を撤回させなければならない。そして、日本年金機構を希望する元社保庁職員を正規職員に採用させ、その経験と能力を活用することが、国民が安心できる年金制度を確立する上でも重要です」と訴え、全厚生という一労組だけの問題ではなく、公共サービスの確保を通じて国民生活を向上させるという観点から闘争に臨む方針を説明している。 


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