2010年09月06日12時37分掲載  無料記事
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政治

現在に対する見識と構想を(1)鳩山を突き動かしたものは何か  三上治

  猛暑日・真夏日・熱帯夜など暑さをあらわす言葉がテレビのキャスターから聞こえてくる。本来なら秋の気配が感じられる日々だがそれはない。民主党首脳には一足先に秋風が吹き始めているのだろうか。政権交代から一年しか経たないのに代表選挙というわけだ。でも、はじまったのだから彼らの政治的見識と構想を明瞭にして支持を得るしかあるまい。僕は小沢一郎を支持し彼の方に幾分かの期待をしている。この理由についてはこの論評の中でも明らかにしたい。 
 
  政治は現在の社会をどのような方向に持っていくか指示することであり、それが見識や構想としてでてくるのであれば、それを明瞭にしてもらいたいと思う。現在という時代と社会を対象化することが難しく、それを介して社会や時代の方向を指示することが困難であることを僕らも承知している。政治家も、とりわけ首相をめざしている人も事情は同じだと思う。だが、首相を目指すことはそれを語ることを要求されるのであれば精一杯それを示すしかあるまい。 
 
  今度の代表選にあたって奇妙な動きをしたのは鳩山前首相である。初めは菅を支持し、やがては小沢支持に変わり、途中では両者の妥協を画策したりもした。この奇妙な鳩山の行動には何があったのだろうか。僕はこれを菅や政府首脳の「他人の褌で相撲をとるような」行為に対する鳩山の怒りであり、ある意味で「政治とカネ」の問題への回答ではないかと思う。 
 
  政権交代において小沢・鳩山・菅のそれぞれが役割を果たしたし、その中で小沢と鳩山のカネ(資金力)が麻生政権の兵糧攻めに打ち勝つに寄与したことは三者ともよく知っていたと思う。しかし、政権交代後には小沢と鳩山は旧政権からの報復というべき攻撃にさらされた。検察の政治資金の獲得についての攻撃にはマスメディアも合流し、背後にはアメリカの後押しもあると言われた。官僚、メディア、旧政権、アメリカの攻撃は「政治とカネ」の問題をスキャンダル化して展開された。 
 
  鳩山や小沢は弁明に努めるだけで、この問題での闘いは阻まれた。何故なら、政治資金の収得や支出はタブ―であり、現実に進む闇の中の行為は公然とは語れない構造にあるからだ。これは「政治とカネ」の問題が現実とは別のところで語られ、欺瞞が横行する根拠でもある。政治の中でカネの果たす役割について政治家たちはよくわかっていても表だって語れない。語るとすれば綺麗か他者攻撃の素材である。これは現在の政治家たちが背負う矛盾であり、そこでは役割に対する沈黙の同意がある。小沢・鳩山・菅にはこの同意があったのを菅が裏切った。これへの鳩山の怒りがこの間の行動となったのではないかと思う。 


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