2010年10月19日00時52分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

司法修習生になる若者たちの訴え 〜給費制の存続を求める〜

  昨日、東京の弁護士会館で、9月に司法試験に合格し、11月から司法修習の研修を受ける若い法律家の卵たちが1年間の司法修習期間の「給費制」存続を訴えた。給費制の存続を訴えるこの集団は「ビギナーズネット」と言い、メンバーは1000人に達した。弁護士、司法修習生、法科大学院生たちからなる。 
 
  法科大学院制度に変わって、学生には一層金がかかることになった。法科大学院時代は2年間か3年間だが、学費や生活費を借金して賄う学生が増えており、借金額も500万円や1000万円に上る人が多数存在している。この上、1年間の司法修習期間もこれまで支給されてきた1ヶ月平均20万円ほどの給費が、給費制から貸与制に変わると、さらに200万円、300万円と借金が嵩むことになる。法科大学院時代も、司法修習期間もアルバイトをしている時間の余裕はない。法曹人になるのにこんなにも金がかかるようだと、今後貧しい家の子弟は法曹界に入りづらくなる、と彼らは訴えている。 
 
  ビギナーズネットはこれまでも渋谷や日比谷公園など、街頭に立って訴えてきた。昨日は政党を回って議員達に貸与制に移行する前に法改正するように求めた。11月末に新期の貸与が始まるため、今月から来月にかけてが正念場だ。訴えの中で特に印象に残ったのはこれから司法修習生になる若い女性だった。 
 
  「貸与申請をしていない人が500人も存在すると報じられましたが、裕福だから貸与申請しない人ばかりではありません」 
 
  この秋、司法修習生になるおよそ二千人のうち、貸与申請をしていない人が500人ほどに上るそうだ。彼女も申請していない。その理由は貸与申請には連帯保証人が2名必要になることだという。彼女の場合、親以外で頼れる宛ては姉の夫だった。しかし、まだ結婚半年にしかならない義理の兄に300万円近い借金の連帯保証人になってもらうことに彼女の親は気兼ねしたという。連帯保証人となれば返済義務が借主と同様に発生するからだ。そこでクレジット会社に利息を払って保証人になってもらうことも考えたという。保証人が得られないという問題は貧困問題としてクローズアップされているが、法曹人の卵にも浮上していたのだ。彼女は研修をどこで受けるか見極めるまで、貸与については様子を見ることにした。 
 
  約2千人の司法修習生は全国の地方裁判所の管轄にそれぞれ分かれ、これから研修生活に入る。自宅から通える地域で研修を受けられる場合は出費が抑えられるが、遠い場所に配属されると、家賃や生活費も工面しなくてはならない。 
 
 だが街では弁護士は金が儲かるからいいだろう、と見る人も少なくない。もし、給費制が存続することになるなら、弁護士という職業の公共性が改めて問い直されることになるだろう。 
 
村上良太 


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