2010年10月22日06時15分掲載  無料記事
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検証・メディア

BBCの将来に激変? ―政府の歳出見直しで、4年で16%経費削減

 20日、英政府が、財政再建のために政府の歳出計画を見直す「歳出見直し」を発表した。今後4年間(2014−15年まで)に、政府歳出を各省庁ごとに平均19%削減する予定だ。この結果、政府予測では49万人近くの失業者が出る可能性があるという。メディアがらみであっと驚くのがBBCの話である。4年で16%の経費削減となったのである。(ロンドン=小林恭子) 
 
 振り返ってみれば、BBCも一つの公共機関であるから、何らかの削減をしてしかるべきではないかー?そんな声が政府から聞こえてきた昨今であった。 
 
 一方、BBCは設立許可証と王立憲章でその役割や活動が規定されている、特別な存在である。したがって、政府の大規模歳出削減が行われるからといって、BBCが犠牲を強要されることはないのではないか、という声もあった。 
 
 しかし、BBCには政府に握られている弱みがあった。それは、毎年のテレビ・ライセンス料(受信料に相当)の値上げ率である。10年毎に決定される、先の設立許可証と王立憲章だが、ライセンス料に関しては、政府との交渉で決めることになっている。しかも、今回の10年(2007−8年から、2016−17年)のうちで、ライセンス料の値上げ率を大体決めたのは最初の6年間のみ(2012−13年分まで)だった。 
 
 ライセンス料の2013年分以降をどうするかは、BBCと担当の文化・メディア・スポーツ省の大臣が、来年春ぐらいから交渉するはずになっていた。 
 
 事態が急転したのは、比較的最近である。財務省から歳出カットのプレッシャーを受けて、文化省はBBCに対し、75歳以上の視聴者のテレビ・ライセンス料を、BBC自らが負担するようにして欲しい、と持ちかけたようだ。どういうことかというと、75歳以上の視聴者はライセンス料を払わなくていいのだが、この分を、雇用省が負担していたのである。それを、今度からはBBCに負担してほしい、と。 
 
 BBCは、これに大慌てになったようだ。経営陣もBBCの活動内容を検証するBBCトラストも猛反対。もしBBCがこれを払ったら、まるで「福祉のコストを払ったことになる」「放送業者としてのBBCの活動内容からはずれる」、と。 
 
 すったもんだの交渉があって(一時、トラストのメンバーがもしどうしても政府が言うことを聞かないなら、辞職するという話も出たらしい)、結果は、BBCはこの費用を負担しなくてもよくなった。その代わり、 
 
.薀ぅ札鵐肯舛聾什澆龍盂曚里泙沺■横娃隠供檻隠掲度(今回の10年間の最後の年)まで、凍結する。 
外務省が資金を負担していた、商業国際放送のBBCワールドサービスと、世界中のニュースをチェックするBBCモニター(内閣府が資金を出していた)、ウェールズ語放送のSC4を、BBCが面倒を見る 
BBCの予算の中で、テレビのデジタル化への移行資金として使われていた分を、今後は、英国内のブロードバンド敷設費用として使う 
 
 などが決まったのである。非常に急な決定で、最終的にBBC経営陣、トラスト、政府が合意したのは、歳出見直しが発表される前日であった。 
 
 そして、,らのために、BBCは4年間で実質16%の予算削減となった。 
 
 各政府省庁の歳出が平均19%削減(予定)であるのと比較して、「たいしたことはない」・・・とはいえないだろう。何しろ、これで、新たに3億4000万ポンド(約43億6000万円)ほどの経費を、BBCはまかなわざるを得なくなったのである。これは、もし75歳以上の視聴者のライセンス料をBBCが負担した場合の5億5600万ポンド(約71億4000万円)よりは、確かに少ないが、喜ぶほどではない。何しろ、「新たに」この金額が追加となるのだから。 
 
 私が懸念することの一つは、あっという間にBBCのライセンス料の額やBBCワールドを傘下に入れる、ということが決まってしまったことだ。通常、BBCの一挙一動は、トラストなり、政府なりが、まず国民や視聴者の意見を聞く機会を設ける。委員会が設置されることもあるだろう。意見を聞く前には、提案者が提案書を作る。数ヶ月かけて、大体の枠組みを決めて、最後は議会なり、トラストなりが決定を下す。それが、ほんの短期間にー実質的な交渉は一日か二日でー決まってしまった。 
 
 BBCとしては、今後6年間のラインセンス料収入が、今からきっちりと決まっているため、ある意味では、安定した計画が立てられる。75歳以上の視聴者は今後増えるばかりであろうから、そのライセンス料を負担することを断ったのも、良い展開であった。 
 
 しかし、いざ!というときに、政府側の都合で、急にまた何かをさせられるのではないか、という懸念は残る。 
 
 また、BBCワールドの資金を負担していたのは外務省だが、一種のパブリック・ディプロマシーというか、外交の意味があった。それを今度はBBCが全部資金を出してやる、ということなると、どんな意味合いになるのだろう?また、BBCワールドは商業活動を行っているが、この点から、ますますライバル放送局から批判されないだろうか? 
 
 BBCとは一体どんな放送局で、何を目指すのか?その目的や意味合いが、ぼやけてきたようにも思う。ライセンス料という形で視聴者から運営費を集め、時の政府からは(編集上の)独立を得る、というBBCの枠組みが、なんだかあやうくなってきた。 
 
 お金の采配を政府に握られているために、どこまでもどこまでも、妥協させられるのではないか?そんな危惧を持っている。(ブログ「英国メディア・ウオッチ」より) 


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