2010年10月30日13時01分掲載  無料記事
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環境

マダガスカルの森林破壊が深刻化 違法伐採材の中国への輸出も一因に

  森林破壊による生態系の危機が深刻化しているマダガスカル共和国で、それに拍車をかけるような動きが起こっている。違法伐採された木材が中国に輸出され、同国の家具業者やギター・メーカーの原材料として使用されているというのだ。特に紫檀(ローズウッド)で作られたベッドには高値がつくため、次々と姿を消している。名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で、国際非政府組織(NGO)のグローバル・ウィットネスと環境調査機関(EIA)が発表した。(クアラルンプール=和田等) 
 
 両団体が発表した報告書では、中国の木材需要が高まる中、「中国の取引業者が、自分たちの買い入れる木材が危機に瀕している種の木材で、違法伐採されたものであることを知りながら買っていることも少なくない」と指摘。「マダガスカルから輸出された木材でつくられた製品にいかに高値がつこうとも、マダガスカルの地元の人たちに還元されるのは利益の0.1%以下にすぎない」とも指弾している。 
 
 黒檀もギターをはじめとする楽器の原材料として中国に輸出され、同国で作られたギターが国際市場に出回っているという。 
 
 インド洋上に浮かぶマダガスカルは、2000年以前の状態と比較すると原生林の約80%が消失し、毎年10〜20万ヘクタールの土地が森林破壊によって失われ、地域特有の多くの植物や動物が絶滅の危機に直面している。 
 
 このため、同国森林省は2010年初めに森林相が希少種の木材輸出の全面禁止令を出したものの、2009年に起こったクーデターによる政権交代による政治的混乱が依然として続いているため、法執行が徹底できないでいるのが現状。その影響で、これまではひそかにおこなわれていた違法伐採が大々的に実施されるにようになり、国立森林公園にまで大規模な伐採の手がおよぶようになっているという。こうして切り出された木材のほとんどが中国向けに輸出されていると報告書は指摘する。 
 
 「マダガスカルで違法伐採された黒檀が輸出され、ギターの原材料として使われている可能性がある」。両団体がこうした警鐘を鳴らしたことを受け、米国では当局が09年11月、著名ギター・メーカー、ギブソンのナッシュビルにある工場に対する査察調査を実施した。 
 
 両団体はこの米国の事例をあげ、「木材消費国の政府は、米国の例に倣い、違法伐採された木材の輸入を根絶すべきである」と呼びかけるとともに、中国に対しては、「マダガスカルからの木材輸入を中止させるための措置を即座にとり、自国の企業や取引業者により厳格な政策を適用することで、生物多様性の保護に向けての責務を果たしてほしい」と要求している。 


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