2011年01月22日02時10分掲載  無料記事
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イスラエル/パレスチナ

バラク氏の労働党からの離党とその波紋〜新党から4人が入閣へ〜

  イスラエルの国防大臣であるエフード・バラク(Ehud Barak 1942-)氏が労働党から離党する。バラク氏に近い労働党議員4人もバラク氏と新党を立ち上げる見通しだ。ただし、バラク氏は連立内閣には留まるという。2009年の選挙以来、労働党は右派のリクードなどと連立内閣を組織してきたが、イスラエルの国会の力学に変化が起きている。 
 
  イスラエルの国会クネセットは一院制で議員は任期4年、定員は120人である。2009年の選挙ではカディマ(28人)、リクード(27人)、わが家イスラエル(15人)、労働党(13人)、シャス(11人)、その他、という順となった。この結果、第二党のリクードがわが家イスラエル、労働党、シャス(右派の宗教政党)の3党を引き入れ、連立政権を組むことになった。 
 
  しかし、ここで労働党から議員5人が新たな党を作って抜けた場合、労働党抜きの連立政権も可能となる。これにより、今後、イスラエルはさらに右傾化していくのではないか、と見る論者もいる。そこで憶測を呼んでいるのがバラク氏の思惑である。バラク氏の新党結成によって、イラン攻撃の準備が加速するのではないか、といった推測もあるようだ。 
 
  ニューヨーク大学で中東問題や外交を教えているアロン・ベン=メイエ(Alon Ben-Meir)教授はエルサレム・ポスト紙のブログで今回の離党について「バラクは労働党もイスラエルも裏切った」と批判している。 
http://www.jpost.com/Magazine/Opinion/Article.aspx?id=204575 
  ベン=メイエ教授のブログによると、労働党のリーダーだったバラク氏が2009年の総選挙後、右派と連立内閣を組んだことで、中道や左派の人々は労働党が内閣の右傾化を食い止めるのではないか、と一時は期待を寄せた。しかし、その期待は裏切られたという。 
「過去のどの時代よりもイスラエルは孤立している」とベン=メイエ氏は言う。トルコやアメリカのようにイスラエルと同盟関係にある国々ですら最近はイスラエルに対し冷ややかな眼差しを向けていると指摘。さらに政府は平和活動家やアラブ系市民、人権活動家らに対して赤狩りを思わせる監視体制を敷いているという。 
  こうしたバラク氏のリーダーシップが労働党内の対立を深めた。労働党のアイサック・ヘルツォーク議員はバラク氏の離党について「これで労働党の背中からコブが取れたよ」と語ったという。 
 
  ちなみにこのニューヨーク大学のベン=メイエ教授はエルサレム・ポスト紙にブログを書いており、ウエストバンクへの入植活動の継続についても批判していた。ウエストバンクに入植を続けることで、イスラエルはイスラエルとパレスチナという二国家制度の創設に真摯ではないと受け取られかねないと昨年9月24日付のブログで批判。 
  さらに、分離壁とパレスチナ人による警備体制の強化によって、すでにイスラエルにおけるセキュリティが十分に高まった今、入植活動によって「緩衝地帯」をさらに拡大しようと言う発想はむしろマイナスである、とも書いている。 
http://www.jpost.com/Opinion/Columnists/Article.aspx?id=188828 
 
■新党から4閣僚が誕生 
  1月19日付のインターナショナルヘラルドトリビューンには「ネタニヤフ首相、離党したグループに内閣の4つのポストを与える」と題する記事が載った。バラク氏らの5人の新党から4閣僚が誕生することになりそうだ。同紙はこれを’richly rewarded ’「豪華なご褒美を与えた」と表現している。 


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