2011年03月12日01時49分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

アムネスティ、袴田巌さんの死刑の執行を停止し、死刑囚監房から解放するよう求める

【AIニュース】アムネスティ・インターナショナルおよび死刑に反対するアジアネットワーク(ADPAN)は、法務大臣に対し、刑事訴訟法479条に基づき、袴田巌さんの死刑の執行を停止し、死刑囚監房から彼の身柄を移すよう要請する。刑事訴訟法479条は、精神障がいに苦しんでいることが判明した者について、死刑の執行を停止することを規定している。 
 
  3月10日に75歳の誕生日を迎える袴田巌さんは、1968年以降、死刑囚として投獄されている。彼は、1966年に彼が勤務していた工場の専務とその妻、および子ども二人が殺害された事件で罪を問われ、不公正な裁判によって死刑判決を受けた。 
 
  彼の死刑判決が確定してから数カ月後、彼の行動や思考に、深刻な精神障がいの兆候が現れはじめた。拘置所当局は、彼の家族や弁護士にさえ 彼の医療記録を明らかにすることを拒否している。袴田さんは依然として、深刻な精神障がいに苦しんでいる。 
 
  袴田さんは、弁護士の立ち会いがないまま、20日間に渡って警察による取調べを受け、その後に自白した。後に彼は、取調べ中に暴力と脅迫を受けたと証言し、自白を撤回した。袴田さんに死刑判決を下した第一審の裁判官の一人である熊本典道さんは、袴田さんが無実であると確信していたが、合議によって死刑判決となったことを2007年に公表した。 
 
数ヶ月前に袴田さんと面会した人物によると、袴田さんが「戸惑い、混乱して取りとめのない」様子に見えたという。袴田さんは、高血圧の症状に対する服薬を拒否しているとの情報があり、糖尿病も患っている。 
 
彼の弁護団、家族そして支援者たちは、袴田さんの死刑の執行停止と釈放を求めている。また、彼らは再審も請求している。この再審請求は、彼を有罪とする証拠の信頼性に対する懸念に基づくものである。日本においては1975年以降、死刑判決が減刑されたことはない。 
 
  アムネスティはさらに、日本政府に対し、精神障がいの可能性を示す確かな証拠があり、刑訴法479条の対象に含まれる可能性がある全事件について、ただちに独立した調査を行うよう要請する。 
 
  日本では死刑執行は絞首により、通常秘密裏におこなわれる。死刑確定者は、執行されることを当日の朝に知らされ、その家族に対しては執行後に告知されるのみである。 
 
  このことは、死刑確定者がつねに執行の恐怖に怯えながら暮らしていることを意味する。何年、何十年もこうした暮らしを続けるうちに、「うつ」状態となり、精神障がいの症状を示す死刑囚もいる。 
 
  死刑は生きる権利の侵害であり、アムネスティはあらゆる死刑に対して、犯罪の種類や、犯罪者の特徴、国家が処刑に用いる方法に関わらず、例外なく反対する。アムネスティは日本政府に対し、死刑廃止に向けた第一歩として、直ちにすべての死刑囚を減刑し、公式に死刑の執行を停止するよう求める。 
 
  死刑に反対するアジアネットワーク(ADPAN)は、アジア太平洋地域の23カ国から、50以上のNGO、弁護士、ジャーナリスト、人権擁護活動家らによって構成される地域ネットワークである。ADPANは、アジア太平洋地域のすべての国家において死刑の廃止を目指すキャンペーンを行っている。 
 
  千葉景子元法相によって設置された「死刑の在り方についての勉強会」は、現在の江田法相の下でも活動を続けているが、結論を出す時期は明らかにされていない。 


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