2011年03月15日04時21分掲載  無料記事
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米国

米国務次官補さえも「不合理」と評した、マニング米兵の拘束状況とは?

 フィリップ・クローリー米国務次官補(広報担当)が、13日、辞任した。ウィキリークスに機密情報を流したと推測されるブラッドリー・マニング米上等兵が、拘束中の海兵隊施設(バージニア州)で不当に扱われていると発言したためだ。上等兵は一体どんな扱いを受けているのか?(ロンドン=小林恭子) 
 
 マニング兵は自殺防止のため、夜間は衣服を没収され、全裸で眠ることを強要されている。クローリー氏は、先週、米マサチューセッツ工科大学での会合で、マニング兵の取り扱いが「不合理、国防の面から言えば逆効果で馬鹿げている」と語った。 
 
 これに対し、オバマ米大統領は、11日、国防省からマニング兵の取り扱いが適切であると報告を受けた、と述べた。米政府トップから見放された形となったクローリー氏は辞任をせざるを得なくなった。 
 
 クローリー氏が「馬鹿げている」と表現した、マニング兵の拘束状況とはどんなものか?同兵の弁護士が公表した、マニング兵自身の説明を見てみよう。 
 
 以下は、ガーディアンの掲載記事の抜粋である。http://www.guardian.co.uk/world/2011/mar/11/bradley-manning-strip-clothing-prison 
 
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 数ヶ月の拘束が続いていたマニング兵は、パパキー海兵隊保安警護官に、どうやったら厳しい拘束条件(1日のほとんどを独房に閉じ込められているなど)を緩和できるかと聞いたー。「パパキ警護官は、拘束状態を緩和するために私ができることは何もない、私には自傷の危険性がある、と言った」 
 
 「そこで焦燥感を抱き、拘束規制は馬鹿げているし、もし私が本当に自分を傷つけたかったら、下着のゴムバンドかサンダルを使うこともできるよ、と皮肉をこめて言った」 
 
 「その日、後になって、私がパパキーに言ったことのために、夜間は全裸にされると言われた。驚いて、何も言っていないと答えた。現在の拘束がいかに馬鹿げたものかを指摘しただけだ、と」 
 
 「私の精神の健康状態を見る担当者に相談せず、施設のオフィサーであるデニス・バーンズが、私の皮肉の言葉を理由にして私には自殺の危険性があるとし、規制を厳格化することに決めた」 
 
 「私に自殺の危険性があると認定されたわけではない。認定には精神の健康状態をチェックする担当者の査定が必要だからだ」 
 
「精神科医がやってきて私の精神状態を調べ、自傷の危険性は低いという判断が出た」 
 
 「3月2日から、私は夜間、衣服を没収されることになった。この処理は無限に続くそうだ。最初の夜、衣服を没収された後、翌朝まで寒い独房の中で眠るしかなかった」 
 
 「翌朝、ブリッグ(米国の軍隊で罪人を一時的に拘留する場所)の検査担当官がやってくるため、ベッドから起きるように言われた。まだ衣服は戻してもらっていなかった。ベッドから起きると、すぐに独房の寒さが身にしみた。独房の前のほうに、自分の性器部分を手で隠しながら歩きだした。看守は、『休め』の姿勢をとるように言った。これは、両手を後ろに組み、両足を広げる形で立つことを意味した。検査担当官がやってくるまで、約3分間、そのままの姿勢でいた」 
 
 「検査官とそのおつきが私の独房の前を通った。担当官は私の顔を見て、一瞬立ち止まり、その後、次の独房のほうに進んでいった」 
 
 「自分が全裸でいるところを大勢の人に見られ、非常に決まりが悪かった」 
 
 「担当官たちが行ってしまった後で、ベッドまで歩き、座っても良いと言われた」 
 
 「その後衣服を返してもらうまでに10分ほどかかった」 
 
 「私は、自殺を防止するための『スモック』とよばれる衣類を与えられるようになった。夜間にはまた全裸にならなければならないが、昼間はスモックを着られた」 
 
 「最初、スモックを来たくなかった。非常にごわごわして着心地が悪かったからだ」 
 
 「これまでの状況を考えると、夜間、無期限に全裸で寝ることを強要するのは懲罰であることは明らかだった」 
 
 「私は24時間、監視されている。看守は私の独房からほんの2−3メートル離れた場所にいる。昼間は下着と衣類を身に着けられるが、この時間には私が自殺を起こす心配がないとでもいうのだろうか」 
 
 「3月2日以降の、夜間の全裸強要には正当な理由がない。これは、裁判前の違法な処罰に値する」 
 
 「現在、独房に入れられ、外に出るのは1時間のみ。23時間は、独房の中にいる。昼間は看守が5分ごとに、私が大丈夫かどうかを聞く。肯定的な返答をするのが義務となっている」 
 
 「夜間、看守から私の姿が十分に見えなかったり、毛布で私が頭を覆っていたり、壁のほうに丸まって寝ていると、看守が私を起こし、大丈夫かと聞く。食事は独房の中で食べる。枕やシーツを使ってはいけないことになっている。個人的なものを独房の中に一切置いてはいけないことになっている。一度に持ち込めるのは1冊の本か、雑誌だ。本や雑誌は、私が寝る前に、取り去られる。独房の中で運動はしてはいけないことになっている。もしプッシュアップとかしていたら、やめさせられる」 
 
 「毎日、独房の外でできる運動は1時間のみだ」 
 
*** 
 
 マニング兵は、大量の外交公電を不正にダウンロードした疑いで、昨年5月逮捕され、機密情報不正入手などの罪で同年7月に訴追された。今月上旬、新たに「敵支援」などの罪で追加訴追された。現在まで、10ヶ月に渡り、処罰が決まらないままで拘束状態にある。軍法裁判がいつ開かれるかは未定だ。 
 
(ブログ「英国メディア・ウオッチ」より) 


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