2011年03月21日00時18分掲載  無料記事
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東日本大震災

Twitterで差別・排外主義を発信する人たちがいる

  今回の地震報道でとても気になることがある。新聞もテレビも週刊誌も、「日本」「日本人」を連発、その規律のただしさをたたえたり、「日本人、がんばれ!」といったりする言説が目立つことだ。被災者は日本人にとどまらない。中国人研修生、在日の方々、アジアや南米からの移住労働者など多くの外国人も被害を受け、苦しんでいる。そうした状況の中で、Twitterで、避難先において中国人や朝鮮人が毛布や食料などを強奪し、「在日中国人、朝鮮人の為に、治安がものすごく悪化」したという悪質なデマがまことしやかに伝わっているという。崔勝久さん(川崎市)の問題提起を紹介する。(大野和興) 
 
みなさん 
  私は、断固、そのような民族差別を増長するような情報を許してはいけないと思い、次のような「つぶやき」を発しています。 
 
「誰がこんな時にこのような形で、民族差別を増長させるような情報を発信しているのか、確かめることはできないですか。今こそ、これまでとは違う次元での、民族を超えた「協働」を訴えたいものです。」 
 
「今こそ、「嫌韓派」及び民族差別主義者の発言は許しません 
」 
「私に韓国批判、「在日」批判しかできない人から「つぶやき」が入ってきています」 
 
を公表しました。 
 
  今日の朝日新聞の朝刊と夕刊で、被災地における、「嫌韓派」や民族差別主義者が取り上げるのは全く異なる、胸を打つ記事が紹介されていました。 
 
1.宮城県に来ていた中国人研修生20名を高台に誘導した後、日本人の役員は再び宿舎に戻り津波に襲われたとのことです。日本人の自己犠牲に対して、北京の新聞は「愛には国境がない」とコメントし、助けられた本人たちは、「現地の人の助けがなければ今の私はない」と号泣したそうです。 
 
2.仙台に来ている韓国の救助隊105名が、瓦礫の中の捜索を続け、多くの遺体を捜し出しているそうです。朝日新聞は、「韓国隊、悲痛の捜索」と書いています。隊長はインタビューに対して「どうか希望と勇気を失わないでほしい。私たちもわずかで力になれるよう力の限りを尽くますから」と応えています。 
 
  その他Twitterでは朝鮮学校が校舎を開放し、日本人住民にも働きかけているということが明らかにされていますし、また韓国のKINという団体では、政府の「韓国籍、「朝鮮」籍の区別することなく対応するように韓国政府に求めています。 
 
  私は今回の悲惨な出来事を通して、東アジアの国々の間でこれまでにない新たな関係がつくられていくのではないかと、上記の記事を読んで強く感じました。 
 
  このことは国家間における関係にとどまらず、日本に住む外国人と日本社会の関係のあり方にまで影響を及ぼすと、私は思っています。民族・国籍を超えた「協働」は地震による災害にどう対応するのかという意味での「協働」に留まらず、在日外国人と日本社会の「協働」がさらに深化される、新たな次元での「協働」が模索され始めるべきだと思うのですが、いかがでしょうか、みなさんは。 
 
  被害に遭った東北地方は、ある意味、見捨てられた地域です。使用済みの核燃料施設がつくられ、人件費の安さということで半導体、自動車、家電が競うように工場を作ってきました。地震による破壊で、その復興にはある程度時間がかかるでしょう。それはさらに海外への工場移転に拍車がかかることを意味します。廉価な労働力の使用を求める外部産業の導入でなく、東北地方の内発的な産業を構築していく機会でもあります。 
 
  また壊滅的に破壊された地域社会は、これまでの既存の人間関係や、日本の中央政府に依存しない、地域住民が主権者として自らの意見を具体化しながら、新しい地域社会をつくりあげる絶好の機会になるでしょう。そのとき、同じ悲惨な経験をしてきた外国人住民も一緒になって、新たな地域社会建設を担う仲間として、共にその課題を担う者として受け留め合うような関係になってほしいと願ってやみません。 
 
  そのことは、他の地域においても一つの見習うべき例になると確信します。「多文化共生」という既成社会への埋没ではなく、「協働」によって新たな地域社会を共につくっていくのです。そこでは民族差別主義者や「嫌韓・嫌中派」の差別的な発言は地域社会が許さないでしょう。 
(3月18日) 
 
みなさん 
  匿名をいいことに、先ほど送った私のメール通信「今こそ、民族・国籍を超えた「協働」ー共に新たな地域社会建設に向かって」に対して、以下のような民族差別、排外主義そのもののTwitterがありました。 
 
★「じゃかあしい!日本から出ていけクソ朝鮮人!! 」 
 
  それに対して一応、本人に「つぶやき」を送りました。 
「えっ、こんな本質を丸出しにした品性のないひとが未だにいるんですね。andoreさん、多くの外国人が日本を出たがっています。私たちは一緒にこの日本社会をよくしようと言ってるんですよ。なんで感情的な反応をするんですか?」 
 
  先の「嫌韓派」のデマ発言(複数)のことを考え、これは日本社会が乗り越えなければならない問題だと思います。このような差別発言や悪質なデマを放置することは、悲惨な被災者の現況を思うと、生命の危険に関わる問題になる危険性があるので放置すべきではないと判断しました。 
 
  そこで以下の質問をTwitter社に出しました。 
★「Twitter社へお尋ねします。悲惨な状況の中でのこのような差別発言、デマは生命に関わります。貴社はこのような発言を容認するのですか、黙認するのですか、内部で検討し早急に回答を願います。」 
 
  Twitter利用者のご理解とご協力をお願いしたい思います。 
 
(3月19日) 
 
 
  「じゃかあしい!日本から出ていけクソ朝鮮人!! 」     Twitter社に質問、このような差別発言を許すのですか?」というメッセージについて何通かのメールをいただきました。Twitterでもいろんな反応があります。 
 
  まず「ご本人から」の返事がありました! 
★「いちいち取り合わねえよ、バーカ!とっとと日本から出ていけ!」 
 
  いただいたメールの内容は以下のものです。 
★大阪のSYさんから、 
「よう、そのTwitter社に質問してくれました。一人ひとりこの時にできることをしていきたいものです。」 
 
★アメリカから 
  「はじめまして、いつもブログおよびメールマガジンを拝読しております。東京出身・横浜・川崎・大和・茨城育ちのHと申します。2009年のカルチュラルタイフーンで、お話を聞いたこともあります。今回のいろいろで、日頃の不安が排除という形に成って出て来ています。 
  排除している対象も、排除している自分たちをも蝕んでいるということに気づくために、橋渡しや橋崩しが必要なのかと思いました。私は今カリフォルニアに住んでいて、茨城や川崎の仲間のことを思って心を痛めています。でも、つらいニュースばかりでなく、いろいろな運動を生み出して、継続して行く機会、積極的に読み違えをしながらも、読み取る方法、自分たちで語りだす力を得る機会にしたいと思っています。 
  こちらにも在日の友達や、元アメリカ軍の一員として苦しんでいる人、同じく被災した中国に家族を持つのに、国籍や家族は無事かというだけのくだらない国家的な枠組みに抑圧をされている友達がいます。 
  私もそうならないように注意したいので、こんなブログを作りました。今不謹慎かもしれませんが、これからどうであれ、今、自分を排除するのに加担したくないという思いです。 
  いつも大切な働きをしてくださってありがとうございます。どうか疲れすぎないように、心と身体にお気をつけ下さい。私はこういう時に賛美歌の23番を歌ってたりします。ツィッターへは今日家に帰ったら抗議文を送ります。」 
 
★東京のSさんから 
  「上野千鶴子さんがおっしゃった崔さんの「発信力」には、心から敬服しています。「感性の根元から腐っている」とは、こうした輩への言いでしょう。しかしそんな連中の大半は、日頃相手にしてくれる者もおらず、なにがしかの反応を得たいがために叫び続けている、孤独で哀れな人たちかもしれません。私は当面、「不適切な言動には注目を与えない」との、アドラーの教えに従うつもりでおります。」 
(3月19日) 
 
みなさん 
  今日の「反応」をお知らせして、私から、全世界に向けての「呼びかけ」をさせていただきます。 
 
  結論から。私は、排外主義的な言質、デマをまき散らす人を今回は社会的に許してはいけないと考えます。それは地震と津波による悲惨な状況から立ち上がるには、今までとは違う、あるべき社会を目指したものにしたいからです。それは決して簡単なことではないでしょう。既得権を願う者は、これまでの価値観をそのまま持って壊された地域社会建設に関わりたがるでしょう。中央政府とのパイプや、政治家のコネで今まで通りのやり方で、元の「おらが先生」を前に立てた従来の政治手法、政治の仕組に固執すると考えられます。 
 
  しかし原発事故でわかったことは多くあります。「想定外」の自然災害でこのような「人災」を起こすことはもう、世界が認めず、なによりも被害にあった地域住民が許さないはずです。地域住民とは誰か、それはその地域に住む、外国人を含んだ全ての人のことです。 
 
  今回、被災地で中国の研修生を助け自ら命を落とした日本人がいました。韓国の救助隊は圧倒的多くの住民の尊敬と支持を受けました。全世界の人が日本の救済のために手を指しのばしています。こんな例が今までありましたか。敗戦時のアメリカの援助とは全く質が異なります。これから住民は、「生き延びる」ために、「住民主権に基づく地方自治」を具体化し、内発的な産業を含め新たな地域社会を作っていかなければならないのです。 
 
  それなのに、デマを拡げ、中国人や朝鮮人の強盗によって「治安が悪化した」、国籍や民族を超えて「協働」しようと呼びかければ、「じゃかあしい、日本から出て行け」という暴言を吐くのです。これを黙認することは、新しい地域社会を建設するのに致命的な障害になるでしょう。 
 
  とまず私の意見を述べた上で、今日送られてきた反応をお知らせします。 
 
  まず、「御本人」から。 
★Twitterに見解を求めるとしたことに対して:「いちいち取り合わねえよ、バーカ!とっとと日本から出ていけ!」 
★この悲惨な情況を前にして「協働」しようという私の提案に対して:「嫌だね。」 
★「ワシのところにも「よう言った!」「朝鮮人を日本から叩き出せ!」という激励のメールが来ました!」 
 
  他の「つぶやき」を紹介します。 
★「日本人として恥ずかしいです」 
★金明秀教授は、「ふむ・・・。」とため息 
★「Twitter社の答えが聞きたいですね。」 
★アメリカからは、「もしツイッタ−社にあてて、まとめた手紙を書くということであれば、そのお手伝いもさせてください。」 
 
  Twitterをしている人にお願いです。 
  日本、韓国、アメリカ、中国のみならず、各国でTwitter社に次の2点についての見解を求めてくれませんか。 
1.悲惨な状況の中で、中国人・朝鮮人が「強盗」を行い「治安が悪化した」というようなデマを貴社は容認するのですか、黙認するのですか、内部で検討し早急に回答を願います。 
2.「じゃかあしい!日本から出ていけクソ朝鮮人!! 」Twitter社はこのような差別発言を許すのですか、見解を求めます。 
 
  Twitter社は個人の情報を守るという建前で差別的な「つぶやき」を抹消しないかもしれません。しかしそれでは、日本においてTwitterを通してこのような差別・排外主義的発言が流布していることに対してどのように思うのか、それへの責任は感じないのか、Twitter社の見解を引き出していただきたいと願います。 
 
  そのことによって差別的・排外主義的な「つぶやき」は許さないという、社会的なコンセンサスを作ろうではありませんか。このコンセンサスは、新しい地域社会を構築していくに際しての最も基本的な理念になりと確信します。 
(3月19日) 
 
崔 勝久(Choi Seungkoo) 


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