2011年03月23日14時52分掲載  無料記事
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東日本大震災

このままでは牛を殺さなければならなくなる  福島、苦悶する畜産農家

  農業記者として心配していたことが起きた。福島第一原発に近い福島県田村市で卵の注文が途絶え、養鶏場を閉鎖、ニワトリは放置されるという事態が起こった。農業県福島は畜産も盛んで、特に今回被害を受けた浜通り、中通りは県の畜産の中心地でもある。水道水が放射能に汚染され、栃木への集団避難が行われた飯館村は有数の酪農地帯でもあり、肉用牛も多い。「このままでは牛を殺さなければならなくなる」と福島県の畜産農家は苦しんでいる。(大野和興) 
 
  全県で原乳の出荷が停止された福島県には1万7600頭の乳用牛がいる。全国で13位だ。ちなみに肉用牛は7万8200頭と全国10位。豚は20万400頭、ブロイラー110万9000羽、採卵鶏569万8000羽。 
 
  原発に近い飯館村は、酪農が盛んな地域だった。この30年続く乳価の低迷で次第に減少しているとはいえ、それでも2005年で930頭の乳用牛がいた。肉用牛は3150頭いる。この飯館村で水道水から規制値の3倍を超える放射性ヨウ素が見つかり、村民は栃木県内に集団避難という事態になった。牛が心配で村を離れられない人も多いが、背に腹は代えられず牛をそのまま置いて村を離れた人もいる。 
 
  飯館村では、文部科学省の計測でヨウ素が117万ベクレル、セシウム16万3000ベクレルという高濃度の土壌汚染も報告されている。この土で育てた牧草を食べた牛の健康はどうなるのか、その牛から出る生乳はどうなのか。たとえここに戻ってこれても、もう牛は飼えないかもしれないという思いが畜産農家をよぎる。 
 
  ちなみに野菜などで放射能汚染が出ていて、一部野菜が出荷停止になっている茨城県は北海道に次ぐ畜産県でもある。乳用牛4万9000頭、肉用牛5万1100頭、豚77万8000頭、採卵鶏771万3000は、ブロイラー274万6000羽。 


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