2011年04月01日11時54分掲載  無料記事
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東日本大震災

旅行者激減、日本からの食品輸入を停止 福島原発事故の影響、東南アジアにもじわり

  東日本大震災の発生から4月1日で3週間。福島第一原発の放射能漏れ事故は東南アジア地域にもさまざまな波紋を及ぼしている。マレーシアでは放射能汚染への恐怖から日本への旅行のキャンセルの申し出が殺到、シンガポールをはじめ各国は日本からの輸入食品の停止措置や検査強化措置をとっている。(クアラルンプール=和田等) 
 
 マレーシアでは日本行き旅行をメインに扱う地元大手旅行会社が7月に予定していたチャーター便(乗客360人乗り)利用による北海道ラベンダー見学ツアー全3便分を中止した。北海道ツアーは同社にとって人気商品だっただけに、その打撃は深刻だ。 
 
 また日本からの旅行者減も避けられず、マレーシアでは「ずっと30万人台だった日本人訪問者数は2010年に40万人を超えたが、今年は30%程度減少する見込み」(ン・イェンイェン観光相)。ただし、マレーシアの訪問者数に占める日本人の比率は1.7%(2010年)、観光収入では2.7%(同)を占めるにしかすぎないので、マレーシアの観光業に与える打撃は軽微にとどまる見込みだ。ン観光相は、東日本大震災の影響によるマレーシアの観光収入減少額を340万リンギ(約9200万円)と見積もっている。 
 
 一方、インドネシアのバリ島では、日本人訪問者数減により同島訪問者数の日本人の順位はオーストラリア人に次ぐ2位の座を中国人に明け渡し、3位に転落するのが確実となった。バリ島を訪れる日本人旅行者の数は2008年のリーマン・ショックに端を発する世界経済危機以降、すでに減少傾向にあったが、大震災が追い打ちをかけた形になった。これを受け、ガルーダ・インドネシア航空は同島デンパサールから日本間の便の減便を計画している。 
 
▼寿司ネタや輸入中古タイヤにも影響 
 
 福島原発の放射能漏れによる野菜や果物、海産物への汚染が明らかになったことから、各国は日本からの輸入食品の停止措置や検査強化措置をとっているが、なかでもシンガポールは、福島、群馬、茨城、栃木4県からの野菜や果物の輸入禁止措置を、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県からの生鮮食品にも拡大、関東地方全県からの食品輸入を禁止するにいたった。 
 
 日本からの食品や素材の輸入禁止や検査強化に加えて風評被害が海外の日本食店にのしかかる。たとえば、マレーシアで寿司店「すし金」60店を営業するテックスケム・リソーシズはこのほど、素材の23%を日本から輸入してきたが、日本からの輸入を停止し調達先を別の国に切り替えると発表した。しかし、消費者の放射能汚染に対する不安感を払拭するのは容易ではなく、日本食店はしばらくは苦戦を余儀なくされそうだ。 
 
 さらに日本からの輸入中古タイヤの卸売を手掛けているマレーシア人は、「もともと品薄感があったのに、放射能汚染検査のため品物が簡単に入荷できなくなったので、商売あがったりだね」とこぼす。「日本のメーカーのブランドがあればこそ、買い手が信用して買ってくれていたので、代替供給先を見出すことはむずかしい」とこのマレーシア人が述べるように、供給先の切り替えが困難なものもある。まさにこのマレーシア人にとっては「恨めしや、原発」というところだろう。 


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