2011年04月21日10時23分掲載  無料記事
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ロシアン・カクテル

(29)原子力の「花」無残 チェルノブイリの時間は25年間停止のまま タチヤーナ・スニトコ

  来る4 月26日でチェルノブイリの原発事故の悲劇から25年となります。 
 
 原子力の技術ができた時には明るい将来の希望がありました。核実験が行われても畏怖の念を起させられることはありませんでした。1949年8月29日にはザフスタンのセミパラチンスク核実験場において旧ソヴィエト連邦での最初の核実験が行われました。セミパラチンスク市の住民たちは核実験を見学するために良く見えるようにと家の屋根に上りました。あるカザフ人は自分の娘に「アトムグーリ」(原子力の花)と名づけました。 
 
 セミパラチンスク核実験場では40年間で地上・地下・空中合わせて616回にのぼる核実験が行われました。爆心地では土がガラスに変わりました。何千平方キロメートルもの土地が放射能により広範囲にわたり汚染されました。セミパラチンスク核実験場はその後わずか50年で1991年8月29日に閉鎖されました。 
 
 1986年4月26日にはウクライナで一番美しいポレーシイェ地方にあるチェルノブイリという小さい町の原子力発電所で爆発事故がありました。ところで、このチェルノブイリは遡ること1000年の歴史を持つ古い町です。チェルノブイリの近郊には古墳や考古学上の遺跡の発掘場があります。現在はここは「立ち入り禁止地区」となっています。半径30キロメートルの区域は鉄条網で囲われています。中に入るには特別な許可証を得なければなりません。 
 
 チェルノブイリ原子力発電所の近郊は奇異な野生生物保護区に変わってしまいました。原発事故の後,いなくなった燕は又戻ってきて又巣を作っています。そこには,ウサギ・イノシシ・キツネ・オオカミ・鹿など沢山います。一番多いのはプルジェヴァーリスキー馬です。森の中にはベリー類やきのこ類が沢山生えています。湖・川・池には魚が溢れています。しかし、すべての生き物は危険な放射能で汚染されています。 
 過去25年以上にわたって土壌が放射性で汚染され蓄積されてきました。その土壌から放射能が苔・きのこ・草・灌木・木の根に入り込み吸収され,その後動物の体内に入りました。研究者によれば,禁止区域内のイノシシには 通常の100倍にあたる体重1キログラム当たり30,000 ベクレルの放射能を帯びており,きのこには1キログラム当たり120,000 ベクレルの放射能が含まれています。 
 
 放射能には色・香り・味がないので、沢山の人々が苦しみました。現在も原発の石棺近くの放射線量は時間当り220マイクロレントゲン,石棺の中の放射線量は3000レントゲンです。 
 
 半径30キロメートル以内の“立ち入り禁止区域”内には今でも250人が住んでいます。その人々は放射能があるとは信じていません。プリピャチ川で魚釣りをし,畑作もしています。更に、10キロ圏内には一組の夫婦が住んでいます。 
 
 チェルノブイリの衛星都市であるプリピャチは原発石棺から3キロメートル離れています。大通りは狭い道に変わり、全てが森に変わってしまっています。建物の屋根やバルコニーには樺の木が茂り,全ては放射能で汚染されています。ある場所では時間当りの放射線量は3500マイクロレントゲンです。一番放射能で汚染されているところは鉄条網で囲まれています。 
 建物を爆破することはできません。何故ならば,そうすればもっと自然環境へ汚染を拡げることになるからです。建物をブルドーザー壊してしまえばいいと考える人がいるかもしれませんが,そうすれば瓦礫の保管場所を作らなければなりません。しかし,市全体を保管場所にするなど想像もできません。 
 
 今日では,約3,500人の人たちが毎日その「立ち入り禁止区域」に入っています。しかし、元通りに復元するには少なくともまだ50年かかると言われています。 
 
 過去何年も、チェルノブイリは観光客の訪れる場所となってきました。最近は毎年8,000人の人がチェルノブイリを訪れています。 
 
 既に25年が経過していますが,依然として人々はセシウム137で汚染された食べ物を食べて放射能を体内に取り入れています。牛乳や肉にはより多くのセシウム137が含まれています。摂取量は都市部の住民より田舎に住む人たちのほうがより多く摂取しています。 
 
 チェルノブイリでは時間は停止しています。ここでは時計は実際の時間を示していません。ここでは時計は放射能のレベルを示している。 
 
 最初に発見された放射性物質はラテン語で「発光する」を意味する「ラジウム」と呼ばれました。しかし、明るい希望をもたらしはしませんでした。 
 
 ロシアの「ロスアトム社」(Russian Atom)は来年カムチャッカで海上に浮かぶ原子力発電所を建設する計画です。 
 
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 シベリアのトムスク市の近くではある実験が行われています。放射性廃棄物は地下280〜460メートルの深さの穴に水のある地下の池に入れるのです。そこに何千万立方メートルの放射性廃棄物を投入しました。その放射線量は何億キュリー(Ku)にもなっています。 
 
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 世界中(日本・台湾・中国・韓国・インド・パキスタン・米国)で76(既存の原発の10%に相当)の原子力発電所が沿岸に設置されています。それらは津波の災害の可能性があります。 


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