2011年04月30日00時47分掲載  無料記事
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検証・メディア

【編集長妄言】大前研一さん、ありがとう! ゴリゴリの原発推進派から批判派に寝返っていただいて  大野和興

  高名な評論家で経営コンサルタント業の大前研一氏がネット上の一部の原発批判派の間でちょっとした有名人になっている。3・11以降の福島第一原発の暴走を受け、原発批判を始めたからだ。彼はついこの間まで原発推進派の最先端にいて、アジっていた人だ。その彼が、福島第一原発が爆発した直後の3月15日、大前氏は「日経BPネット」というインターネットサイトで「日本の原子力開発は事実上、終わった」と書いた。君子は豹変する、実に見事な君子ぶりである。 
 
 「日経BPネット」の発言のさわりは次のようなものだ。 
 
「今後、首尾よく原子炉内の熱を冷却して、その手際をいくら東電が喧伝(けんでん)したとしても、あの衝撃的な爆発映像を多くの国民が見てしまった以上、世論は新たな原発建設など許すまい。日本の原子力開発は事実上、終わったのである」 
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110315/263842/ 
 
  大前さんはその後、ユーストリームやユーチューブといった動画サイトにたびたび登場、爆発事故分析をして、とてもわかりやすいと評判を呼んだ。たちまち氏は原発批判のオピニオンリーダーの位置に祭り上げられた。 
http://www.youtube.com/watch?v=U8VHmiM8-AQ 
 
  では、以前大前さんは原発についてどういう発言をしていたか。一つだけ例をあげる。PHP研究所が発行する月刊誌『Voice』の記事を紹介する「VOICE+」というサイトの2009年5月に掲載された「原子力発電は大輸出産業になる」という記事からの抜粋である。 
 
「クリーンエネルギーに対して、圧倒的に優れているのが原子力発電である」 
 
「必ず出てくる反論は、『原子力発電は安全ではない』というものだ。しかし、かつてとは比較にならないほど、原子力発電の安全性は高まっている」 
 
「日本の原子炉の安全性は特筆されるべきだろう。07年の新潟県中越沖地震は柏崎刈羽にある1千メガワットクラスの原子炉7基を直撃したが、緊急停止の制御棒が挿入され、原子炉は無事停止した」 
 
「いまこそ原子炉建設を強力に進めるため、国はその障害を1つずつ取り除いていくべきだろう。安全審査があまりに厳しく、膨大なコストと時間がかかってしまう」 
 
「いまこそ日本は原子力を『国技』とし、そこに人材を投入すべきだ。オバマ政権のグリーンニューディールで原子力を重視するよう訴え、そのための技術を日本に請うよう働き掛けるべきである」 
 
「経済面からみても、石油が1バレル=60ドルを超えれば、原子力にはかなりの経済合理性がある」 
 
  大前さんの原発賛美語録はこのほかいくらでもあるが、きりがないのでやめておく。 
 
  「そういう人が原発批判すると、説得力があっていいよ。いつの同じ顔触れで批判していても、みんなそうかと思うだけだから。大前さんという人にはお礼を言ったほうがいいよ」と、友人がいった。それもそうだと、お礼を述べた次第。 
 
以下は大前研一さんの過去語録のほんの一部ーー 
 
柏崎原発、褒めるべき点・反省すべき点 
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/a/91/index.html 
 
原子力発電は大輸出産業になる 
http://voiceplus-php.jp/archive/detail.jsp?id=146&nif=false&pageStart=40 
 
原子炉の稼働率が低いのはマスコミが原発に神経質過ぎるため 
http://www.news-postseven.com/archives/20101212_7704.html 


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