2011年06月13日18時00分掲載  無料記事
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核・原子力

来年5月には原子力発電ゼロも 「6.11」脱原発デモの成果か 安原和雄

  「6.11」脱原発デモ(100万人アクション)は日本列島各地に限らず、世界各国にも広がった。デモ参加者から多数のメールが届いており、その一つに<イタリアの記者に「警官に列を作られてするデモでは日本は何も変わらないよ」といわれ、「市民から変えていく。日本は変えられると信じている」と答えてきた>とある。デモに初参加の人の意気込みである。 
デモの成果は果たして期待できるのだろうか。デモは従来、参加者たちの自己満足に終わることが多かった。しかし今回は事情が異なっている。目標の「脱原発」が早ければ来年5月にも実現し、原子力発電がゼロになる可能性も出てきたのだ。これが実現すれば、脱原発デモの偉大な成果として、歴史に記録されることになるだろう。 
 
▽ 東京・新宿の脱原発デモを見て、聞いて 
 
 デモの取材を兼ねて6月11日夕5時頃JR新宿駅東口前広場へ辿り着いた。環境政党・「緑の党」を目指す市民組織「みどりの未来」の幟(のぼり)や社民党の宣伝カーなどの周辺に人の輪がつくられている。約1時間そこで見たり聞いたりしたことを報告したい。 
 
 「原発のない未来へ」、「脱原発で行こう!!  いのちが大事 くらしが大切」、「国会に緑の党を! みどりの未来」と書いた幟が風に揺れている。デモや集会におなじみの光景である。 
 ところが肩や腕に入れ墨をして、それを誇示するかのように露(あら)わにしている美女一人が人の輪の中をあちこちと闊歩しているのには驚いた。場違いと言いたいのではない。「こういう入れ墨なら悪くない」と感心したような次第で、時代の変化というべきか。 
 演説の仕方も穏やかになった。「だからね・・・」という調子で、絶叫型ではなく、語りかけるという風情である。 
 
 多数の警視庁警官が交通整理に当たっており、車上から「交通の妨げになるので、直ちに流れ解散して下さい。それが本日の集会の条件です」という趣旨を繰り返し叫んでいる。集会者の側でこれを聞いて解散する者は誰一人いない。 
 取り巻いている多数の警官をみていて、あることに気づいた。通常なら腰に付けているはずの警棒がみえない。すぐ脇にいた警官に聞いた。「警棒はわざわざ外してきたのか」と。「そうです」という答えが返ってきた。デモと対立状態になることを避けたいという配慮なのか。 
 
 こういう光景もあった。石垣の上に立っている男性に警官が「そこから降りなさい」と注意したところ、その男性は言葉を返した。「お巡りさん、そんな堅いことを言わないの。仲良くしましょうよ!」とおどけてみせて、周囲の笑いを誘っていた。 
 私の脇に立っていた中年の女性に聞いてみた。 
 「どこかの団体か組織に所属しているの?」「いいえ」 
 「この種の集会には初めての参加ですか」「そうです。原発に疑問を感じたので・・・」 
デモには初参加という人々が圧倒的多数派のようである。 
 
 <安原のコメント> 半世紀を経て大きな変化も 
 私は駆け出しの新聞社社会部記者だった半世紀前の1960年5〜6月、国会周辺で当時の反安保闘争を取材した経験がある。労働組合員、学生たち中心のデモ隊が警察機動隊に取り囲まれながら「アンポ、ハンタ〜イ」とマイクで絶叫していた当時と比べれば、デモの風景も参加者のスタイルも随分変化したという印象である。半世紀も経過すれば、変化していくのは当然だろう。 
 もう一つの変化を挙げれば、ドイツやフランスなど海外からの支援が寄せられていることである。 
 5月来日したドイツ緑の党・連邦議会議員、シルビア・コッティング・ウールさんは「私たち緑の党は日本での反原発運動を支援している。世界の人々が協力して原子力に頼らない持続可能な緑の社会を築こう」という連帯メッセージを寄せた。来日中のフランス緑の党・欧州議会議員、ミシェル・リヴァジさんは、新宿駅東口前広場の集会に駆けつけた。メルボルン(オーストラリア)、香港、台北など世界各地でも11日、脱原発の集会やデモがあった。 
 
 東京新聞の【コラム】筆洗(2011年6月12日付)を以下に紹介する。私(安原)が抱いたのと同じような印象をつづっている。 
 
 よくいえば自由奔放。悪くいえば無秩序。数千人の参加者が東京・新宿の繁華街を練り歩いた反原発デモは、数百人もの警察官が物々しく取り囲む中、アンプとスピーカーを積んだサウンドカーが大音量で演奏して先導するお祭りのような騒ぎだった。 
 東京や名古屋をはじめ、全国各地で、反原発を訴えるデモがあった。労組が前面に出る従来型だけでなく、ネットを通じて自然に集まった若者たちが、思い思いに声を上げるスタイルに新しい時代の風を感じた。 
 事故を防げなかった電力会社と政府に対する怒りと不信、生活を奪われ苦しむ人たちへの深い同情、二度と事故を起こさないという決意。参加者の胸にはさまざまな思いが去来していただろう。「なぜ日本ではデモも起きないのだろう」。海外からは不思議がられたが、デモに参加する人はもっと増えるだろう。多少の不便はあっても原発に頼らずに暮らしたいという考えは、世代を超えて根を下ろし始めているからだ。 
 
▽ 来年5月には原発運転ゼロになる可能性も 
 
 以下に紹介するのは、「福島原発事故緊急会議」(今回の「6.11」脱原発デモを呼びかけた組織の一つ)による全国原発の運転状況に関する記事で、「点検中の原発再開メド立たず〜来年5月には原発ゼロの可能性も」という見通しを指摘している。 
 
 東京電力の福島第一原子力発電所事故の影響で、各電力会社が定期検査のため停止している原発の運転再開にめどが立っていない。3月から検査の最終段階である「調整運転」に入っている北海道電力の泊原発3号機と関西電力の大飯原発1号機の2基も、営業運転に入れないまま3カ月を迎える。現状が続くと、来年の今の時期には、全ての原発が自動的に止まることとなる。 
 
*現在営業運転している原発はわずか17基 
 現在、停止している原子力発電所は、東日本大震災の影響で停止している福島第一、第二原発や女川原発のほか、故障などで停止している計26基。このほか島根原発1号や美浜原発1号など11基が定期点検中のため、営業運転しているのは残りのわずか17基となっている。 
 
 原発は電気事業法で、ほぼ13カ月おきに、原発を停止して検査を行うことが決まっているが、通常の場合、定期検査で停止した原発は地元の了解なしに運転再開。1カ月程度の調整運転を経て、原子力安全・保安院の最終試験を実施し、営業運転に入る段取りになっている。 
 
 しかし今回は福島第1原発の事故を受け、地元への理解が必要になっているため、一方的に再開に踏み切れない状況にある。しかも、政府が浜岡原発に対して停止要請を出したのを受け、原発のある自治体が、地元の原発と浜岡原発の安全性の違いがどこにあるのか、その基準の明示を政府に求めており、電力会社側もその状況を注視しているといった事情もある。 
 
* 自然な「脱原発」達成の声も 
 国は6月7日、福島の事故に関する報告書を提示したものの、老朽化した原発の対策が不透明な点や、浜岡原発以外の原発を安全と判断した根拠も示されていないなどとして、自治体側は判断を見合わせている。 
 
 海江田万里経済産業相は、電力不足の恐れがある7月には定期点検中の原発を稼働させたいとしているものの、地元の理解が得られなければ、原発の再開は遅れる見通し。このまま、現在の状態が継続すると、9月頃には、営業運転している原発は10基に減り、来年の今頃にはゼロとなり、自然な「脱原発」が達成されるとの声もある。 
 
<安原のコメント> 地元の了解なしには原発運転は困難に 
 ドイツやフランスなど海外の支援も得て日本全国規模で行われた「6.11」脱原発デモの成果は果たしてどこまで期待できるのか。この一点こそ今後の注目点である。従来のデモは、やりっ放しで、デモの狙う目標が達成されることは少ない。ところが今回は「脱原発」が意外に早く達成される可能性も出てきた。 
 
その理由は以下の事情による。わが国の総原発数54基のうち現在停止中は26基(福島第一原発1号〜6号、同第二原発1号〜4号、浜岡原発1号〜3号など)、定期点検中は11基、営業運転中は17基となっている。現在運転中の原発17基は定期点検のためほぼ1年以内に停止せざるを得ない。一方、現在定期点検中の11基は運転再開に当たって、従来の自動的再開は困難で、地元の了解が不可欠となる。 
 ところが脱原発デモに象徴されるように列島上に脱原発の声が広がりつつある現状では、再開の了解を得るのは難しいだろう。要するに鍵となるのは地元住民や自治体の了解が困難ではないかというこれまでにない新事態である。いずれにしても地元住民や自治体は目先の算盤勘定ではなく、子々孫々に至るいのちにかかわる判断が問われることになる。 
 
 かりに原発全面停止になれば、電力が足りなくなるという意図的心配性の声も聞こえてくるが、それに対しては電力節約型のシンプルな生活への切り替えと、水力・火力発電等によって「原発全廃の穴埋めは十分可能」という健全な楽観説も有力であることを指摘しておきたい。 
 
*本稿は「安原和雄の仏教経済塾」からの転載です。 
http://kyasuhara.blog14.fc2.com/ 


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