2011年07月03日00時20分掲載  無料記事
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核・原子力

九電玄海原発1号機で想定以上に劣化が進行している  原子炉圧力容器破損の恐れも

  菅政権が福島第一原発事故後の運転再開第1号として進めている九州電力玄海原子力発電所。1号機は現在運転中だが、劣化は想定以上に進行、最悪の場合、原子炉圧力容器が壊れてしまう恐れさえあることが、多くの研究者から指摘されてる。佐賀新聞電子版(7月1日)が伝えた。(日刊ベリタ編集部) 
 
  1号機は運転開始から36年が経ち、原子炉圧力容器の劣化を判断する指標となる「脆性(ぜいせい)遷移温度」が大幅に上昇している。九電や国は「安全性 に問題ない」としているが、多くの研究者がこれを問題視し、最悪のケースとして容器破損の可能性も指摘している。研究者は検証のためのデータ開示を求めるが、九電は応じていない。 
 
  原子炉圧力容器は鋼鉄製で、中性子を浴びるともろくなる。電力各社は老朽化を把握するため容器内に同じ材質の試験片を置いて取り出し、温度を測っている。劣化が進むほど温度は高くなる。九電によると、運転開始時の1975年の脆性遷移温度は零下16度。これまで4回取り出した試験片の温度は、35度(76年)、37度(80年)、56度(93年)と推移し、2009年は98度に大幅上昇した。しかし、再開に向けて政府と九電が行なった6月26日の県民説明会でこの問題を質問された経産省原子力安全・保安院は「容器が壊れるような状況にはない」と答えた 
 
  こうした見解に疑問を示す研究者は多い。佐賀新聞電子版によると、「九州大応用力学研究所の渡邉英雄准教授(照射材料工学)は「上昇値は本来の予測値から大きくずれ、誤差の範囲を超えている。原子レベルで想定外の異常が生じている可能性がある」と指摘。井野博満東大名誉教授(金属材料学)は中性子の影響を受けやすい不純物が含まれるなど材質が均一でない可能性を指摘したうえで、「緊急冷却で急激に温度を下げた場合、圧力容器が壊れる可能性がある」とする。 
 
  研究者は検査データなどが開示されていないため詳しい検証ができないとし、電力各社に情報開示を求めているが、九電は「今後も安全な数値で推移すると判断しているので、すぐにデータを提示する必要はない」と、ここでもデータ隠しとみられても仕方ない対応をしている。 


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