2011年07月25日07時36分掲載  無料記事
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欧州

ノルウェー・オスロ殺りくテロは、キリスト教原理主義青年の「反イスラム」=「十字軍遠征」思想が背後に

 ノルウェーの首都オスロ中心部での爆破と近郊の島で銃と爆弾を使って92人を殺りくし、世界を震撼させた事件では、32歳のノルウェー人青年が容疑者として逮捕された。青年(アンネシュ・ブレイビック容疑者)の単独犯行であることを、24日、警察側も認めた。(パリ=飛田正夫) 
 
 青年はキリスト教原理主義に傾斜し、イスラム教に敵対的であったという。警察側は、青年は犯行の動機を語ってないとしながらも、青年がユーチューブに発表してきた録画には「イスラムは基本的な大量虐殺の思想である」と書かれていることや、「われわれは(イスラム世界への)十字軍遠征を開始する前に、われわれの課題である文化的マルクス主義者を大量殺りくしなければならない」と書いてあると指摘している。 
 
 ロマンデイ紙によると、青年は寡黙で、調査はこれまで書かれたメールやユーチューブなどをもとに青年の思想的な準拠点を探り出しているという。 
 
 殺害の舞台となったウトヤ島での夏季のセミナーはストルテンベルグ首相が率いる労働党の約600人の青年たちが参加していた。この夏季集会は長年続けられてきたもので評判がよかったという。 
 
 青年は移民が増える欧州社会を嫌悪していたらしい。移民の多いフランスを筆頭に国のリストを作成していた。フランスでは、青年の使用した「十字軍遠征」という言葉を内務大臣が使用したことがあり、問題視された。フランス政府は右派に接近しており、昨年7月末には、サルコジ大統領が移民やロマ人に対する排斥政策の強化をグルノーブルで宣言した。欧州議会は、人種差別的なフランスのこの姿勢を批判した。 
 
 22日、ノルウェーで大量殺りく事件が発生すると、すぐに、サルコジ大統領は談話を出し「テロを絶対に許せない」と発表した。これを評価するメディア報道もあったが、よく考えてみると、今回のテロ事件は、イスラム教徒によるテロではなかった。つまり「十字軍遠征」を唱える側のキリスト教原理主義者が起こしたテロであった。逮捕された青年は、この点を、身をもって我々に示唆したのである。これは重要な点であると思う。 
 
 犠牲者の数は現在92人だが最終的には行方不明者が数人いることからさらに増えそうだ。 
 
 青年は、逮捕後に、弁護士ジェイル・リペスタード氏を通して、「自分の行為は悲惨なものである」と発言している。ブレイビック容疑者は、「しかし、これは必要であった」と宣言しているという。25日に出廷する予定。 
 
 犯行準備は単独で、2009年秋ごろから周到に開始されていたという。「自分の行為は第二次世界大戦のナチス以来の、前代未聞の悪魔の行為であることを認める」と事件に至るまでの経過が書かれた1500ページにわたる文書が、犯行の一時間前にネットに掲載されていた。 
 
 ブレイビック容疑者が書いたサイト・文書などを手がかりにしたところでは、フランスを筆頭に欧州でイスラム教徒の多い順にリストを作っていたことなどから、反多元主義文化、反イスラム主義、反マルクス主義の思想的な背景が指摘されている。現在ノルウェーの外国人移民労働は10パーセントほどだ。失業者は欧州では最も低く3%ほどで欧州では優等生だが、右派や国粋主義の国民が、移民を嫌悪する傾向が強まっていた。(ブラネット「パリ通信」より) 


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