2011年08月06日08時58分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】原子力損害賠償法に上限おかしい!法案可決に抗議する  山崎久隆 

◆ 地震と原発事故情報 その138 ◆ 
  4つの情報をお知らせします(8月5日) 
 
★1.8/22第2回「お母さんお父さんのための保育付き講座」のご案内 
★2.政治無策「満身の怒り」-「原発」で衆院委出席の児玉教授 「汚染、広島原爆29.6個分」-震災4ヵ月測定不徹底を問題視 
★3.保安院、やらせ依頼 07年、中部電の原発シンポ 
  住民動員と肯定発言 
★4.原子力損害賠償法に上限おかしい!法案可決に抗議する 
山崎久隆 
 
 
★1.8/22第2回「お母さんお父さんのための保育付き講座」のご案内 
 
  放射能で汚染された、空気、海、大地、水、そして食品…。小さなお子さんのいるご家庭では、不安がたくさんあると思います。 
政府やマスコミの言う「安心・安全」を、そのまま信用してもいいのでしょうか? 
  放射能の危険性や対応について、もっと身近に相談できる人がいたらいいのに…。という声にお答えして、たんぽぽ舎では、「お母さんお父さんのための保育付き講座」を開催します。保育スペースも用意いたしますので、小さなお子さんをお連れのお母さん、お父さん、ぜひお子さんと一緒にご参加下さい。もちろん、おじいちゃん、おばあちゃん、 おじさん、おばさん、お兄さん、お姉さん、 まだ出産経験のない方も、子どもの問題に関心のある方は、 
どなたでもお気軽にお越し下さい、 
 
・日 時:8月22日(月)13:30開場、14:00開会、16:30まで 
・講 師:小倉志郎(元原発技術者)、鈴木千津子(たんぽぽ舎) 
・資料代:800円 
・会 場:スペースたんぽぽ 
 
〇講演「わたしたちは原発と共存できない」講師:小倉志郎 
 福島原発事故以後、原発に関心を持つ人は増えていますが、原発がどういうものかイメージできない人も多いようです。火力発電所と原子力発電所はどこがどう違うのか?福島原発の事故はどういう 
ものだったのか?放射能汚染と内部被ばくはどういうものなのか? 
 そして、これからどうしたらよいのか?元原発技術者の小倉さんの視点から、原発の実態と危険性を学びましょう。(紙芝居もありますよ) 
 
〇講演「最新!放射能と食品汚染」講師:鈴木千津子 
 たんぽぽ舎で食品の放射能の測定を続けている鈴木さんのお話です。今回は質疑応答の時間を長めにとり、皆さんの質問にお答えしながら、食品汚染の最新の情報をお伝えします。 
 
◎第3回は、 
 日 時:9月5日(月)13:30開場、14:00開会、16:30まで 
 講 師:安田節子(食政策センタービジョン21代表) 
     中村徹、大竹なのは 
 資料代:800円 会場:スペースたんぽぽ 
 ※長く原発や食料・農業の問題に市民の視点で取り組んできた 
  安田節子さんのわかりやすいお話で学びましょう。 
 
 
★2.政治無策「満身の怒り」-「原発」で衆院委出席の児玉教授 
「汚染、広島原爆29.6個分」-震災4ヵ月測定不徹底を問題視 
 
○先月27日の衆院厚生労働委員会に参考人として出席した東京大アイソトープ総合センター長、児玉龍彦教授の発言が注目されている。福島原発事故で「七万人が自宅を離れてさまよっている時に国会は一体何をやっているのか」と喝破。子どもの健康を真剣に守ろうとしない政治家に怒りをぶちまけた。反響を呼んだ発言をあらためて紹介する。(秦淳哉) 
 
○当時を「枝野(幸男)官房長官が差し当たり健康にあまり問題がないと言ったが、私はこの時に大変なことになると思った」と児玉氏は振り返り、当初から危機感があったと明かした。 
 危機感の根拠は現行法が特定の場所に少量の高い放射線があることを前提としているためだ。 
 「(こうしたケースでは、放射線の)総量はあまり問題ではなく、個々の濃度が問題になる。(中略、しかし)われわれが放射線障害をみるときは総量をみる。政府と東京電力は今回の福島原発事故の総量がどれぐらいか、はっきりした報告は全くしていない」 
 福島の事故による広範囲に及ぶ汚染をセンターは独自に「広島原爆の29.6個分、ウラン換算では20個分が漏出した」と計算。「原爆による放射線の残存量が一年で千分の一程度に低下するのに対し、原発の放射性汚染物は十分の一程度にしかならない」と、汚染の深刻さを解説した。 
○最優先の課題として児玉氏は「汚染地で徹底的な測定をできるようにしなければいけない」と主張。食品検査に使う最新測定器を使用しない点を挙げて、「なぜ政府は全面的にお金を使わないのか。(現在に至るまで)そのようなことが全く行われていないことに私は満身の怒りを表明します」と語気を強めた。 
○「高速鉄道事故の直後に車両を埋めた中国の情報隠しを笑えない。児玉氏の指摘は正しい。経産省や電力会社などが一体となって原発建設を推し進めた問題点に人々は気付き始めている」 
(『東京新聞こちら特報部』8月3日より抜粋) 
 
 
★3.保安院、やらせ依頼 07年、中部電の原発シンポ 
  住民動員と肯定発言 
 
○経済産業省原子力安全・保安院が、07年8月の中部電力浜岡原子力発電所のプルサーマル発電に関するシンポジウムの際、中部電に対し、参加者の動員と会場での発言を依頼していたことがわかった。会場での質問が反対派のみとならないようにするため、地元住民に原発に肯定的な発言をしてもらうものだったという。 
 本来は原発を監視する立場の保安院が、やらせを事実上指示していたことになる。中部電は依頼にもとづいて社員や下請け業者、町内会長ら地元住民に呼びかけて参加させていた。住民向けに肯定的な発言文案も作成したが、問題があると社内で判断し、発言させることは見送った。29日に中部電が記者会見して明らかにした。 
○また、同じ8月上旬には、保安院の依頼で、中部電本店原子力部グループ長が協力を求めた町内会長ら地元住民向けに「化石資源は何年もつのか」「自然エネルギーは原発に比べてコストが高いのでは」など原発を肯定する発言文案を作成したという。(7/29朝日新聞夕刊より抜粋) 
 
 
★4.原子力損害賠償法に上限おかしい!法案可決に抗議する 
    《たんぽぽ舎 山崎久隆》 
◎東電は免責になるか? 
 「原子力損害賠償支援機構法案」という名の東電救済法案が国会に上程された。このような恐ろしい法案は早々に廃案にすべきだ。 
このような法案を作った背景には、原子力損害賠償法免責条項の適用を主張しない代わりに賠償責任を負うとした東電のしたたかな戦略があると思われる。 
 東電の勝俣会長は、株主総会において今回の原発震災は、原子力損害賠償法の第三条ただし書きにある「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるとき」は免責に当たるとする条文を盾に、「東電も免責になると考えられる」などと答弁した。これを適用されれば、被災者を救済できないから、敢えてこの条文適用を主張せず、被災者に補償をすると言い出した。しかしこれは全くの間違いである。そもそも東電は免責になどならない。 
 異常に巨大な天災地変とは、少なくても福島第一原発を襲った津波や地震動そのものが「異常な」ものでなければならない。地震そのものがどんなに大きかろうと、あるいは人類史上最大の津波が発生した地震であろうと、それに直接遭遇し被災しない限りは「異常な天変地変」に遭遇したなどと言えない。しかるに、東電は単に東北地方太平洋沖地震のエネルギーがマグニチュード9であるから免責に当たるなどと言い出した。全くのデタラメである。 
 原倍法の立法段階で、免責についてどのように考えられていたか、参考となる文献がある。ジュリスト190号の加藤一郎「原子力災害補償立法上の問題点」である。少し長いが引用する。 
 
 (2)免責事由 
 「一般理論からすれば、不可抗力が一般的な免責事由になる。不可抗力としては、戦闘行為(たとえば爆撃)地震、風水害などが考えられるが、その内容は必ずしも明確でない。地震の例をとれば、 
 第一に、一般に起りうる程度の地震で原子炉が破壊されたとすれば、それは不可抗力ではなく、はじめからの設計や管理に瑕疵があったことになり、現行法の下でも責任が生じうるであろう。その場合に、どの程度の地震が一般に起りうるものと考えてよいかという基準の問題が起るが、原子炉では、ひとたび事故が起れば大災 
害の生ずるおそれがあるから、少なくともわが国でわれわれの経験した最大の地震にも堪えうるようになっていなければいけないし、さらに、それに相当の余裕を見て科学的に予想しうる最大の地震にも堪えうるようにしておくべきであろう。このように同じく不可抗力といっても、原子炉のように危険性が大きくなれば、その範囲を狭めて考えていくのが合理的だと思われる。 
 第二に、それでも、われわれの予想をこえるような大地震が起きれば、それはいちおう不可抗力といわざるをえない。それも、そもそもそういう危険のある施設を作ったために被害が起ったのだから、設置者が責任を負うべきだという絶対的な無過失責任も立法論として考えられるが、因果関係の点からいえば、その場合には、施設の設置と損害の発生との間の因果関係が不可抗力によって中断されているとも見られるから、少なくとも一般理論からすれば責任を認めることは困難であろう。」 
 では、東日本太平洋沖地震は「我々の経験した最も大きな地震を超えたか」が問題である。先に述べたように、地震のエネルギー自体は問題ではない。海溝地震である以上、震源は海の下。最も強大なエネルギーは海底に生じた。その結果巨大な津波は発生したいが、最も高い波が襲ったのは宮城県であり、福島ではない。福島第一原発を襲った津波の波高は東電自身が13m程度と見なしており、最大級の宮古 
における波高の半分程度だ。また、地震動は600ガルであり、これは福島第一原発が見直された耐震設計審査指針に基づき自ら設定した基準地震動とほぼ同じである。 
 津波も地震も、およそ常識的な範囲であり、とても「我々の経験した最も大きな」ものなどではない。第一、これよりももっと大きな揺れにより被災した柏崎刈羽原発(中越沖地震)では炉心溶融は起きていない。さらにもっと高い津波に襲われた女川原発でも炉心は破壊されていない。何処をとっても「免責」になどなるわけが 
ない。 
 
◎東電を破綻処理せよ 
 福島第一原発が炉心溶融を起こした最大の理由は、地震と津波への備えがそもそもなっていなかったからだ。地震に遭遇した段階で、既に外部電源を全て失った。送電線が全て遮断され、以後10日間も復旧しなかった。さらに非常用ディーゼル発電機はタービン建屋の地下にあり、津波の浸水で壊滅した。この津波、13mもあったから電源が破壊されたというわけではない。敷地標高はわずか10m、つまりこれを超える津波が侵入したら持たなかったのだから、10mだろうと13mだろうと何ら違いは無い。また、確率的安全性評価においては、既に明確に示されていたことだが、敷地内にある海水ポンプが冠水したら、もはや原子炉を冷やすことは出来なくなる。これは津波波高わずか6mで達してしまう。 
 福島第一原発はそもそも6m程度の津波で破壊される原発だった。設置許可申請書には、想定する津波高を「3.1m」としている。もともと3m程度の津波しか対策していなかった。それを2002年に過酷事故対策の一環として行われた土木学会の再調査において、津波波高を「5.7m」と修正したが、それに対して設備の対策はなぜか海水ポンプをわずか「20センチ」かさ上げしただけであった。 
これでは何もしないに等しい。つまり、もともと3mにしか耐えられない設備を作っておきながら、それをある日突然「5.7m」に耐えられると机上の空論を書き上げたということになる。 
 そのうえ地震動についてももともと300ガル程度の揺れしか想定せずに作った原発を「600ガルの基準地震動にも耐えられる」という評価結果をでっちあげていたが、その化けの皮がはがれ、実際に600ガルに襲われて、もろくも崩壊していった。 
 東電のデータ偽造、ねつ造事件は2002年に大きな問題になり、全原発停止に至ったのだが、同時にこのような「偽装」をしていたことは保安院から指摘されなかったため、放置された結果が最悪の原発震災であった。 
 これは重過失以外の何物でも無い。東電を破綻処理し、解体後に新しい体制に作り替えなければ、また繰り返されるだけだ。 
 
◎発送電分離は東電から 
 東電を解体し、必要な資産売却を行えば、10兆円程度の補償は可能になる。特に送電施設などは大きな試算価値があり、少なくても関東一円に電力を供給する事業つまり送電事業は何ら打撃を受けているわけではない。 
 発送電分離をした後に、原発は破綻処理会社に移行し、火力などの発電設備を持つ発電会社を別に作り、送電会社との間で通常の売買契約を結べば良い。損害賠償は破綻企業が東電の資産を売却した資金をもとに引き継ぐ。発送電会社や発電会社は資産を取得する際に生ずる負債を債券化して売り出せば良い。もともと損失など出ない会社だったのだから、そのうえ原発を切り離しているのだから、債権が売れないはずはない。発送電会社が適切な価格で自然エネルギーからの買い取りを行うよう、この社債は政府が条件を付けて引き受ければ良い。 
 原倍法に上限を設けるなどと言う愚かなことを自民党や民主党は考え出したらしいが、それをさせてはならない。いまですら賠償を値切ることを平気で始めている東電が、そのまま温存されたうえに原倍法に上限が出来るようなことになれば、以後、原子力災害は際限なく繰り返されるだけだ。 
 
(注)以上の文章は、「原発いっしょになくそうよせあつめ新聞」の巻頭言なので、「発行後、数日後に掲載」のルールのため、執筆後数日経過しての掲載です。 −編集担当。 
 
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