2011年09月25日21時08分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】日本の原発輸出を阻止しよう  脱原発は口先だけの野田首相  山崎久隆 

  野田首相は国連に行って「脱原発」宣言をするのかと思ったら、原発の売り込みを強調していた。首相が、国の内外で言うことがちぐはぐなのは今に始まったことでもないが、これほどひどいのもめずらしい。脱原発を進める国が、仮に「世界一安全な原発」に出来たからと言って、やめてしまう原発を売り込むなど、信義にももとる行為だ。ということは「脱原発は口先だけ」と解釈するほかはなかろう。(たんぽぽ舎「地震と原発事故情報・その183」) 
 
◆まだ原発震災さえ終わっていない 
 
  そうはいっても、今世界中で動いている約430基の原発を、より安全にするためには日本の技術が役に立つという向きもあろう。しかし、それ以前に日本が売り込む資格など無い。 
 
  原発震災で世界に例を見ない3機同時メルトダウンを引き起こした責任をまず取る必要がある。まだ賠償さえはじまってすらいない。原因究明どころか収束さえ出来ていない。放射能は放出され続けている。日本の技術はまず福島原発震災の収束に全力を投入すべきであり、売り込みに費やす時間も資金もあるはずが無い。そんなものがあるのだったら直ちに福島に投入すべきだ。しかもこれは数年で済む話では無いのだ。 
 
◆売り込む資格もないくせに 
 
  4月4日、原子力安全条約の再検討会合においてIAEAの天野之弥事務局長は冒頭演説を行い、日本での原発事故の発生を受け「原子力に対する一般市民の信頼を取り戻すためには、安全基準の厳守と完全な透明性が欠かせない」と述べた。 
  はっきり言って、原子力を推進している国に「完全な透明性」などあったためしがない。日本は今となっては、その中でも最悪の国である。その国が欠陥原発を他国に売り渡そうとするなど、悪夢以外の何物でも無い。 
 
  私は東電と20年以上にわたり対話してきたが、ことあるごとに情報は「黒塗り」であった。別に東電に限ったことではない。国の原子力行政もまた、「黒塗り」の連続で、安全基準に関わる重要情報や経済性をめぐってはまともな情報は今もって公開されていない。東電の黒塗り手順書公開はつい半月前のことだ。 
 
  何処でも良いから、原発の収支明細(一年間の原発稼働に伴う収入と経費)を明らかにしたところが一つでもあっただろうか。 
 
◆原発導入の動機は、「核兵器に近づくこと」 
 
  どの国であろうと原発を導入する動機は、ひとえに核兵器に近づくこと、そして国家のステータスを上げること。国民の生活などは念頭にさえない。 
 
  本当に電気が必要なのだったら、ガスタービン火力を導入する方が遙かに早道だし、低コストだ。ベトナムなど天然ガスや石油など資源は豊富で、電力生産のため、いまさら原発を導入する必要など無いのだから。 
 
  成長戦略の名の下に、原子力産業に莫大な資金を流す目的で、原発輸出という「ニーズ」を作り上げた結果、いまさら止めるわけにも行かないと、そんなことをまだやっていられるほど政府には危機感が無いらしい。これでは福島原発震災は何度でも繰り返すだろう。 


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