2011年10月10日09時49分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201110100949001

欧州

欧州の大手銀行デクシアが破綻 〜ギリシアとユーロ〜

  9日、欧州の大手銀行デクシアがついに破綻した。デクシアはギリシアなど債務問題にあえぐ国の国債を多額に持っていた。これらの国の国債を保有する欧州銀行は多数ある。今、欧州ではギリシアの救済策が大きなテーマになっている。ニューヨークタイムズのフロイド・ノリス(Floyd Norris)は「いかにしてギリシアはユーロから脱出できるか」というコラムを書いている。 
 
  これまでは強かったユーロにあやかって借金を重ねてきたギリシアだが、いざ債務が払えなくなると、ユーロの価値が逆にネックになってきた、とノリスは指摘している。ギリシアはユーロ導入前は通貨ドラクマを使っていたが、ユーロ導入前のレートは1ユーロ=340ドラクマだった。もし、ギリシアが今でもドラクマを使用していれば経済が悪化するにしたがってドラクマの通貨価値も下落し、たとえば1ユーロ=1000ドラクマにも低下するだろう。しかし、通貨安になれば輸出産業にとっては有益になるため、復興の道も見えてくるに違いない。 
 
  たとえば2002年のアルゼンチンの経済危機の場合、それまで通貨ペソは1ペソ=1米ドルに固定(ペッグ)していた。しかし、同年、新政権に移行したのを機に、ドルとの固定を解除し変動相場制にしたところ、アルゼンチンではインフレが加速し、1ペソ=30セントと、通貨価値が3分の1以下になった。以後、輸入は減少することになり、短期的には不況になったが、通貨安のおかげで産業が勢いを取り戻し、復興につながった。 
 
  ギリシアの場合は、しかし、すでにドラクマ通貨がなくなっているわけだから、もしアルゼンチン型の復興策を取るならドラクマを再び印刷しなくてはならないだろう。ただし、こうした復興策が可能になった場合、他の財政破たん予備軍のポルトガル、スペイン、イタリアはどうするのか?とノリスは書いている。 
 
  現在、欧州連合はドイツを中心にユーロ通貨圏の枠組みでのギリシア救済策を検討しているが、厳しいリストラを求められたギリシアでは解雇に直面する公務員などを中心にデモが起きている。 
http://www.nytimes.com/2011/10/07/business/global/how-greece-could-escape-the-euro.html?pagewanted=1&_r=1&ref=greece 
  ギリシアの財政危機は欧州通貨ユーロの弱点をさらすことになった。欧州全体の経済本部がないまま、通貨統合してしまったがゆえにこうした場合の復興策は手探りの状態にある。 
 
■アルゼンチンの財政破たん(2001年)以下はウィキペディアによる 
 
  「1988年から親米・親IMF路線を掲げたメネム政権の新自由主義政策により、1990年代には年率9%にも達する経済成長を遂げるなど、一時的に安定した。しかし、1999年に起きたブラジルのレアル切り下げでペソが相対的に高くなり輸出競争力を喪失、国際収支は悪化した。結果的に通貨危機(通貨ペソの対米ドルペッグ制崩壊)により完全に暗転、2001年11月14日には国債をはじめとした対外債務の返済不履行宣言(デフォルト)を発する事態に陥り、経済が破綻。国際的な評価は地に落ちた。 
 
  デフォルトにより貧困も拡大し、イタリアやスペインに職を求め大量の移民が流出、その中には医者・弁護士などの知識層も少なくなかった。1980年代に国民の約60%を占めていた中間層は2005年には国民の約20%となり[8]、他方貧困率は2002年で53%に達するなど[9]、かつてラテンアメリカで比類なき中流層の国だったアルゼンチンはもはや過去のものとなった。20世紀半ばまでは南米の指導者としての実力を備えていたアルゼンチンは、もはや完全にチリ、ブラジルに先を越されてしまったといえるだろう。 
 
  このようにペロン政権以来、一貫した経済政策が採られなかったツケが回り、2002年(アルゼンチン通貨危機)には経済が破綻してしまったものの、2002年に変動相場制を導入してから輸出が拡大し、着実に持ち直しつつある。キルチネル大統領は、2006年7月9日の「独立190年記念式典」で、「われわれは国際通貨基金 (IMF) にチャオ(さよなら)を告げた。」と演説した。IMFの干渉を排除するため百億ドル近い債務を完済し、2000年末の経済破綻直後の失業率24%を、2006年5月には11.4%にまで改善した。さらに、2003年から2007年まで平均約8%の高成長を続け、2002年の経済崩壊以来の遅れから立ち直りつつある。」 
 
■デクシア(Dexia) 
  ブリュッセルとパリに本部を構え、両国政府が株主に入っている。カナダの経済サイト、Howe Street.comの'Mish's Global Economic Trend Analysis'(経済アナリストMike Shedlock のコラム)によると、デクシアは2008年9月のリーマン危機の時、フランス、ベルギー、その他の国の投資家から60億ユーロの融資を受けた(そのうち30億ユーロはフランスとベルギー政府が同銀行の株を買った。また残りの金額も国営銀行などからの融資のようである)つまり、二国民の巨額の税金が投入されている銀行であり、つぶすにつぶせない。しかし、さらなる公的資金を注入するかどうかについては思案中だが、その可能性もあるとアナリストのマイク・シェドロック氏は書いている。 
  関係者のリークではフランスの部分だけ切り離してそちらはフランスの銀行の監督下に置く案も浮上しているという。 
 今年6月末時点で、デクシアは38億ユーロのギリシア国債を保有していたとされる。 
http://howestreet.com/2011/10/dexia-belgiums-largest-lender-casualty-greek-default-emergency-meeting-split-bank-progress/ 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。