2011年10月19日15時37分掲載  無料記事
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農と食

農水省統計から  肉と米 〜EPAとTPPの違い〜

  農水省の統計サイトに昭和40年度(1965年度)と昨年度の一人当たりの食品別消費量を比較したデータが出ている。http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/02.html 
  いくつかピックアップしてみよう。 
 
■米 
  米は昭和40年度は117kg→昨年度は59.5kg 
   とほぼ半減している。 
 
■肉類 
  昭和40年度は9.2kg→昨年度は29.1kg 
  と3倍強に増加している。 
 
■魚介類 
  昭和40年度は28.1kg→昨年度は29.6kg 
  とほぼ横ばいになっている。 
 
■油脂類 
  昭和40年度は6.3kg→昨年度は13.5kg 
  と2倍強だ。 
 
■野菜 
  昭和40年度は108.1kg→昨年度は88.3kg 
  と微減である。 
 
  意外だったのは近年の健康志向で野菜がもっと増えているかと思えば、減っていたのである。昔はほとんど生野菜サラダなどは食わなかった。煮つけが多かった。煮物などは家で食べる量が減っているのかもしれない。 
  また、魚介類は近年、減っているのかと思えば昔とほとんど変わらない。 
 
  さらに、最近のTPPがらみで気になるのは牛肉だろう。肉類全般でみると、消費量は昔の3倍強になっている。現在、ファーストフードチェーン店で300円から400円ぐらいの牛丼は関税がゼロになれば200円ぐらいになると推測する議員もいる。ちなみに*牛肉の関税率は38.5%である(輸入量が基準量を超えてセーフガード措置がかかった場合などは50%に増す)。 
 
  一方、コメの関税率は税関資料によれば1キロあたり402円(農水省によれば目下778%とのこと)である。TPPに参加すれば安いコメが入ってくるだろうがすでに昔に比べて日本のコメ消費は半減している。そのため、少ないパイの奪い合いとなり、日本の米作りはこれ以上ない打撃を受けるだろう。コメと牛肉が激安となり、牛丼三昧はできるかもしれないが。 
 
  すでに一人あたりの野菜の消費量は減っており、肉と油脂(油脂は2倍強)は大幅に増えているのである。戦後は戦争に負けたのは体が貧弱だったからだ、とアメリカ人に追いつけ追い越せで食生活の「改革」が行われてきた。コメを減らしてパンと肉と乳製品を増やせ、だった。TPPに参加すれば肉の消費量はもっと増えるだろうし、肉の販促活動も増えるかもしれない。しかし、戦後お手本にしてきたアメリカ人が今、食生活に関して国を挙げて取り組んでいることは超肥満との戦いであり、その対策に巨額の予算を組んでいることは事実である。 
 
*牛肉でもくず肉などは12.8%と種類によって変動があるが、主要な牛肉は38.5%である。 
 
■税率表(税関) 
  今、実行されている輸入税率について知りたければ税関(財務省貿易統計)のホームページから「実行関税率」をクリックすればよい。 
http://www.customs.go.jp/tariff/2011_8/index.htm 
■EPA(二国間の自由貿易協定)とTPPについて 
 
  今、話題になっているTPPとEPA(経済連携協定=日本が結んできた二国間の自由貿易協定。・・・アメリカが結んでいるものはFTAと記されている)との基本的な違いだが、EPAの場合は国内産業保護のために関税撤廃の例外を設けることができる。 
  EPAの場合、たとえば日本がA国とEPAを結び100品目の輸出入があったと仮にすると、「関税撤廃は品目の85%にしましょうね」と取り決めることができる。この場合、85品目については関税率がゼロになるが、残り15品目については関税率を据え置きできる。 
  韓国は米国と二国間の自由貿易協定を結んだが、目下のところ、TPPに参加しないと見られている。 
 
■朝日新聞(10月18日)は野田首相が「TPP、日本にプラス」と語った言葉を引用して見出しをつけている。朝日新聞はその利点として完全撤廃については「日本と経済連携協定を結んでいない米国やニュージーランドに工業品などの輸出がしやすくなる」とし、懸念として「コメ、小麦、乳製品など940品目で関税撤廃を求められる可能性」としている。 
  この記事では外務省の説明として「米韓の自由貿易協定(FTA)では、韓国の医薬品政策に米国が異議を申し立てられるようになっており、TPPでもこうした規定が置かれる可能性があるとした」と付記している。 
  しかし、TPPで例外規定が設けられるかどうか確実なことはわからない。コメの関税撤廃が外される「可能性」に希望を持って参加しても、そうなる保証はない。記事で参照されている韓米FTAとTPPとはその実質は先ほど述べたように異なる。二国間のFTAでは例外規定を設けるのは一般的である。 


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