2011年11月02日00時24分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201111020024593

コラム

「一夫多妻制 または「アラブの春」が冬になる時」〜 スペイン紙のブログから 〜村上良太

  リビアがシャリアを導入し、一夫多妻制で行きます、とアブドルジャリル国民評議会議長が宣言したことが、世界で波紋を巻き起こしている。リビアが復活させようとしている一夫多妻制は男なら誰でも4人の妻をめとることができるとするものだ。このことが、特に「アラブの春」当事国の女性たちにとっても懸案事項になっている。 
 
  ニューヨークタイムズによればカダフィ時代にも一夫多妻制は例外的に残されていた。しかし、そこでは‖莪貮弯佑防廚吠未留さんをめとらせてもいいかどうかの決定権がある△發訓さんが同意しない場合でもどうしても夫が別の女性をめとりたい場合は裁判員の前でその理由を話し、説得しなくてはならなかったという。このぎりぎり残されていた女性の権利が奪われようとしている・・・リビアの女性たちはこういう不安に包まれているのである。またエジプトやチュニジアのフェミニスタたちも「アラブの春」の行方に危機感を抱いているという。ここで頑張らなくては国が頑迷なイスラム主義に後戻りしてしまうと考えているからだ。 
 
  スペインの新聞エル・パイス紙の女性をテーマにしたブログ欄では「一夫多妻制または「アラブの春」が冬になる時」とタイトルをつけたコラムが掲載されている。コラムの筆者、GEORGINA  HIGUERASさんはまだリビアの希望がなくなったわけではないと書いている。アブドルジャリル国民評議会議長が法律を根こそぎ変えることはないと約束したからだという。もしかすると、夫が第二夫人や第三夫人をめとるかどうかは第一夫人の承認を必要とすると言う風に、一夫多妻制に留保がつけられる可能性があるとしている。カダフィ時代に認められたこの第一夫人の選択権こそ、北アフリカ(マグレブ地方)に広まっていた一夫多妻制に終止符を打ったものだから、と結んでいる。 
 
  無条件に男の思い一つで複数の奥さんを持てるのか、第一夫人の承認を要するのか。そこが今、「アラブの春」の未来を考える上で1つの鍵になっているというのである。男から見ればどうでもいい話か、あるいはむしろお得な話に響くかもしれない。 
 
  筆者はパリに「アラブ映画祭」を見に行ったことがある。製作者は全員アラブ各国か、欧州在住のアラブ映画人である。その時、上映されていた映画の1本が、この一夫多妻制をテーマにした映画で、痛切な後味を残すものだった。 
 
  映画は主人公の妻の自殺から始まる。夫婦は仲良しの理想的な二人だった。その妻が自殺することになったのは夫が第二夫人をめとったからである。実は、この奥さんには子供ができなかったのだ。後継ぎを求める血族から第二夫人をめとる話が持ち込まれるのである。夫は乗り気ではなかったのだが、孫を抱きたい両親の希望を拒み切れず、また、奥さんの方も夫が第二夫人をめとることを心ならずも承認するのである。夫の晴れやかな結婚式があり、やがて第一夫人の精神が次第に追い詰められていくのだった。奥さんはビデオに夫への最後の言葉を残して死ぬ。奥さんが最後に遺したビデオメッセージが終わると、ざらついた画面になる。その前でうなだれている男のシーンでこの映画は終わる。 
 
  この映画は一夫多妻制がイスラム信仰というだけでなく、当事者の意思を超えた家制度を基盤にしていることを示していた。 
 
 
■エル・パイスのブログ「一夫多妻制または「アラブの春」が冬になる時」http://blogs.elpais.com/mujeres/2011/11/poligamia-en-libia-o-cuando-la-primavera-arabe-se-hace-invierno.html 
■フランスからの手紙19 フランスのウーマンリブ創設40周年〜70年以後のフランス女性の地位について〜 パスカル・バレジカ 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201011030038273 
■イスラムにおける重婚 
 
  静岡県立大学の宮田律氏が書いた「イスラムでニュースを読む」によれば、「イスラムで4人までの妻帯が認められるのは、他の宗教世界から見れば一種独特な感じがする。これは、元々、ムハンマドの時代にイスラムが拡大していく過程で行われた戦争で戦死した男性の未亡人を救済するために正当化されたと考えられている。戦争における戦死者の発生などのために女性の数が男性のそれを上回る場合がある。この場合でも女性が結婚できるために、イスラムでは一夫多妻を認めた。すなわち、寡婦や父親のいない子供たちの生活上の困難に対する哀れみから一夫多妻が許容された。」 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。