2011年11月17日11時02分掲載  無料記事
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アジア

アユタヤで工場労働者約3万4000人を再雇用 タイ、大洪水復旧の動き始まる

  1952年以来最悪の大洪水に見舞われたタイでは、危機がピークを越える兆しがみえてきたのに伴い、被害の復旧に向けての取り組みが始まっている。日系企業も多数進出しているアユタヤでは、25工場が操業再開に向け労働者計3万3892人を再雇用した。アユタヤの製造業者はタイ労働者保護・福祉局に、一時帰休となった労働者28万人を再雇用すると言明しており、その第一歩を踏み出した。(クアラルンプール=和田等) 
 
 11月上旬になって洪水の被害にさらされた県は32県から14県に減少した。一方、まだ浸水した水が引かないタイ中部を中心とした14県では、2万526事業所で働く計81万9147人が一時帰休を強いられている。 
 
 首都バンコクでは、6474事業所の従業員計10万9602人が失職した。さらに労働省は、バンコクから海に水を排出するうえで保水地域となっているサムット・サコン県では、労働者50万人が洪水の影響で一時帰休を余儀なくされたと推計しているが、このうち30万人がタイ人で、20万人が外国人労働者。タイ人労働者に対しては工場の事業主が緊急避難場所を提供し、外国人労働者に関しては労働省が避難所をつくって提供するといった対策をとる方針。 
 
 また同省は失業緩和に向け、洪水の被害を受けた工場の労働者に対して3ヵ月にわたって月2000バーツ(約5000円)の補償金を支給し、一時帰休となった労働者約1万5000人に対して10日間の職業訓練を実施する。またこれら労働者には手当として1日120バーツ(約300円)を支給する。労働者10万人に補償金を支給するとすれば、6億バーツ(約15億円)の予算が必要となる。また職業訓練に必要となる予算は約6100万バーツ(約1億5250万円)。 
 
 さらに政府は、バンコクで洪水の被害を受けた30地区62万1355世帯に対して、1世帯あたり一律5000バーツ(約1万2500円)の補償金を支給することを決定した。これを実施するため政府は31億バーツ(約77億5000万円)の予算措置をとる。 
 
 このほか、政府は外国の投資家の撤退を防ぐため、2012年末までに7つの工業団地に防水堤を設置し、工業団地での浸防止計画に対して15億バーツ(約37億5000万円)相当のローン融資制度を導入することを決めた。 
 
 さらに政府が長期的な洪水予防策をとるうえでは巨額の投資が必要となるため、歳出面での財政規律に厳格に従わなければならない立場に置かれる。選挙公約で低所得者層を中心にした大盤振る舞い政策を掲げたインラク政権は、思わぬ災害による出費で足をすくわれそうな気配が濃厚になってきたようだ。 
 
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