2011年11月27日17時19分掲載  無料記事
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農と食

おせち「奥州物語」 〜三陸漁師の復活に向けてインターネット企業が動く〜 

  地方の希少な食材を発掘し、大量生産大量消費ルートとは違ったインターネットを活用したシステムで販売している人がいる。「うまいもんドットコム」の萩原章史社長もその一人だ。今、課題になっているのは地方で第一次産業に携わる農林水産業の人々の高齢化と限界集落化である。あと5年で何とかしないと日本の第一次産業の衰退は不可逆になりかねないと危機感を持って日々、地方を回っている人である。 
 
  その萩原社長が今、会社を挙げて取り組んでいるのが東北・三陸の漁師たちの応援である。三陸(岩手・宮城)では9割がたの漁師たちが漁に出られない状況が続いている。理由にはいくつかあるが、加工施設が津波でやられ、仲買人たちも散り散りになり、船も沈むなど、大きなダメージを受けたことだ。漁業従事者が全体として高齢化しており、後継ぎも減っていることなどから、ここで銀行や自治体などから低利や無利息で修理代を融資してもらっても一人で返済できるかどうか考えて諦める人が少なくないようである。 
 
  たとえばこんな例がある。3月に脱サラして大船渡で漁師をしている父親を継ぐはずだった横浜在住の息子が地震と津波で帰郷することができなくなってしまった。息子は会社もすでに退職してしまったので困ったことになったという。このケースでも、もし、息子が後を継いでくれていたら、銀行から融資を得て船や加工施設を修理し、親子二代で返済することもできただろう。東北の復興は後継者を創り出せるかどうかが大きな鍵となっている。そのためには少しずつでも商いを回復していくことが必要になる。 
 
  今、そんな漁師たちが仮に漁に出てもなかなか販路がない状態だという。地震による地盤沈下で、漁港に寄港できる時刻が日々、潮の関係で変化しており、築地にトラックで配送できる時間も変則的になっている。そこで、萩原社長はインターネットの販路を活用したり、築地市場に細かい情報を流すことで販路を復旧し、漁師たちに安心して漁に復帰してもらおうと試みているのである。 
 
  「三陸の漁師たちに次の正月を安心して迎えていただくことがいちばん大切だと思っています。漁師の多くは日当をもらって瓦礫の撤去作業をやっています。でも漁師にとって本当の幸せとは何でしょうか。漁に出て魚を取る。高齢化しているとはいえまだまだ漁師として働くことができる人たちです。ですから、このまま漁に出られず年を越していくと、それだけ復帰が難しくなってしまいます。大きな復興計画もいいですが、まずは小さな一歩から。少しでも漁でお金を稼いで、やる気を取り戻していただけるようにしたいと思っています」と萩原氏は言う。 
 
  試みの1つがおせち。三陸沖の魚など東北の食材を中心に使って、東京・早稲田の割烹と組んで作るおせちである。萩原氏の会社「食文化」のスタッフ2名が10月に東北入りして、最初の成果である。食文化ではそのほか、三陸漁師に魚の絞め方を伝えたり、美味しい干物のつくり方を伝授したりと今、手不足になっている漁後の処理を支援をしていくという。 
  「漁師がひと手間かけるだけで売れる値も大きく違ってきます。これは三陸に限らず全国の漁師に言えることです」と萩原氏は言う。大量に獲って安く売る従来の漁業では資源も乏しくなり漁業はじり貧になっていく。大量に獲らなくてもひと手間かけてよりおいしいものにして売ることがこれから大切だと萩原さんは訴えている。 
http://www.umai-mon.com/user/scripts/p_product.php?product_id=22093&utm_sour 
 
  「平成23年11月に入り、漸く一部の仕事場に威勢の良い声が戻ってきました。 奥州物語は三年(上・中・下巻)かけて、被災地の復興を後押しする企画です。 
 
  今年は上巻。復興の第一歩を踏み出した、八戸市、洋野町、釜石市の港と加工業者に、お節料理の一部をお願いしました。 
なお、当社ではお節に限らず、着実に被災地に雇用を生み出せる商品企画を展開したいと考えています。 もちろん、野菜や肉、調味料も出来る限り、東北の生産者の品物を使っています。 
 
  厳選素材を使った料理の監修は、早稲田の名店『日本料理 松下』の松下利市氏が担当。化学調味料や合成着色料・保存料に頼らない本物の味を追求しています。 」 
 
  おせちの食材は海外の食材も一部含まれるが、東北の食材をメインにしている。全27品目、3〜4人前(二段)、送料無料で2万円である。ただし、原産地の状況で多少の変化がある場合もあるという。昨今、おせちの食材の原産地も興味深い情報かと思い、「奥州物語」の食材を紹介する。ソースは「うまいもんドットコム」のサイトである。 
 
【壱の重】 
いくら醤油漬・・・北海道産粒揃いのいくらの食感と風味を活かしました。 
味付け数の子・・・カナダ又はアメリカ産の数の子を使った一品です。 
祝鯛の焼き物・・・塩焼きの青森県産鯛に切りゴマをまぶしました。 
祝かまぼこ・・・タイ産および国産のすり身を使用。 
たたきごぼう・・・青森県三沢産ごぼうを細切りにした、ごまが香ばしい一品です。 
岩手鶏の焼き物・・・岩手県他産鶏肉を使用し、こんがり焼きあげました。 
活車海老の姿煮・・・九州産車海老のプリプリの食感を活かした一品です。 
山形ずいきの味噌香煎・・・炊いた山形県他産いもがらを、仙台味噌で和えました。 
鮭の香煎焼・・・岩手県産の焼鮭の上に、煎ったずんだをのせました。 
紅白なます・・・青森県三沢産大根、人参を使った、ゆずの香り豊かな一品です。 
伊達巻・・・神奈川県産の卵と白身魚(タイ産グチ他)を使った伊達巻です。 
いかの焼き物・・・身のあつい青森県産イカを焼き上げました。 
あわび煮・・・三陸産あわびの甘さが出るまで、蒸しあげたあわびです。 
枝豆煮・・・宮崎県産枝豆を甘辛だしで煮ました。彩鮮やかな一品です。 
はじかみ・・・愛知県稲沢産の淡紅色が鮮やかな芽生姜の酢漬けです。 
 
【弐の重】 
栗きんとん・・・風味のよい韓国産栗を使い、ほど良い甘さに仕上げました。 
豚の角煮・・・秋田県産の豚肉を赤ワインでじっくり煮込みました。 
雁喰豆・・・岩手県盛岡産雁喰豆を使用。宮城県や岩手県では欠かせないお正月の定番商品です。 
にしんの昆布巻・・・函館産真昆布で鰊を巻き、じっくりと炊き上げました。 
蓮根の桜海老衣揚・・・茨城県土浦産蓮根を桜海老衣で香ばしく揚げました。 
寒鰤の柚子庵焼・・・秋田県他産寒鰤を柚子の香り豊かな焼き物です。 
山芋揚・・・山形県産山芋をパプリカを含んだ衣につけてほっくり揚げました。 
里芋煮・・・ほっくりした山形県産里芋を東北の醤油で煮ました。 
筍煮・・・歯応えのある千葉県大喜多産の筍を東北の醤油で煮ました。 
どんこ椎茸煮・・・岩手県産の肉厚のシイタケを東北の醤油でやわらかく煮ました。 
黒こんにゃく煮・・・群馬県産こんにゃくをごま油と一味をきかせて仕上げた、こんにゃく煮です。 
梅にんじん・・・梅花の形に切った千葉県産香取人参を梅肉と東北の醤油で煮ました。 
※原材料の原産地は状況により変更になる場合がございます。 
 
■萩原章史氏(1962−) 
 
  (株)食文化 社長 。1962年静岡県生まれ。84年 早稲田大学政治経済学部卒業後、ゼネコンのハザマに入社。 中国・米国などの海外事業で通算13年間の海外勤務を経て、 2000年12月に退職。01年4月 (株)食文化を創業。8月 うまいもんドットコム開業。04年4月 築地市場ドットコム開業。(あのひと検索スパイシーなどより) 
 
■「干物を極める」 
 
  地方には大量販売の流通ルートに乗りにくい逸品がある。それを小ロットでインターネット販売している「うまいもんドットコム」のサイトから。 
 
  「全国津々浦々に干物はありますが、日本人の心の干物は何か?と尋ねれば、多くの日本人は『目刺し』か『鯵のひらき』と答えると思います。 ご飯とみそ汁と漬物と鯵のひらき。模範解答のような和の朝食、昨今の家庭では絶滅危惧メニューかもしれません。 こうした状況を招いた原因は色々と考えられますが、先ず言えることは、美味しい干物がリーズナブルな価格で手に入らないことです。」 
  http://www.umai-mon.com/user/scripts/p_attribute.php?attribute_id=745&utm_source=umaimon&utm_medium=leftbn&utm_campaign=id745 


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