2011年12月05日00時58分掲載  無料記事
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核・原子力

原発ビジネスマンか反原発の騎士か  英ガーディアン紙がバズビー博士を批判  

 低線量被曝の世界的権威ということで日本の市民団体が招聘し、福島原発事故による被曝の危険性について発言して救世主扱いされたイギリスの学者クリストファー・バズビー博士をきびしく批判する記事が、英紙ガーディアン(The Guardian)に掲載された。博士の日本訪問後、博士の名前を冠したサプリメントや各種検査を高価な値段で販売促進する団体が日本国内に設立され、販売促進活動をしていることを批判したものだ。ガーディアンの記事は、バズビー博士は日本人の恐怖をあおり、自身の製品の販売促進を図っているとも批判している。(日刊ベリタ編集部) 
 
 問題の記事はガーディアン紙2011年11月21日付け電子版で読める。タイトルは「科学者たちから非難されている福島原発事故『抗放射線錠剤』」(Post-Fukushima 'anti-radiation' pills condemned by scientists)。筆者はGeorge Monbiot記者と Justin McCurry記者。東京発の記事だ。 
http://www.guardian.co.uk/environment/2011/nov/21/christopher-busby-radiation-pills-fukushima?INTCMP=SRCH 
 
 ガーディアンによると、バズビー博士はアイルランドのアルスター大学の客員教授で、以前緑の党の科学技術スポークスマンを務めていた。しかし緑の党は現在「日本の原発災害の後で製品を販売促進している元スポークスマンのクリストファー・バズビー博士と距離を置いている」という。そして緑の党の広報責任者であるペニー・ケンプは、ガーディアン紙からのインタビューに答え、党はバズビーのその製品宣伝を認めることはできないと述べたとガーディアン紙は報じている。 
 
 博士が扱っている商品やサービスはきわめて高価だ。1瓶5800円のミネラル・サプリメントなど一連の高価な製品、放射能汚染を調べるための尿検査(9万8000円)や食品検査(10万8000円)などである。博士は、「(これらの製品は)日本にいる人達を放射線の影響から守るだろう」と語っている。 
 ガーディアン紙の報道によると、東京の薬屋ではバズビー印のミネラル・サプリメントと同様の成分を含んでいる200錠の瓶が1,029円で買える。ほぼ5分の1の値段だ。ジェームズ・ライアンのウェブサイトは、5800円に売価に加え、2,300円の輸送コストも請求している。 
 
 販売の仕組みはこうだ。 
「検査はバズビー研究所で提供されており、Christopher Busby Foundation for the Children of Fukushima (CBFCF)という団体を通じて宣伝されている。薬と検査は両方とも4u-detox.comというカリフォルニアにあるジェームズ・ライアンと呼ばれる人が運営するウェブサイトで販売されている」 
 CBFCFは国内では「バズビー基金」という名前で知られている。 
 また、バズビー博士はGreen Auditという自身が設立した環境コンサルタントと研究の組織を故郷のアベリストウィス持っており、CBFCFへの一般からの寄付金はGreen Audit名義の口座に払い込むようになっている。 
 
 ガーディアン紙の取材に対し、バズビー博士は「錠剤と検査の売り上げは、CBFCFに行く」と話している。そしてCBFCFの代表であるジェームズ・ライアン氏はガーディアン紙の質問に対し「4u Detoxからの全ての金は福島の子ども達と日本全国の子ども達に行く。我々は日本の子ども達に多額の寄付をした」と答えた。だがその一方で「(ライアン氏は)なぜ4u-detox.comが提供する製品とサービスはそんなに高価なのかというガーディアンからの質問に返答しなかった。彼はその製品の効果について尋ねた時も何の証拠も提供しなかった」とも、ガーディアン紙は報じている。 
 
 ガーディアン紙はそうしたバズビー氏のビジネスについて報じるとともに、彼がこれらの製品やサービスの販売促進のために恐怖をあおっているとも書いている。 
 
「彼は(ユーチューブのビデオで)放射線によって健康に影響を受ける可能性のある人達が政府に対する訴訟を起こさせないよう、日本政府は放射性物質を福島から日本の各地にトラックで運んでいると主張している。日本全体でがん罹患率を上昇させ、原発災害の影響を受けていない子ども達をなくして、対照群が無くなるようにするためだ」 
 
 これも事実に反する、とガーディアン紙は述べている。福島県内の放射性廃棄物はこれまで県外に持ち出されてはおらず、政府も福島県内に中間貯蔵施設を建設する方針を出しているからだ。 
 
 こうした陰謀説ともいえる主張をふりまきながら、バズビー博士は「自分の錠剤は放射能汚染物質が日本の子供たちのDNAに付着するのを阻止すると彼は主張している」とガーディアン紙は書いている。 


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