2012年01月03日14時00分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201201031400282

中国

中国:国有企業労働者の抵抗と挫折について  稲垣 豊

 中国の国有企業労働者に関するニュースを二つ紹介します。ひとつは、年末に四川省で起こった国有企業労働者の抗議行動について。もうひとつは民営化・リストラの奔流になぜ国有企業労働者は抵抗できなかったのか、を述べた論文の紹介文です。 
 
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◆ 成都で数千人の国有企業労働者の街頭デモが機動隊と対峙 
 
原文はこちら(写真多数あり) 
http://www.molihua.org/2011/12/27.html 
(横断幕のスローガンは「仕事がほしい、生活もある、社会貢献だってしたい」) 
 
2011 年12月30日、成都の国有企業、川化グループの労働者らが、〔同グループの経営する〕川化ホテル入り口に集まり、総経理〔CEO〕の楊誠と同社共産党委 員会書記の劉勇らを包囲し、賃上げ要求に対する回答を迫った。現場は緊張に包まれた。夜になって抗議の声はさらに高まり、数千人が高速道路の入口までデモ 行進した。デモの途中ではインターナショナルの歌声が上がった。 
 
政府は、大量の警察を配備し、数百人の機動隊が高速道路入り口でデモ隊を規制し、双方の対峙は数時間続いた。 
 
川化の労働者この四年間、賃上げがなく、何十年も働くベテランでも月に一千元余りだという。もし賃上げ要求に応えないなら四川省政府までデモすると労働者は息巻いている。 
 
川化集団有限公司(旧:四川化学工場)は1956年に成都市青白江区で設立された。おもに化学肥料と化学原材料を生産する大型企業で、かつては数万人の労働者がいたが、現在は7350人が働く。 
 
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◆「主人」から「雇われ労働者」へ――現代中国の国有企業労働者 
 
かつては「国家の主人」「指導的階級」と言われた中国の国有企業労働者ですが、1990年代からはじまった本格的な民営化政策によって、3000万人がリストラされ、「国家の主人に指導される階級」となってしまった感があります。なぜもっと早く抵抗することができなかったのか、遅ればせに行われた抵抗がなぜ 敗北したのかについて論じた論文(英語)が発表されたので、中国語で書かれた紹介文を翻訳紹介します。論文自体は英語です。すいません。 
 
 
原文(中国語) 
http://www.worldlabour.org/chi/node/507 
 
【米誌『Working USA』2011年12月号に掲載された《FROM “MASTER” TO “MENIAL:” STATE-OWNED ENTERPRISE WORKERS IN CONTEMPORARY CHINA》の紹介文(中国語)】 
 
本論文は、中国の企業民主制度(職員代表大会)がなぜ一度も真剣に実施されなかったのかを検討し、そのような状況が、1990年代末から2000年代初めにかけて闘われてきた国有企業労働者の抵抗の敗北とどういった関係にあったのかを研究したものである。 
 
中国共産党が当初からあらゆる細部において、とりわけ中華全国総工会に関する細部において、党の絶対的コントロールが貫徹するように、できる限り企業民主制 度を空洞化してきたこと、中国共産党が当初から企業における労働者民主主義の自治に対する根深い敵意を示していたことを指摘している。 
 
だが、こういった状況は毛沢東の時代からすでに始まっていた。だから当時の国有企業労働者も本当の意味での「国家の主人」であったとは言えない。その時代の 労働者階級は、雇用と基本的福祉が保障されており、他の途上国の労働者と比較した場合、その待遇はかなり良かったと言える。しかし基本的な政治的権利に関 しては、基本的な民主主義の一つともいえる企業民主主義でさえ、絵にかいた餅でしかなかった。 
 
労働者階級が早くから政治的権利をはく奪され、アトム化していたことから、のちに資本主義市場改革が始まった時にも、公式のルートを通じた抵抗を見せることはなかったが、ついに1989年〔北京の 春〕には抵抗を余儀なくされた。しかし寸鉄を帯びない大衆の運動は結局弾圧されてしまった。この弾圧の成功は、よりいっそう急進的な資本主義改革のセカン ドステージ、すなわち、国有企業の民営化の道を掃き清めることになった。 
 
最後に本論文は、次のような見解には賛同しないことが述べられて いる。それは、労働者階級とは雇用される階級であり、指導的階級の役割を演じることはできない、という見解である。過去60年の革命および労働者階級の発 展の歴史からくみ取るべき教訓は、労働者階級は直近の経済的利害にのみに拘泥してはならないということだと、本論文は結論づけている。労働者階級が現状を 変革するために立ち上がろうとするのであれば、社会進歩の方向性に影響を及ぼすことができるように、自らを打ち鍛え、民主的自治能力を発展させなければな らない。 
 
本論文《From “Master” to “Menial”: State-owned enterprise workers in contemporary China》は、米誌『Working USA』2011年12月号に掲載された。下記からダウンロードできる。 
http://www.worldlabour.org/eng/files/imce/fm_master_to_menial_wusa_357.pdf 


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