2012年01月21日11時13分掲載  無料記事
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市民活動

豊島区の挑戦  「としまビジネスサポートセンター」 地域金融マンと組む

  東京・豊島区は他の多くの都市とも同じだが、町の高齢化と不況に伴い、中小零細企業が年々減少傾向にある。そこで区は中小零細企業をバックアップするために、地域金融のプロを招いて「としまビジネスサポートセンター」を2年前立ち上げた。場所は豊島区役所の裏手にある生活産業プラザ5Fである。 
 
  「としまビジサポ」(通称)の特徴は無料相談から始まり、資金サポートから起業・販路拡大・交流会など様々な悩み事を一か所ですべて受けることができる点にある。しかも、企業主が負担する費用は行政の支援もあり、安い。特に豊島区在住者は割安になっているが、サポートは豊島区以外の企業主でも受けられる。これまで町の事業の結節点だった地域金融マンが行政に加わることで、区の信用のもとに十分に生かされてこなかった町の人々や設備、資金をうまく結んでいこうというものだ。 
 
  実はこれまで日本の各地で自治体とコンサルタントがチームを組んだ取り組みをしてきたが、中々成功するのが難しいと言われてきた。その理由は現場を見ないコンサルタントが上から目線で営業主のやり方を批判することが多かったことが一因だと言われている。しかし、今、それとは違った風が吹き始めている。 
 
  「としまビジネスサポートセンター」の起動に大きな役割を果たしている一人が巣鴨信用金庫から豊島区に派遣された地域金融マン・山本浩治さん(1971−)である。山本さんは「としまビジサポ」を立ち上げる前に、静岡県富士市にある「富士市産業支援センター」に出向し、そのノウハウを学んできた。静岡県富士市産業支援センターはやはり地域金融のプロが行政の中に入って現場で相談者とともに新しい企業を育ててきた実績がある。「としまビジネスサポートセンター」を語るには「富士市産業支援センター」について語る必要がある。 
http://www.f-biz.jp/ 
  富士市産業支援センターのリーダーは小出宗昭氏(1959−)だ。小出氏は静岡銀行から2001年に県のベンチャー企業支援施設「SOHOしずおか」に出向し、次々と成功事例を積み上げてきたカリスマ的人物である。2005年には「Japan Venture Award 2005」の経済産業大臣賞を受賞した。これは起業支援家としては最高の名誉とされる。その経験を生かして、小出氏は静岡銀行を退職し、2008年に「富士市産業支援センター」を行政と立ち上げ、自らセンター長となった。 
 
  小出氏のもとで富士市では新しいビジネスが多数立ち上がった。たとえば、癌で苦しんでいる患者を目の前にした女性看護師が格安のウイッグ(かつら)を製造販売して成功させた。癌患者の中には治療費の工面にも苦労している人が少なくないが、そうした人が抗がん剤で脱毛してもウイッグが高くてなかなか手が出せない。そんな現場を数々見た女性看護師が会社を起こしたのである。 
 
  小出氏は「最初から資金繰りとか、ビジネス計画とかを細かく作っても仕方がない」という。なぜなら新しい事業は立ち上げてみないとわからないからだ。だから、それよりも「その事業がどんな形であれオンリーワンであることが大切だ」という。オンリーワンであれば成功する芽がある、というのだ。日本一でなくてもよい。地域の一番でもよい。最近、目立つのは女性の起業者だという。女性の場合、自分の身の回りの生活の必要から物事を発想する。そこが今までの常識や過去のビジネスモデルにとらわれた中高年の男性の企業主とは違い、オンリーワンになる芽があるというのだ。生活者の目線で今までになかったサービスを創る。最初は10万円未満の資金で1つのものを試しに売ってみて、売れたらそれを元手にまた売る。こんな風に小さな資金から事業を起こして成功している女性が少なくないようだ。これも今起きているトレンドだそうだ。 
 
  山本氏は小出氏を師として1400件の相談を受けながら、様々なノウハウを学び、また自ら作りだしてきた。そして帰京後、2010年4月に「としまビジサポ」を立ち上げて以来、650件の相談に応じてきた。相談は様々だ。 
 
  たとえば、これまでゴルフ用の握りの滑り止めゴムを製造してきたメーカーが売上減少で相談にやって来た。そこで自転車のハンドルの握りに応用してみたところ受注を伸ばした。また売り上げ減少に悩み相談に訪れた石鹸メーカーには各地の自治体やJAなどと提携して果物など地域の特産物を原料に組み入れたご当地石鹸を作ったらどうか、と提案したところ話題になり受注が増えたという。小さなことだが今までと違った路線に営業することで売り上げが増やせる。そうしたアイデアは町の企業を多数知る地域金融マンは強い。 
 
  山本氏は新事業の宣伝にも協力し、メディアへのプレゼン資料の作成から配布まで支援している。ウェブサイト作りなどのITサポートでも町の使いやすいIT企業を紹介している。上から目線で説教だけするのではなく、企業主に寄り添って事業をサポートする、これが新しい産業支援の風だという。町の企業が活性化すれば地域金融も業績を拡大できる。一金融機関の利益だけではなく、地域の金融機関全体のプラスになる。つまり長期的な視野で事業支援に臨んでいるのである。これは儲かるビジネスなら世界中どこへでも資金を投資して、儲からないと見たら早々と資金を引き揚げるグローバル金融とは対極にある。 
 
  「としまビジサポ」は時々、中小零細企業向けの講演会を行っている。次回は2月15日だ。 
 
2月15日(水)講演会 18:30〜20:00 
「中小企業のWebマーケティング戦略〜最新トレンドと成功事例〜」 
講師・小川祐司氏(ITコンサルタント、システムエンジニア、中小企業診断士) 
場所 巣鴨信用金庫研修会館B1 大会議室 
豊島区巣鴨2−12−10 
 
■「としまビジサポ」公式ホームページ 
http://www.toshima.ne.jp/~tbsc/index.html 


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