2012年01月30日01時16分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】電気料金の実態は真黒けの「黒塗り」 そのデタラメぶりを問う  山崎 久隆

 原発が止まったために、その分、火力発電の燃料代がかかるというのだが、それは理屈としてもおかしい。 もともと原発の電力供給力はフルパワーで全電力需要の4割程度、実質的には春先など半分ちかくは定期検査をしているから、2割程度になる。今回の震 
災のために火力で全電力をまかなうとしても、追加すべき発電量は1000万キロワットもない。原発の燃料だって年間2000億円はかかる。最近は稼働していない原発が多いからもっと少ないが、計算上はそのくらいは燃料費としてかかる。 
 
◇値上げの本当のわけ 
 
 核燃料は製造や輸送に長時間かかるので、既に数年先まで発注されている。すなわち使うあてのなくなった燃料がかなりの量あり、その分の支払いも迫っているというわけだ。これらも当然ながら費用に含まれる。火力のたき増しだけが費用では無い。 
 
 ちなみに既に取得して核燃料サイクルにある燃料は「加工中等核燃料」というが、その金額は実に7300億円にも達している。もはや使うあての無い核燃料が7300億円分も余っているが、核物質防護上、簡単に売却するわけにもいかない。もちろん国内全部で余っているので他電力にも売れない。 
 
 リードタイムの長い核燃料は、そのまま電力にとっては巨額の負担を強いる「爆弾」だったのだ。 
 
◇原発を冷やすために原発が要る? 
 −推定85万kwもの電力が原発冷却用に消費されているー 
 
 さらに、とんでもない費用がある。それは原発の冷却用電力だ。 
柏崎刈羽が1機動いているので、まだ柏崎刈羽は「発電所」であることができるが、福島第一と第二はもはや「発電所」ではなく「受電所」である。燃料を冷やすための電力は東京電力管内の発電所から送られる。通常ならば止まっている原発の冷却と定期検査に必要な電力が送られていたのだが、今回はそれに加えて福島第一の破壊された原子炉の冷却や周辺の作業用電力などが加わった。その収支報告は、まだ見たことが無い。 
 
 柏崎刈羽の最後の一機が止まれば、柏崎刈羽も同じ立場になり、東電は原発を冷やすために推定85万キロワットもの電力を火力などから送らざるを得なくなる。つまり私たちの節電は原発の冷却用電力に消えてしまったというわけだ。 
 
 これら費用もまた、料金値上げで追加請求されることになるようだ。使う当てもなくなった原発の、補修費用も莫大に支出しようとしている。最低限危険を回避するためならば、使用済燃料プールに入っている燃料を冷やし続ければ良い。それ以外は全て取りやめれば費用はかなり節約できるが、多分間違いなく東電は再起動を前提とした補修などに莫大な費用を費やしている。配管の交換、弁の取替、様々な補修工事は全て被曝労働でもある。さらに津波対策の巨 
大防潮堤や設備の耐震性強化、過酷事故対策の追加費用に数千億円をかけるつもりだろう。全て1ワットも電気を生まなくなった無駄な原発のために、である。 
 
 福島第一の原発震災にかかる損害賠償額は値上げ対象にならないだろうが、それも表向きの話で、料金収支明細書さえ出さない東電の言うことなど到底信用できない。 
 
◇得意の「経営努力」とやらはどうしたのか? 
  −反対の多いMOX燃料で750億円も浪費ー 
 
 プルトニウムを混ぜた「MOX燃料」。価格は通常のウラン燃料の数倍になると見られている。仮に5倍としたら、1体あたり1億円以上も高い。それを110万キロワット原発に三分の一炉心分も入れると、それだけで250億円も余分にかかる。 
 
 それを3機行えば合計750億円は余計にかかる計算となる。ところがプルトニウム燃料は性能が劣る。最近の高性能ウラン燃料は、濃縮度を上げてウラン235の濃度を高くすることで最大5サイクルもの間炉内に入れることが出来るようになっている。 
 
 ところがプルトニウム燃料は、ウラン混合しているために安全性に問題があり、3サイクルしか入れることが出来ない。これだけで性能は5分の3、価格は5倍で能力が4割引などと、常識では考えられない買い物を電力はしている。すなわち「プルサーマル計画」というのは性能を落としたうえ危険なプルトニウム燃料を高額に買っているわけだ。こんなものは社会常識では「詐欺」である。 
 
 その無駄遣いを東電は「経営努力で吸収する」とこれまで言ってきた。ならば火力のたき増しにかかる費用もその理屈から言えば当然「経営努力で吸収」すべきだろう。とてもそんな巨額の費用はまかなえないというのならば、出来る企業に発電設備を売却すべきだ。 
 
 電力会社は公共企業体だ。法的に供給を義務づけられている。その反面、圧倒的な独占を認められてきた。だから電力料金は「限りなく透明に近いブルー」でなければならないのに、実態は真っ黒けの「黒塗り」だった。プルトニウムの価格もMOX燃料体の価格も原発ごとの収支パランスシートも何一つ情報は開示されず、単なる風評としての「原発が止まると電気が足りなくなる」キャンペーンを展開していたのだ。 
 
≪以後の予測≫ 
 高浜3号運転停止は2月20日 
 柏崎刈羽6号運転停止は4月8日 
 泊3号運転停止は4月下旬・・・脱原発社会完成 
 ・・・しかし先行きは不透明 


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